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本編
平穏な生活が壊れた瞬間
しおりを挟む毎日、毎日、門に立って不審者をチェックしたり、魔物が入らないように仲間と一緒に討伐したりとそれはそれは、平凡な生活を送っていた俺がなぜか、国王陛下に呼ばれた。
粗相をした覚えはない、ないはずだけど、呼ばれてる理由がわからないと人はやましい事がなくても心臓は走り回ったあとのようにうるさくなる事を今日初めて知った。
謁見の間で国王陛下と対面して…、国王陛下の威厳に圧倒される。
金色の美しい髪、碧い瞳はどこまでも冷たく俺を見ていた。
やばい、俺やっぱりなにかしてるのかもしれません。
母さん、父さんごめん、今日俺はきっと死刑にされるんだ。
そう思ってしまうほどに国王陛下の瞳は冷たい、何を考えてるのかも表情が読めなくて冷や汗が頬を伝う。
「ハァーーーーーッ、本当に此奴が魔族を魅了するスキルを持っているのか? ルーク」
「はっ!たしかに持っているはずです、今はその少しばかり地味ななりをしていますが…間違いないかと」
魔族を魅了ってなんだ?
なんの話しをしてるのかさっぱりわからないんだけど。
てか、ルーク様って王宮騎士団の魔法部隊隊長だったよな。
頭がめちゃめちゃいいとは聞いていたが、会話の内容がここまでわからないと本当に頭がいいんだなとか緊張感漂うこの場でついつい現実逃避をしていた。
「ルークが言うのなら間違いのだろう、ヴィル貴様に魔王討伐を命じる、同行者にここにいるルークと王宮騎士団団長のジルをつけることにした」
「…………?? 」
今、魔王討伐がどうとか聞こえましたが、気のせいですかね?
俺は情報処理が追いつかなくて、呆然と国王陛下の言葉を聞いていた。
反応がないことに焦れたのか、国王陛下がまたため息をついて、ルーク様になにやら言っているのだが、俺はその言葉を聞き取れない。
ルーク様とジル様が俺に近づいてきて、腕を掴まれてはっ!と我に返った。
「俺、門番なんですが!? 王様!? 魔王討伐ってそんなのできるわけ、うぐっ!! 」
言葉の途中でジル様に首をおさえられて、床に体をおさえつけられた。
低い声音が頭上からふってくる。
「国王陛下の前だ、無礼者が」
「まぁまぁ、いきなり魔王討伐しろと言われても混乱してしまいますよね」
俺の顔をのぞき込みながら優しく声をかけてきたルーク様に縋るように見つめれば、ニッコリと笑っても続く言葉は悪魔だった。
「ですが、これは国王陛下の命令です、絶対ですよ、大丈夫、貴方は特殊なスキルをお持ちですからね」
なんのことを言ってるのか理解できなくて、混乱するしかなかったけど、俺に拒否権なんて存在しないらしい。
絶対に逃げ出してやる、門番の仕事をクビになったからって死ぬわけじゃないんだ。
魔王討伐に向かったら、それこそ死んでしまう。
そう心に秘めた俺の考えなんて読んでいるのか、ルーク様が俺の耳元で囁く。
─────────逃げようなんて思わないでくださいね?
と、ゾクリと背筋に寒気が走って血の気が引いた。
母さん、父さん、俺はどうやら今日とんでもない命令を下されてしまいました。
そちらに逝ったときは歓迎してくれると嬉しいです。
国王陛下の命令は絶対、それは俺にだってわかってます。
ですが、俺門番兵ですよ? 門番兵が魔王討伐とはどこの世界の話ですか。
逃げ出したいのに逃げ出すことも許されず、王宮騎士団団長であるジル様に監視されながら旅に行くための準備をしていた。
本当にあっという間だった、あれよあれよとその日のうちに旅に行くはめになるなんて誰が予想出来ただろうか。
両親が残してくれた家に帰れるのもきっと今日が最後だと思うと切ないがしかたない。
大丈夫、俺は今から行くのは魔王討伐じゃなくて、父さん母さんのところなのだから。
門番兵の仕事も気に入っていたのに残念だなと思う。
時間もジル様も待ってくれなくて、焦れたのか苛立った様子でリュックを取り上げられた。
「もういいだろ、おら、行くぞ」
と、首根っこ掴まれて引きずられるように家を出た。
あんまりだ、今から死にに行くようなものなのに、も少し心の準備をさせてくれてもいいじゃないか。
家の外に出て、住み慣れた我が家を目に焼き付けた。
父さん、母さん、俺が早くにそちらに逝くのを許してください、俺の意思で行きたいわけじゃないんです。
いくら、王宮騎士団の団長ジル様と王宮騎士団の魔法部隊隊長のルーク様が一緒だと言われてもなー……。
お2人が強いのはわかっているが、色んな伝説を聞いたことあるし、全部が本当とは思ってないが真実も紛れてるはずだ。
でも、それでもだ、自称勇者達が何度も何度も魔王に挑んで今のところ誰一人勝てたことがない。
その時点で俺みたいな門番兵が行っても無駄死に決定でしょ、それなりに腕がたつ人間が行ってもダメなんだから。
引きずられながらもため息はでる。
「いい加減自分で歩け」
手が離されるとバランスを崩して尻もちをついた。
呆れたように俺を見てきたジル様が手を差し伸べてくれたから、手を取ろうとしたところへ、ルーク様が合流した。
その手をルーク様に掴まれてグイッと引っ張られ、意外にもルーク様は力があって立ち上がって、ふらついた俺を簡単に抱きとめてくれて、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ、心臓が騒いだ。
美形に軽々と受け止められるとか、なにそれ、くそほど萌えるじゃん。
なんて呑気なことを考えれたのは、この時までだ。
本当に俺ってなんで魔王討伐なんて命じられたんだろう?
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