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本編完結編
真実
しおりを挟む俺は自分が作った隠し部屋から転送魔法陣に触れて元の部屋に戻った。
反撃の準備を整えて、キリリクの正体を暴いてやると意気込んだまではいいが、その前にキリヤと連絡取らなければいけない。
キリヤは間違いなく本物だ、作られた偽者ではなかったことを考えるとなにかしらの手段でこちら側の世界に来たんだろ。
記憶を取り戻したことでテレポートが使えるようになったから、俺はテレポートでキリヤの部屋に飛んだ。
突然現れた俺にも動じない様子のキリヤは記憶を戻ったことがわかったようだ。
伸びてきた手が俺の頬に優しく触れる、その手に自分の手を重ねて瞼を閉じて擦り寄る。
久しぶりのキリヤだ、本物の、じんわりと寂しさとかつらさが込み上げてきて一筋の涙が頬を伝う。
「助けに来るのが遅くなってすまない」
「ふっ、助けに来てくれるって信じてたよ、俺の体どうなってんの?」
「眠ってる状態だ、ここは夢の世界だ、ユーリは夢の世界に閉じ込められた、それからユーリの成長も止まったんだ」
「へぇ、じゃあ、俺起きたら皆より年下のままってこと?」
「そういうことになるな、ユーリが眠りについてから5年だ、本来ならユーリも成人していた」
5年?何回もループ繰り返してるのに5年しか経ってないのか、どういうことだ?
眉間に皺を寄せて険しい顔をしていたからか、キリヤが俺の顔を覗き込んで眉間の皺に触れてきた。
「眉間にシワができてるぞ?なにか気になることでもあったのか?」
「俺何回もループしてるんだよ、6歳から16歳までを、なのになんで5年しか経ってないんだ?っておもってさ」
「ふむ、記憶を作ることができるなら自分が体験した全てが本当に起きたこととはかぎらないな、例えば1日眠っただけで1年経過してるとかありそうだ」
「ああ!そうか、キリリクは記憶を作り替えるなんて余裕できる、キリリクからどんどん俺は記憶を奪われたんだから、そう考えると俺がちゃんと過ごしたと思ってる月日は作られた記憶の可能性があるのか、それには気づかなかった」
納得はできるが、その可能性に気づくと俺の記憶ってどこからどこまで本物なのかわからないなと感じた。
キリリクがどこまで俺に記憶を植え付けてるのかわからない、俺は実際キリヤ達にレイプされてるんだろうか?本当はただの記憶にしかなくて、そんなことされないんじゃ…と頭の中をよぎる。
どこまで本物の記憶かなんて結局のところ俺にはわからないし、別にいいか、気にせんでもと結論付けて、ふと気になることを聞いてみた。
「ところでさ、魔女って転生者だった?」
「ん?どうしてた?」
「俺に植え付けられた記憶は俺の知らない世界のモノだった、てれびというものでやるゲームの世界、それがこの世界の設定だったんだ、俺は前世でこのゲームをプレイしていたみたいな」
「てれび?」
「うん、色んな映像が映し出される機会だよ、その機会を使ってまた別の機会も使って、ゲームをやるんだ、攻略対象のキャラたちと友好度を上げてっていう設定だった」
「そうか、なら、転生者だったのかもしれんな」
「でも、なんで転生者が魔女なんかになったんだろ、転生者は俺達にとって大切な客人だ、俺達の知らない知識を教えてくれたりするから、その転生者の知識を元に俺達の世界はよりよいものへと発展してきた、だからこそ転生者は大事に扱う、国によっては自国の王様や王子が嫁に貰うことだってあるほどだ、もちろん転生者が望めばだけどさ」
「そうだな」
「それなのになぜ、彼女は魔女なんかに身を落としたんだ、いや、魔女全員が悪いわけじゃないけどさ、魔女の中にも悪いやつがいるってだけで」
「ユーリを呪ったのは魔女というより、調べてわかったことだが、呪術使いだそうだ、呪いを本業にしてる魔女の派生?のようなものだと聞いた」
「へぇ、魔女の派生か、知らなかった」
「しかし、彼女がこちら側の世界にいるなんてな、どうりで彼女を倒したのに呪いが解呪できなかったわけだ」
「え?」
「あの女は死んでるぞ」
「じゃあ、キリリクって精神だけ俺の夢の中に入り込んだってわけか」
「そういうことになるな」
すでに俺を呪った本人は死んでいたことに驚いた。
生きてるから、こうして俺はまだ夢から覚めないのかと思ったのに死んでるのに俺を夢の中に縛り付けるなんて凄い憎まれようだ。
彼女にそこまで憎まれるなんて俺はなにをしたんだろうか、記憶にないんだ、いくら考えても。
見覚えだってないのに、あの時がたしかに初対面だったはず、初対面でいきなり俺は呪われた。
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