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11. 夢のような
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「はぁ、自習って暇だよねえ」
「勉強したら?」
「まっじめー」
自習は自分で学習するための時間なんだから、私の答えは真面目でもなんでもないんだけれども。
体調不良の先生が休んだため自習になったんだけれども、前の席のチャラ男もとい洋介がイスごとこちらを向いてグダグダとしていて正直うざい。先生お大事にって思うけれど、早く体調良くなって授業して欲しい。目の前のグダグダ星人が邪魔すぎる。
「ねぇー、この間さ、夢のような世界が訪れるかもしれませんってテレビでやってたんだけど、俺的にはそんな科学技術が発展した未来の話より、オカルト的に夢のような世界の方が気になるんだよねー」
私の机に肩肘をついて頭を支え、突拍子もないことを話し始める男の肘をスパーンっと弾いてやりたい。あと、言ってる内容がなんか不穏なんですけど、私の正体に気付いたとかそんな感じ?
オカルト的に夢のような世界って何。
悪神はびこって世界が闇に染まるとかそんな話をしているんじゃないよね?
ちょっと何を言ってるのか分からないので、私はスルースキルを発揮した。呆れた表情を浮かべながら洋介の肘を、邪魔、と言いながらシャープペンシルで突く。
「ちょっ、痛い痛い、それ芯出てない?」
「さあ。それより、見て分かるでしょうが。私、勉強してるんだけど」
あんたもしなさいよね、と告げると、洋介は深い溜息を吐く。
「えー、そんなことより淋しいから俺の話聞いてよー。聞いてくれないと勉強できない」
「却下」
この、他人の時間を奪うことに罪悪感もなにもないヤツが、一番タチ悪いと思うんだけれども。本人に悪気がない感じもイラっとする。
でも、なんか胸がざわざわして、この話を聞かないといけない気がした。妖怪にも虫の知らせのようなものがあるんだろうか。この席になったことをほんの少し後悔している。早く、冬になれば良いのに。
「もう、勝手に話してていいよ」
「ひどー。ま、いいや。だからね、俺が言いたいのは科学技術って生活便利になったりするけど、昔ながらもものをどんどん壊していくよね。便利になった弊害っていうか。特に必要なかったから淘汰されただけってのもあるんだろうけど、壊すよりは共存する方が良いんじゃないかって話だよー」
「そう」
素っ気なく返しながら、今の話を反芻する。
なんだろう、私の正体がバレたと感じたからなのか、洋介の話が妖怪と人間の話に聞こえてくる。ここにいる妖怪は人間と共存がしたくて、色々と試行錯誤していた。それを支えるかのように語る洋介は一体何者なのだろう。
「要らないものなんてないと思うしさー」
「そうだね。その考え、良いと思うよ」
謎だらけで、関わり合いになっちゃいけない気がする洋介だけれど、要らないものはないって考えは共感する。淘汰されて消えていくのがあやかしだ、と言う人間が多く居る中で貴重な存在だと思う。
まあ、あめ玉の疑問も抱えたままだから何も信じられないんだけれどね!
