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チャラ男たちのお茶会
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それから数日経ったある日。
休憩に入った京夜は、数日前に見た少年Bを再び園内で見つけた。残念なことに今日は気の強そうな少女と一緒だった。先日といい今日といい気の強そうなタイプが好みなのか、とまったく関係のなさそうなことに関心しつつ、京夜は同じく休憩中だった滝本 茜とコーヒーを飲んでいた。
茜の無造作に遊ばせた緩いパーマのかかった髪は、明るく光に透けて輝く。茜は京夜とはまた違ったタイプのチャラ男だった。美しさに比重のある京夜に対し、茜は目元がキリッとした格好良いタイプのイケメンである。
京夜は光を背にした茜を眩しそうに見つめながら、残念そうに溜息を吐いた。
それに驚いたのは茜である。何故自分を見て溜息など吐くのか。俺が何かしたのか、と内心焦りつつ京夜に問いかけた。
「なんだ、どうしたー?」
「んーとね、この間男の子と来てた子が今日は女の子と来てるから、男の子とデートじゃなくてやっぱり下見だったのか、残念だなーって思っただけだよ」
自分が何かをしたわけではなかったことに胸をなで下ろしながら、茜は興味からさらに尋ねる。目の前の男が面食いなのは知っているので、そのお目当ての少年がどの程度なのか気になったのだ。
「ふーん、そいつ俺よりイケメン?」
「二人ともイケメンだけど茜くんと少年Bはタイプが違うよ。茜くんはどっからどう見てもチャラいし、少年Bはどっちかというと目つき悪いから不良わんこっぽいし」
「なら、見た目は違うけど中身はチャラいから、そのチャラ男の括りに京夜も入れてやんよ」
お揃いお揃い、と笑う茜に京夜もつられて笑う。
京夜が茜に腐っていることを隠すことなく話しているのには訳がある。
茜の姉が京夜の編集担当をしており、京夜と茜はその繋がりで知り合ったからだ。
その関係で京夜が男同士の恋愛観察が大好きだということを茜は知っている。しかし、茜は気にすることなく、京夜とよく行動を共にしていた。
京夜よりも年上の茜は大学三年だったが、同じ大学ということと趣味を隠すことなく気楽に話せるということもあり気安い間柄だった。食堂などで待ち合わせをして、一緒にランチをすることも多々あった。
そして何よりこの遊園地のバイトを先に始めたのも茜で、京夜を言葉巧みに同じバイトに誘ったのも茜だ。
その時、はたと気づいたように手を打つと、京夜は茜に告げる。
「あー、でもね茜くんと似てるとこが一つだけあるよ。腰砕けそうなくらい良い声してたな、一回しか近くで聞いてないけど」
「おやおやー、それは俺へのお誘いと取って良いのかなー?」
「茜くんとだと、オレの方が女の子役しないと駄目っぽいから却下ー」
「自分で体験した方がいい話書けると思うけど-?」
艶っぽく耳元で囁かれ、京夜はバッと勢いよく耳を片手で覆い、茜からイスごと一歩離れた。
「それ禁止! それでなくてもやらしい声してんのに、わざとそういう声出すの駄目、絶対!」
「脈アリー」
人の悪い笑みを浮かべながら茜はコーヒーを口に運ぶ。
「オレ、女の子好きだもんね」
「そんな事言いつつも、彼女いないくせにー」
付き合っても、自分より綺麗な人じゃ負けた気分になる、とことごとく振られ続けて現在のところ五連敗である。そして殿方からの告白はひっきりなしにやってくる。それを思い京夜はがっくりと項垂れた。茜を睨み付けようと思ったが、それよりも先に心が折れた。
「理不尽だ……。もう男子校じゃないのに。なんでもっと格好良い系じゃなかったんだろう、オレ……」
ぽんぽん、と慰めるように叩く茜の優しさが京夜には痛い。どちらかといえば中性的なイメージのある京夜と違い、茜は女の子にそれはそれはモテる甘いマスクの持ち主なのだ。
「大丈夫、俺に好かれてるから」
「ありがとー。なんかもう心が痛いなー」
ため息を吐きつつ、京夜は心を落ちつかせるようにコーヒーを口にする。
