三十路の恋はもどかしい~重い男は好きですか?~

キツネ・グミ

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発展編

35.お耳

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今日はちょっとだけイチャイチャさせました。

 
......

「引っ越しなら良い物件知ってますよ。紹介しましょうか?」

獅朗から天使のような一言が降りてきた。

「えっ?!どんな物件なんですか?!」

美云ではなくなぜか思玲が興奮気味に聞いてくる。

「こら。思玲はもう退場の時間だぞ。他の参加した学生さんたちはみんな帰ってるんだから」

え~これからがおもしろいところなのにと頬っぺたを膨らませながら思玲は路臣に抗議するも、だったら早く社会人になることだな。良いか?大人の世界は学生の頃と比べられないほど楽しいぞ、と路臣は火に油を注ぐような逆効果なことを言って思玲をそそのかす。

自由意思で行動できる範囲が広がる大人の世界への誘惑はあまりにも魅力的だが、やはり学生には学生の世界が待っている。

路臣と㬶天は思玲を学生の世界へ戻すべくエレベーターまで引きずっていく。その途中で思玲が㬶天に何か質問したらしく、二人してスマホを出して何かしている姿が美云の所からも見える。路臣は呆れているのかおでこに手を当てている。

二人は思玲が手を振りながらエレベーターに乗る姿を見届け、やっと無事に本日の説明会は完了した。

「全く、思玲のやつ、ちゃっかり㬶天君と電話番号の交換していったよ」

だから嬉しそうに手を振りながら帰っていったのか。

「ふふ。㬶天君は思玲さんを気に入ったってことですね」

ん?どういうことだ?逆ではなくて?と獅朗の言葉に美云は訝る。

「だって気に入らなかったら教えないでしょう?」

ふふふ。と笑いながら獅朗はだいぶ冷めてしまったコーヒーをすする。㬶天を見るとほんのり頬を染めている。心なしか、思玲が帰ってからまたあどけなさの残る㬶天に戻っている気がする。

「ええっ」

「姉貴は本当、何て言うか、そういうとこ鈍いよね」

「うるさい」

過去恋で痛い目をみた後遺症で色恋に鈍くなってだいぶ経つ。

「それよりも、どんな物件ですか?」

今は人の色恋よりも自分の次の住処が気になる。引っ越しはただでさえ気力を奪われがちだから借りれる知恵があるならぜひ借りたい。

「ふふ。とりあえず執務室に戻りましょうか?」

獅朗に優しく背中を押されながら美云は執務室へ戻っていった。


……


執務室に戻ってしばらくすると、獅朗がちょいちょいと手招きして美云にこっちに来るよう合図を送ってくる。

手招きされて隣に座らされると、早速、獅朗が紹介したいらしい物件の間取り図を見せてくれる。

「こんな間取りですが」

仕事中だからなのか獅朗は美云の耳元でささやくような小声で物件について説明する。時々、吹きかかる息がくすぐったくて話に集中できなくて何度も同じ質問をしてしまう。耳ってこんなに敏感だったっけ?と不思議に思うも、先ほどの路臣の鈍い発言を思い出し、耳は敏感だと忘れずに報告しようと思った。

「美云、聞いてますか?」

「んふ、聞いてます。聞いてますけど、息が・・・」

「息が?」

「吹きかかってきてくすぐったくて、ひゃああああぁ」

思わず変な声を出した後に耳に手を当て獅朗を睨む。と言うのも、正直に息が耳にかかってくすぐったいと言ったら、イジワルな獅朗にわざとらしく息を吹きかけられたからだ。

美云が睨んでいるのに隣に座ってる獅朗はニンマリ笑っている。またこれが虫も殺さぬ笑顔だから憎らしい。


獅朗も最初こそわざとでは無かったのだが、耳元で話すたびに美云が小刻みに震えてモジモジしていることに気づいたので、最終的にはわざと吹きかけてしまった。

本当はもっと大胆なことをしたかったのだが、例えば耳たぶをかじるとか舐めるとか。でも、今は仕事中だし人の目もあるし、と言うことでそれなりに自重はしたつもりだ。

「ごめんなさい、美云。わざとじゃないですよ」

反省の色がひとつも見えない様子で獅朗は美云に空謝りする。

「お詫びと言っては何ですけど、こちらの物件は美云の都合の良い時に見学できるように手配しておきますよ」

それで許してください。と言うように全然悪気の無い態度に美云も怒る気を無くす。

「本当ですね?じゃあ、週末にでも見学させてください」

「了解」

心なしか、獅朗の笑顔が獲物を狙っているハイエナのように見えたのは美云の気のせいだったのか?


「ちょっとぉ、お二人さん、職場でイチャイチャするのはやめて頂けるかしら?」

「イチャイチャしてません」

「何がイチャイチャしてません、よ?あんな遠くに席がある私のとこまで美云、アンタの奇声が聞こえてきたわよ」

で?何して遊んでたの?アタシも混ぜて~と今度はハイエナより手強そうなガタイの良い猫もとい佳敏がじゃれてくる。

「お家探しのお手伝いしていただけですよ」

「仕事中に?」

「お家が無かったら仕事どころじゃなくなりますから」

「ねぇ美云、アタシはなぜか獅朗にはぐらかされてる気がするんだけど」

それは気のせいです。と美云も獅朗に習いはぐらかした。


......


そろそろ肌色入ります。
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