「夢のような話だけれど、あんたの言う通り、目に見えないものとか科学技術によって要らない、いないとされたものと共存できたら素敵だよね」
「でしょー。やっぱ夢のような話かなー」
「さあ。でも、考えるのは自由じゃない?」
だって、私たちはそれを望んでここに居るのだから。夢のような話でも現実にできると信じて。
だから、今日も人間社会を勉強し続けるのだ。
「ほら、ちゃんとあんたの話聞いたんだから勉強したら?」
「分かったよ」
ブーブーもっと話したっていいじゃんかー、って豚の鳴き真似をしながら、洋介は前を向く。私はその背を見つめ、小さく溜息を吐いた。
さっきの話を聞いて洋介が悪い奴じゃない気がしてくるのに、信用してはいけないと思う自分がいる。
疑い続けるのは得意じゃない。
どうせなら、洋介も綾も種明かしをしてくれれば良いのにと思った。
「勉強したら?」
「まっじめー」
自習は自分で学習するための時間なんだから、私の答えは真面目でもなんでもないんだけれども。
体調不良の先生が休んだため自習になったんだけれども、前の席のチャラ男もとい洋介がイスごとこちらを向いてグダグダとしていて正直うざい。先生お大事にって思うけれど、早く体調良くなって授業して欲しい。目の前のグダグダ星人が邪魔すぎる。
「ねぇー、この間さ、夢のような世界が訪れるかもしれませんってテレビでやってたんだけど、俺的にはそんな科学技術が発展した未来の話より、オカルト的に夢のような世界の方が気になるんだよねー」
私の机に肩肘をついて頭を支え、突拍子もないことを話し始める男の肘をスパーンっと弾いてやりたい。あと、言ってる内容がなんか不穏なんですけど、私の正体に気付いたとかそんな感じ?
オカルト的に夢のような世界って何。
悪神はびこって世界が闇に染まるとかそんな話をしているんじゃないよね?
ちょっと何を言ってるのか分からないので、私はスルースキルを発揮した。呆れた表情を浮かべながら洋介の肘を、邪魔、と言いながらシャープペンシルで突く。
「ちょっ、痛い痛い、それ芯出てない?」
「さあ。それより、見て分かるでしょうが。私、勉強してるんだけど」
あんたもしなさいよね、と告げると、洋介は深い溜息を吐く。
「えー、そんなことより淋しいから俺の話聞いてよー。聞いてくれないと勉強できない」
「却下」
この、他人の時間を奪うことに罪悪感もなにもないヤツが、一番タチ悪いと思うんだけれども。本人に悪気がない感じもイラっとする。
でも、なんか胸がざわざわして、この話を聞かないといけない気がした。妖怪にも虫の知らせのようなものがあるんだろうか。この席になったことをほんの少し後悔している。早く、冬になれば良いのに。
「もう、勝手に話してていいよ」
「ひどー。ま、いいや。だからね、俺が言いたいのは科学技術って生活便利になったりするけど、昔ながらもものをどんどん壊していくよね。便利になった弊害っていうか。特に必要なかったから淘汰されただけってのもあるんだろうけど、壊すよりは共存する方が良いんじゃないかって話だよー」
「そう」
素っ気なく返しながら、今の話を反芻する。
なんだろう、私の正体がバレたと感じたからなのか、洋介の話が妖怪と人間の話に聞こえてくる。ここにいる妖怪は人間と共存がしたくて、色々と試行錯誤していた。それを支えるかのように語る洋介は一体何者なのだろう。
「要らないものなんてないと思うしさー」
「そうだね。その考え、良いと思うよ」
謎だらけで、関わり合いになっちゃいけない気がする洋介だけれど、要らないものはないって考えは共感する。淘汰されて消えていくのがあやかしだ、と言う人間が多く居る中で貴重な存在だと思う。
まあ、あめ玉の疑問も抱えたままだから何も信じられないんだけれどね!
「夢のような話だけれど、あんたの言う通り、目に見えないものとか科学技術によって要らない、いないとされたものと共存できたら素敵だよね」
「でしょー。やっぱ夢のような話かなー」
「さあ。でも、考えるのは自由じゃない?」
だって、私たちはそれを望んでここに居るのだから。夢のような話でも現実にできると信じて。
だから、今日も人間社会を勉強し続けるのだ。
「ほら、ちゃんとあんたの話聞いたんだから勉強したら?」
「分かったよ」
ブーブーもっと話したっていいじゃんかー、って豚の鳴き真似をしながら、洋介は前を向く。私はその背を見つめ、小さく溜息を吐いた。
さっきの話を聞いて洋介が悪い奴じゃない気がしてくるのに、信用してはいけないと思う自分がいる。
疑い続けるのは得意じゃない。
どうせなら、洋介も綾も種明かしをしてくれれば良いのにと思った。
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