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発展編
39.お手伝い
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「冷蔵庫も電子レンジも捨ててしまって下さい」
「・・・はい」
獅朗の家に物件見学しに行ったあの日からしばらく経ったある週末。獅朗は手伝いと称して美云の家にやってきて捨てるものと持っていくものを選別しているところだ。ボロ家に似つかわしいレトロな家具は、なんでも揃っている獅朗の新築マンションには不要なため、美云は獅朗と相談しながら必要なものと不要なものに分けることにした。
獅朗の隣で『捨てる!』と書いた付箋を美云は家電や家具にペタペタと貼っている。
「食器は・・・ふふ。お気に入りのもの以外は捨てましょう」
お気に入りのマグカップを守るように抱き締めている美云に苦笑しながら獅朗はつけ足す。
「ところで・・・」
獅朗はチラッとリビングに目を向ける。
「なによ?」
「どうして佳敏さんがいるんですか?」
「なによ?ジャマ?」
「はい。ジャマです」
「ふんっ、なによかわいくない。アタシは監督しにきてんのよ。アンタたちがイチャイチャしないでちゃんと引っ越し準備ができるように」
獅朗が美云のボロ家にお邪魔すれば、まるでこの家に最初から住んでいる主であるかのようにリビングに鎮座している佳敏がいた。全く!早朝からいたのだろうか?
今は獅朗が連れてきたジンと一緒にソファに寝そべって寛いでいる。不思議なことになぜか二人は仲が良い。主人とは真逆の愛犬に苦笑いを浮かべる。
「ちょっと休憩しましょう!思玲が差し入れにってドーナツ差し入れてくれたし」
きゃあードーナツ!!と奇声を上げる佳敏はこれといって何も手伝っていないのに一番喜ぶ。箱を開けると不揃いなドーナツがみっちりと詰まっていた。
「あら?思玲の手作り?もしかして?」
「うん。あの子、何気に料理が好きなのよ」
思玲が料理好きなのは、母親の李莉が病気療養している時に少しでも元気になれるものを食べて欲しい、そんな思いから続いている特技だ。
「あらぁ、ステキな殿方見つけちゃったのかと思った。アンタみたいに」
「ぶふっ」
美云が何か言う前から既に二人が恋人同士になったことに気づいた佳敏がからかえば、美云は口に含んだお茶を吹いてしまう。
「そう言う佳敏さんこそどうなんですか?」
美云が吹き出したお茶を拭きながら獅朗が代わりに訊ねる。
「アタシ?アタシはいつでも出会いはOKよ!」
「つまり、お相手はいないってことですね?」
「そういう言い方止めてくれないかしら?」
「ふふ。考えておきます」
「ちょっとお、美云!こんな男のどこが良いのよ?全く、かわいくないわ」
「安心してください。美云の前ではかわいくしてますから」
「まぁまぁ、二人とも」
本当に。この男は変わり過ぎだわ。佳敏は美云の横で何かと美云を構っている獅朗に呆れる。何か吹っ切れたと言うか、一皮剥けたと言うか、生まれ変わったと言うか。
そこんとこ美云は気が付いているのかどうか気になるところだけど・・・
「さっ!休憩終わり!仕事しましょ。アタシは寝室見てくるわ」
「わんっ」
佳敏が寝室へ行けばジンもトコトコ付いていく。
「あの子の主は私なのに」
「ふふ。不思議ね」
結局、寝室の片付けにそのうち飽きてしまった佳敏は、気が付けばジンと一緒にベッドに大の字になって寝てしまっていた。
……
「お風呂先にいただきましたぁ」
美云は獅朗に声をかけてベッドにゴロンと寝転ぶ。
実はまだ完全な引っ越しは済んでない。だが内心、片時も離れたくないと思っている獅朗が我が儘を通して、半同棲の状態がスタートした。
平日も仕事が遅くなると今日のように一緒に獅朗の家に帰って来る日がある。獅朗からは自由に使ってくださいと言われてるので、美云は洋服や化粧品など普段必要なものをちょっとずつ持ってきては自分のスペースを作っている。
でも問題はベッド。
獅朗のベッドは正直、二人でゆったり寝たいと思うと少々狭い。だから美云が今使っているベッドを持ってくることも考えたけど、それを獅朗に相談したら首を横に振られてしまった。
結局、もう少し大きめのベッドを獅朗が買うことで最終的に決着した。
でも、狭いベッドも嫌いではない。ピタッとくっついて後ろから抱かれる形で寝るのが何気に気に入っているからだ。そこから始まる熱い逢わいも気に入っている。肌を重ねれば重ねるほど相性が良くなるようで、思い出しただけで美云は頬が熱くなる。
そう言えば、ソウルメイトの中でもツインレイと言う魂の片割れ同士はとても肌の相性が良いと言うのを聞いたことがある。もしかしたら、獅朗と自分はツインレイなのかもしれない。そうじゃなくても別に気にはしないけど、生まれる前に決めてきた約束の相手ってロマンティックだなと思う。
「考えごとですか?」
お風呂から上がってきたらしい獅朗が背後から抱き締める。
「うふふ。秘密よ」
今夜はゆっくり寝れるかな?後ろからぴったりくっついてくる獅朗は今のところ大人しい。そろそろ引っ越しの日取りをちゃんと決めようと思いながら美云は眠りについた。
「・・・はい」
獅朗の家に物件見学しに行ったあの日からしばらく経ったある週末。獅朗は手伝いと称して美云の家にやってきて捨てるものと持っていくものを選別しているところだ。ボロ家に似つかわしいレトロな家具は、なんでも揃っている獅朗の新築マンションには不要なため、美云は獅朗と相談しながら必要なものと不要なものに分けることにした。
獅朗の隣で『捨てる!』と書いた付箋を美云は家電や家具にペタペタと貼っている。
「食器は・・・ふふ。お気に入りのもの以外は捨てましょう」
お気に入りのマグカップを守るように抱き締めている美云に苦笑しながら獅朗はつけ足す。
「ところで・・・」
獅朗はチラッとリビングに目を向ける。
「なによ?」
「どうして佳敏さんがいるんですか?」
「なによ?ジャマ?」
「はい。ジャマです」
「ふんっ、なによかわいくない。アタシは監督しにきてんのよ。アンタたちがイチャイチャしないでちゃんと引っ越し準備ができるように」
獅朗が美云のボロ家にお邪魔すれば、まるでこの家に最初から住んでいる主であるかのようにリビングに鎮座している佳敏がいた。全く!早朝からいたのだろうか?