それを茜がどこか愛おしそうに見つめ、まったりとした休憩時間はすぐに終わりを迎えたのだった。
休憩に入った京夜は、数日前に見た少年Bを再び園内で見つけた。残念なことに今日は気の強そうな少女と一緒だった。先日といい今日といい気の強そうなタイプが好みなのか、とまったく関係のなさそうなことに関心しつつ、京夜は同じく休憩中だった滝本 茜とコーヒーを飲んでいた。
茜の無造作に遊ばせた緩いパーマのかかった髪は、明るく光に透けて輝く。茜は京夜とはまた違ったタイプのチャラ男だった。美しさに比重のある京夜に対し、茜は目元がキリッとした格好良いタイプのイケメンである。
京夜は光を背にした茜を眩しそうに見つめながら、残念そうに溜息を吐いた。
それに驚いたのは茜である。何故自分を見て溜息など吐くのか。俺が何かしたのか、と内心焦りつつ京夜に問いかけた。
「なんだ、どうしたー?」
「んーとね、この間男の子と来てた子が今日は女の子と来てるから、男の子とデートじゃなくてやっぱり下見だったのか、残念だなーって思っただけだよ」
自分が何かをしたわけではなかったことに胸をなで下ろしながら、茜は興味からさらに尋ねる。目の前の男が面食いなのは知っているので、そのお目当ての少年がどの程度なのか気になったのだ。
「ふーん、そいつ俺よりイケメン?」
「二人ともイケメンだけど茜くんと少年Bはタイプが違うよ。茜くんはどっからどう見てもチャラいし、少年Bはどっちかというと目つき悪いから不良わんこっぽいし」
「なら、見た目は違うけど中身はチャラいから、そのチャラ男の括りに京夜も入れてやんよ」
お揃いお揃い、と笑う茜に京夜もつられて笑う。
京夜が茜に腐っていることを隠すことなく話しているのには訳がある。
茜の姉が京夜の編集担当をしており、京夜と茜はその繋がりで知り合ったからだ。
その関係で京夜が男同士の恋愛観察が大好きだということを茜は知っている。しかし、茜は気にすることなく、京夜とよく行動を共にしていた。
京夜よりも年上の茜は大学三年だったが、同じ大学ということと趣味を隠すことなく気楽に話せるということもあり気安い間柄だった。食堂などで待ち合わせをして、一緒にランチをすることも多々あった。
そして何よりこの遊園地のバイトを先に始めたのも茜で、京夜を言葉巧みに同じバイトに誘ったのも茜だ。
その時、はたと気づいたように手を打つと、京夜は茜に告げる。
「あー、でもね茜くんと似てるとこが一つだけあるよ。腰砕けそうなくらい良い声してたな、一回しか近くで聞いてないけど」
「おやおやー、それは俺へのお誘いと取って良いのかなー?」
「茜くんとだと、オレの方が女の子役しないと駄目っぽいから却下ー」
「自分で体験した方がいい話書けると思うけど-?」
艶っぽく耳元で囁かれ、京夜はバッと勢いよく耳を片手で覆い、茜からイスごと一歩離れた。
「それ禁止! それでなくてもやらしい声してんのに、わざとそういう声出すの駄目、絶対!」
「脈アリー」
人の悪い笑みを浮かべながら茜はコーヒーを口に運ぶ。
「オレ、女の子好きだもんね」
「そんな事言いつつも、彼女いないくせにー」
付き合っても、自分より綺麗な人じゃ負けた気分になる、とことごとく振られ続けて現在のところ五連敗である。そして殿方からの告白はひっきりなしにやってくる。それを思い京夜はがっくりと項垂れた。茜を睨み付けようと思ったが、それよりも先に心が折れた。
「理不尽だ……。もう男子校じゃないのに。なんでもっと格好良い系じゃなかったんだろう、オレ……」
ぽんぽん、と慰めるように叩く茜の優しさが京夜には痛い。どちらかといえば中性的なイメージのある京夜と違い、茜は女の子にそれはそれはモテる甘いマスクの持ち主なのだ。
「大丈夫、俺に好かれてるから」
「ありがとー。なんかもう心が痛いなー」
ため息を吐きつつ、京夜は心を落ちつかせるようにコーヒーを口にする。
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