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24. 指
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【花澄の話】
澄が学校に来なくなってすでに2日経っている。
私が登校したとき、澄はいつものように窓辺の席で昼寝をしていた。まったく今日も無防備だなあって思いながら、ほんの少しだけ目を離した隙に澄はいなくなった。
トイレにでも行ったのかなって思った瞬間、慌ただしく隣のクラスの美少女が駆け込んできた。この子が慌ててるのなんて澄絡み以外考えられない。でも、澄はいないし。
変な胸騒ぎを感じながら、私は澄の隣の席の子と話してる姿を見つめる。澄の姿が見えないことが、なんでこんなにも不安になるのかよく分からない。でも、何かがおかしい。そんな気がした。
美少女が帰っていった後、さすがに教室に戻ってこない澄が心配になったから、ちょうど私の隣を通った鈴に声をかける。澄の隣の席だし、何か知っているかもしれない。でも、さっき美少女も聞いてたけど肩を落として帰って行ったから何も収穫なかったのかも。まあ、そうだとしても私だって心配してるんだし、一回くらい聞いても良いよねと思って聞いてみた。
「ねえ、澄がどこ行ったか知らない? さっきまで寝てた気がしたんだけど」
「それが、私も目を離した隙にいなくなってて」
心配よね、と言いながら溜め息を吐く鈴は、何かを隠しているようには見えない。でも、本当に知らないんだろうか。あんなに近くにいたのに。
「そっか。引き留めてごめんね」
「いいの。……早く見つかると良いけど」
授業までに戻ってくるといいね、じゃなくて早く見つかると良いけどってどういうことだろう。そんなことを考えている内に、鈴はいなくなっていた。
今のは、澄が消えてしまったみたいな言い方だった。すぐに廊下に飛び出したけど、鈴の姿はどこにもなくて私は唇を噛みしめる。
そして、鈴もその日から学校に来ていない。鈴はきっと何か知っていたのだ。
澄のことになるとスイッチの入る美少女は、変わらず学校に来ている。澄に暇さえあればちょっかいを出している洋介もいつも通りだ。まあ、あいつはさぼりがちだから何かあっても分からないけど。
その二人に話を聞いても、のらりくらりと躱されてしまい埒が明かない。でも、そんな二人から、元気だからそんなに心配するなって言われた。多分何が起きているかこの二人は知っているんだろう。体調を崩しているって言ったらお見舞いに行くって言うのが分かってるから、そんな嘘で誤魔化さなかったんだと思う。そこには誠意を感じるけれど。
ただ何もできない、分からない自分に腹が立つ。澄と一番仲が良いと思っていたのに、今困ったことが澄に起きているみたいなのに私は何もできない。二人は行動してるのに。
悔しいし情けない気持ちになってくるし、澄が何も教えてくれないのは、私のこといらないからなのかななんて思ったりもしてバカみたい。
うだうだと考えるのは性に合わないし、知ってるならさっさと私に教えなさいよバカ、って洋介に言ってしまいたい。まあ、ただの八つ当たりなんだけど。
でも、多分そんなことをしても、今の状況が好転するわけではないことは私にもなんとなく分かるから我慢している。
でも、これくらいは許されるんじゃないだろうか。
「ねえ、本当に澄は元気なの?」
「んー? 元気にしてると思うよ」
「なによ、曖昧すぎるじゃない」
「色々あるんだってば。でも心配要らないよー」
へラッと笑う洋介の姿に苛立つけれど、その気持ちを飲み込んで私を見上げる洋介の頭をぐしゃぐしゃにかき回す。
「ちょっ!」
澄みたいな猫っ毛じゃないからふわふわしていないし、指をすり抜けていくさら艶の髪が憎たらしい。
私は澄の頭を優しく撫でて、嬉しそうに笑う姿を見せて欲しいのに。
「何が起きてるか分からないけど、それが解決したらちゃんと澄に会わせてくれないと許さないんだから」
指をフワフワとくすぐるような澄の髪が恋しい。一緒に居ると柔らかい雰囲気に包まれるのが幸せだった。今は会えなくてもいいから、澄が苦しい思いをしていなければ良い。元気でいるなら。
「分かった、分かったから! あー、もう俺の頭撫でても澄ちゃん出てこないってば!」
「出てくるんだったら、もっとしっかりかき回すし!」
「ひどい!」
「澄も心配だけど、あんたたち二人のことも心配してんのよ」
そう、澄だけじゃなくて澄のことで動いている二人のことも私は心配している。だから、何も教えてくれないこいつにこの位の嫌がらせは良いでしょ。私だって役に立ちたいけど、何もできないんだから心配くらいはさせてよね。