今は獅朗が連れてきたジンと一緒にソファに寝そべって寛いでいる。不思議なことになぜか二人は仲が良い。主人とは真逆の愛犬に苦笑いを浮かべる。
「ちょっと休憩しましょう!思玲が差し入れにってドーナツ差し入れてくれたし」
きゃあードーナツ!!と奇声を上げる佳敏はこれといって何も手伝っていないのに一番喜ぶ。箱を開けると不揃いなドーナツがみっちりと詰まっていた。
「あら?思玲の手作り?もしかして?」
「うん。あの子、何気に料理が好きなのよ」
思玲が料理好きなのは、母親の李莉が病気療養している時に少しでも元気になれるものを食べて欲しい、そんな思いから続いている特技だ。
「あらぁ、ステキな殿方見つけちゃったのかと思った。アンタみたいに」
「ぶふっ」
美云が何か言う前から既に二人が恋人同士になったことに気づいた佳敏がからかえば、美云は口に含んだお茶を吹いてしまう。
「そう言う佳敏さんこそどうなんですか?」
美云が吹き出したお茶を拭きながら獅朗が代わりに訊ねる。
「アタシ?アタシはいつでも出会いはOKよ!」
「つまり、お相手はいないってことですね?」
「そういう言い方止めてくれないかしら?」
「ふふ。考えておきます」
「ちょっとお、美云!こんな男のどこが良いのよ?全く、かわいくないわ」
「安心してください。美云の前ではかわいくしてますから」
「まぁまぁ、二人とも」
本当に。この男は変わり過ぎだわ。佳敏は美云の横で何かと美云を構っている獅朗に呆れる。何か吹っ切れたと言うか、一皮剥けたと言うか、生まれ変わったと言うか。
そこんとこ美云は気が付いているのかどうか気になるところだけど・・・
「さっ!休憩終わり!仕事しましょ。アタシは寝室見てくるわ」
「わんっ」
佳敏が寝室へ行けばジンもトコトコ付いていく。
「あの子の主は私なのに」
「ふふ。不思議ね」
結局、寝室の片付けにそのうち飽きてしまった佳敏は、気が付けばジンと一緒にベッドに大の字になって寝てしまっていた。
……
「お風呂先にいただきましたぁ」
美云は獅朗に声をかけてベッドにゴロンと寝転ぶ。
実はまだ完全な引っ越しは済んでない。だが内心、片時も離れたくないと思っている獅朗が我が儘を通して、半同棲の状態がスタートした。
平日も仕事が遅くなると今日のように一緒に獅朗の家に帰って来る日がある。獅朗からは自由に使ってくださいと言われてるので、美云は洋服や化粧品など普段必要なものをちょっとずつ持ってきては自分のスペースを作っている。
でも問題はベッド。
獅朗のベッドは正直、二人でゆったり寝たいと思うと少々狭い。だから美云が今使っているベッドを持ってくることも考えたけど、それを獅朗に相談したら首を横に振られてしまった。
結局、もう少し大きめのベッドを獅朗が買うことで最終的に決着した。
でも、狭いベッドも嫌いではない。ピタッとくっついて後ろから抱かれる形で寝るのが何気に気に入っているからだ。そこから始まる熱い逢わいも気に入っている。肌を重ねれば重ねるほど相性が良くなるようで、思い出しただけで美云は頬が熱くなる。
そう言えば、ソウルメイトの中でもツインレイと言う魂の片割れ同士はとても肌の相性が良いと言うのを聞いたことがある。もしかしたら、獅朗と自分はツインレイなのかもしれない。そうじゃなくても別に気にはしないけど、生まれる前に決めてきた約束の相手ってロマンティックだなと思う。
「考えごとですか?」
お風呂から上がってきたらしい獅朗が背後から抱き締める。
「うふふ。秘密よ」
今夜はゆっくり寝れるかな?後ろからぴったりくっついてくる獅朗は今のところ大人しい。そろそろ引っ越しの日取りをちゃんと決めようと思いながら美云は眠りについた。
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