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発展編

32.慕情

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すみません。

重い話少し入ります。

あと、まだ肌色には遠いです。汗

もう少しで書けるところまで来た気はするのですが。


……



やっぱり、美云は引いちゃったかな?と獅朗は自分の強引なやり方をちょっとだけ申し訳ないと感じていた。
だがそれよりも、美云に触れていたかったから、どうしても美云の気持ちよりも我欲を優先してしまった。

もし、美云に手を離してと言われたら素直に放すかと言えば、たぶん離さない。
きっと、キスしてくれたら離すと言うかもしれない。はっきり言って、これは完全なるパワハラだ。分かってはいるけれど、こちらの要求を受け入れて優しく食べさせてくれる美云につい甘えてしまった。

「実は、子どもの頃、両親を事故で亡くしているんです」

「えっ」

やっと出てきたお寿司をガブリと食べて今度こそワイルドになろうとした美云は、獅朗の突然の告白に驚き、頬張ろうとしていたお寿司を取り皿に戻す。

「飛行機の墜落事故でした」

そこから自分の感覚がおかしくなり、喜怒哀楽を上手く表現できなくなったことを獅朗は話して聞かせる。

まさか、軽い気持ちで食事に誘ったつもりが突然の重い告白に美云はどう言葉をかけて良いのか、むしろ自分がそんな話を聞いて良いのか?と言葉が出てこなくて黙ってしまう。

「でもある日、偶然、成徳さんもその事故で家族を亡くしていることを教えてもらって、痛みを抱えている人は私ひとりじゃないことを知ったんです」

少し悲しげな笑みを浮かべながら美云の方へ顔を向ける獅朗は、同じ痛みを知っている人間が直ぐ近くにいるだけで少し心が晴れたことを今でも思い出していた。


成徳にもそんな過去が有ったとは知らなかった。だからだろうか?美云が一課に異動になる際に成徳から獅朗を支えて欲しいと言われたのは。今日、美云は初めてあの日、成徳に言われたことが府に落ちた。
でも、なぜ自分が?と言う疑問もあるのだが・・・

分からないなりにも、どうしても伝えたいことがひとつだけあった。

「獅朗、知ってますか?生きてる人間がもし亡くなったとしても、その人は肉体が無くなっても魂だけになって愛する人たちの側でずっと見守って愛してくれているんです」

それはもしかしたら、夢の中でかも知れないし、はたまた誰か肉体を持った別の人間に託すかもしれないし、とにかく人間って肉体が無くなっても何かしらの方法で生きてる人間に愛を伝えてくれると言う。

「と言うのを、とある如何わしい雑誌でスピリチュアルなんとかって言う人が言っていたのを読みましたって、ううっ」

美云は以前読んだことのある胡散臭い記事を思い出しながら話していたので、隣にいる獅朗に顔を向けたら、あろうことか獅朗が涙を流していて、完全に狼狽えてしまう。

「あああぁ、あの、泣かせるつもりじゃなかったんだけど・・・」

「ええ。美云のせいじゃありません。ただ、美云の話を聞いていて、そうだったのかと納得していたんです」

獅朗は美云が渡してくれた紙ナプキンで涙をゴシゴシと拭きながら、その後は養父母に育てられたことや、まるで養父母に両親が乗り移ったかのように優しくしてもらったことを矢継ぎ早にまくしたてた。

「とても良い養父母さんに育てられたんですね」

「それなのに、私はその優しさをずっと無下にしてきました」

「でも、これからがあるじゃない?これからは生きてる家族の愛も受け取りましょうよ」

「ええ。そうですね」

その通りだと思う。獅朗自身、先日自分に誓ったことと同じようなことを美云にも言われ、これからは素直に養父母たちを大切にしようと再認識した。 


結局、この日の美云はワイルドになることはできず(でもお寿司は美味しくいただきました)、獅朗を泣かせると言う、ある意味、誰も見たことの無い獅朗を垣間見る日となった。

ちなみに食事代は美云がお手洗いに行ってる隙に獅朗が払ってくれた模様。
誘ったのは自分なのに、と次食事に誘う時はちゃんと支払うことを美云は心に誓った。



……



「ひとりで帰れます」

「それは分かっていますよ。でも、私が美云を送りたいんです」

お寿司屋さんを出た後に、また手を繋いで歩きつつ、美云を家まで送る送らなくて良いとちょっと揉めたが、結局、獅朗の押しの強さに負けて送ってもらうことになった。

「だって、佳敏さんは美云の家を知っているんでしょう?」

「それはそうですけど・・・」

「ふふ。大丈夫ですよ。家の中までお邪魔はしませんから」

美云は、最近、佳敏が"獅朗がなんだかかわいい"と言っていたことを思い出す。確かに、強引なところは相変わらずだけど、甘えてくるような、なんと言うかかわいらしさが加味された気がする。

これってもしかして、姉として慕われているのかな?
繋いだ手を見下ろしながら、いまいち自分の立ち位置が分からない美云は内心戸惑っていた。
でも、好きだからって好き好きばかり言って言い寄ってくる人間なんてそんなに多くないと佳敏に言われたばかりだし。
もしかして、獅朗は少し位は自分のことを好きなのかもしれない?やっぱり好きじゃない?うーん。

考えても分からないことはいつまで経っても答えは出てこない。だから美云はこんなことがもし三回も続くのであれば、その時は獅朗に質問してみることにした。

それよりも、獅朗と繋いだ手がやけに心地良いことに気がく。強くもない、けして弱くもなく握りしめた獅朗の手が気持ち良いと思っている自分は変態なのか?と美云は少々戸惑う。

あの胡散臭い記事には確か・・・人と人はエネルギーで繋がっていると書いてあった気がする。
だから引き寄せ合うし、逆に離れても行ってしまうと。これは引き寄せ合うエネルギーの仕業なのか?

「美云、この角は?」

ぼんやり考えていたらもう美云の家の近くまで来ていたらしい。目の前のT路地をどちらに曲がるのか獅朗に聞かれてハッとする。

「あ、左です。左に曲がって直ぐのボロマンションです」

「了解」

なんだか自分が獅朗のペットになったかのように先導してもらってる気分になる。

「あ、ここです」

ボロマンションの前まで来ると美云は指を指す。

「今日は誘っておきながらご馳走になっちゃってありがとうございました。じゃあ、お休みなさい」

「あ、待って」

そのまま中に入ろうとした美云は繋いだままの獅朗の手に引き戻される。

「???」

引き寄せられた瞬間、抱き締められてチュッとおでこにキスをされた。

「!?!?」

「ふふ。お休みなさい。是非、また誘ってください」

美云はこの時やっと自分が獅朗のことを好きになっているんだと自覚し、その場に佇んだまま顔を真っ赤にする。
どうか獅朗の思いが姉を慕うような思いではありませんように、と願うばかりだった。



……


両片思い的な。

この二人の肌色シーンを書くためにもっと二人の距離を縮めていきます。

明日はもしかしたら投稿が夜になるかもしれません。
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