私の言葉に驚いた顔をした洋介は、嬉しそうに笑う。それを見て急に恥ずかしくなった私は、髪をかき回した指を握りそっぽを向いた。
澄が学校に来なくなってすでに2日経っている。
私が登校したとき、澄はいつものように窓辺の席で昼寝をしていた。まったく今日も無防備だなあって思いながら、ほんの少しだけ目を離した隙に澄はいなくなった。
トイレにでも行ったのかなって思った瞬間、慌ただしく隣のクラスの美少女が駆け込んできた。この子が慌ててるのなんて澄絡み以外考えられない。でも、澄はいないし。
変な胸騒ぎを感じながら、私は澄の隣の席の子と話してる姿を見つめる。澄の姿が見えないことが、なんでこんなにも不安になるのかよく分からない。でも、何かがおかしい。そんな気がした。
美少女が帰っていった後、さすがに教室に戻ってこない澄が心配になったから、ちょうど私の隣を通った鈴に声をかける。澄の隣の席だし、何か知っているかもしれない。でも、さっき美少女も聞いてたけど肩を落として帰って行ったから何も収穫なかったのかも。まあ、そうだとしても私だって心配してるんだし、一回くらい聞いても良いよねと思って聞いてみた。
「ねえ、澄がどこ行ったか知らない? さっきまで寝てた気がしたんだけど」
「それが、私も目を離した隙にいなくなってて」
心配よね、と言いながら溜め息を吐く鈴は、何かを隠しているようには見えない。でも、本当に知らないんだろうか。あんなに近くにいたのに。
「そっか。引き留めてごめんね」
「いいの。……早く見つかると良いけど」
授業までに戻ってくるといいね、じゃなくて早く見つかると良いけどってどういうことだろう。そんなことを考えている内に、鈴はいなくなっていた。
今のは、澄が消えてしまったみたいな言い方だった。すぐに廊下に飛び出したけど、鈴の姿はどこにもなくて私は唇を噛みしめる。
そして、鈴もその日から学校に来ていない。鈴はきっと何か知っていたのだ。
澄のことになるとスイッチの入る美少女は、変わらず学校に来ている。澄に暇さえあればちょっかいを出している洋介もいつも通りだ。まあ、あいつはさぼりがちだから何かあっても分からないけど。
その二人に話を聞いても、のらりくらりと躱されてしまい埒が明かない。でも、そんな二人から、元気だからそんなに心配するなって言われた。多分何が起きているかこの二人は知っているんだろう。体調を崩しているって言ったらお見舞いに行くって言うのが分かってるから、そんな嘘で誤魔化さなかったんだと思う。そこには誠意を感じるけれど。
ただ何もできない、分からない自分に腹が立つ。澄と一番仲が良いと思っていたのに、今困ったことが澄に起きているみたいなのに私は何もできない。二人は行動してるのに。
悔しいし情けない気持ちになってくるし、澄が何も教えてくれないのは、私のこといらないからなのかななんて思ったりもしてバカみたい。
うだうだと考えるのは性に合わないし、知ってるならさっさと私に教えなさいよバカ、って洋介に言ってしまいたい。まあ、ただの八つ当たりなんだけど。
でも、多分そんなことをしても、今の状況が好転するわけではないことは私にもなんとなく分かるから我慢している。
でも、これくらいは許されるんじゃないだろうか。
「ねえ、本当に澄は元気なの?」
「んー? 元気にしてると思うよ」
「なによ、曖昧すぎるじゃない」
「色々あるんだってば。でも心配要らないよー」
へラッと笑う洋介の姿に苛立つけれど、その気持ちを飲み込んで私を見上げる洋介の頭をぐしゃぐしゃにかき回す。
「ちょっ!」
澄みたいな猫っ毛じゃないからふわふわしていないし、指をすり抜けていくさら艶の髪が憎たらしい。
私は澄の頭を優しく撫でて、嬉しそうに笑う姿を見せて欲しいのに。
「何が起きてるか分からないけど、それが解決したらちゃんと澄に会わせてくれないと許さないんだから」
指をフワフワとくすぐるような澄の髪が恋しい。一緒に居ると柔らかい雰囲気に包まれるのが幸せだった。今は会えなくてもいいから、澄が苦しい思いをしていなければ良い。元気でいるなら。
「分かった、分かったから! あー、もう俺の頭撫でても澄ちゃん出てこないってば!」
「出てくるんだったら、もっとしっかりかき回すし!」
「ひどい!」
「澄も心配だけど、あんたたち二人のことも心配してんのよ」
そう、澄だけじゃなくて澄のことで動いている二人のことも私は心配している。だから、何も教えてくれないこいつにこの位の嫌がらせは良いでしょ。私だって役に立ちたいけど、何もできないんだから心配くらいはさせてよね。
私の言葉に驚いた顔をした洋介は、嬉しそうに笑う。それを見て急に恥ずかしくなった私は、髪をかき回した指を握りそっぽを向いた。
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