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本編1章
平和な日常は続かない。
しおりを挟むアッシュが全て終わったと大怪我をしたあの時、そう言ってくれた。
それからも俺はアッシュの別荘で暮らしている。
正式にアッシュと俺は婚約したからだ、ゲームの中とかなりシナリオが変わった、まだ学園を卒業もしてないし、1年の頃にアッシュと正式に婚約することになるなんて予想外だった。
それでも、俺に申し込みを断るなんてできなかった。
俺みたいな傷物でもいいのか?って言ってもアッシュは諦めなかったから。
この先どうなるかなんて予想はできなくても、ずっと俺に優しくて、俺のせいで片腕を失ってしまったアッシュを支えたいという気持ちが芽生えたから。
ただ今はまだ同じ温度の愛情を返すことができないけれど、それでも、受け入れることに決めたんだ。
それぞれどうなったのか、アッシュが教えてくれたけど、キリヤは王宮騎士団副団長という立場にも関わらず謀反を起こしたということで…死罪になったんだと聞いた時、俺は悲しかった。
推しが死んでしまったことが悲しくて悲しくて、ボロボロと泣いたら、アッシュがずっと俺を抱きしめて撫でてくれたんだよな。
自分以外のために泣くなとか、感情を乱すなとか言われなかった…、アッシュはどうやらヤンデレルートに進んでないことをあのとき確信した。
シエルは俺の専属執事でありながら主を…というのと、謀反に参加したのもあって国外追放、カナタはその頭脳を失うのは勿体ないってことで国監視の元研究室で研究をしてるらしい。
まぁ、タダ働きみたいなものだとか、リバーは王族なのもあって、死罪は免れたけど、期限なしの幽閉されるんだって。
つまり、俺の身の安全は保証されたってわけだけど、気分は晴れなかった。
キリヤは死んで、シエルは国外追放、カナタは生涯タダ働き、リバーは幽閉、全部全部俺が選択を間違えたからだ。
平和な日々が逆に辛くて毎日後悔に苛まれていた。
俺のせいで4人の人生を狂わせてしまった、それに後悔しないでいられるほど、俺は図太くない。
俺がヤンデレルートを上手く避けることができたら、そしたら、もっと…違う未来が待っていたはずなのに…。
外でなにやら話し声が聞こえる、なんだろう?と扉に近づくと護衛兵の人が会話をしてるらしい。
話題はアッシュの事っぽくて、聞いちゃいけないと思いつつも聞き耳を立てた。
「しかし、アッシュ様もひどいよな」
「そうだな、ユーリ様を手に入れるためなら、手段を選ばないって感じが俺怖いわ」
「俺もだ、ユーリ様はたしかに愛らしいけどさ、だからってあそこまでするか、普通」
「切る必要がない腕を医者に切り落とさせたときは、めちゃめちゃ怖かった」
「わかる、ユーリ様に罪悪感を芽生えさせるためだったんだろ?あれ」
「そうそう、それに謀反も仕組んだのはアッシュ様だしな」
「アッシュ様が監禁してユーリ様にひどいことさせてるとか、人体実験してるとか、そんな噂話きいたらそりゃあ冷静な判断なんてできないよな、ユーリ様も可哀想だよな、家族殺されてさ」
「そうなんだよな、宰相様を死刑にするなんて国王陛下もよく頷いたよな、この国大丈夫なのかな、あの人がいるから繁栄してるところあるし」
「宰相様も謀反に協力しちゃったからなー、まぁ、息子がアッシュ様に酷い扱いをされてるって噂聞いたら手を貸すよな」
「全部それを仕組んだのがアッシュ様なのに、それを知らないユーリ様も気の毒だよな」
え?どういうこと…、お父様が死刑になるなんて聞いてない、アッシュがそれを仕組んだってなに?
アッシュの腕は切り落とす必要もなかったって知らない、どういうこと!?
そっと、扉から離れて俺は寝室に移動して、ベッドに横になって布団を被っていた。
なにも聞きたくない、やだ、ヤダ、怖い、こわい、コワイ、そんなの知らない、アッシュが仕組んだって…何の話?
どうして、そんな…、アッシュのことを支えたいって思ってたのに…どうして、そんなのやだ、信じたくない、アッシュのあの優しさは偽りのものだったってこと?
全部が全部嘘で、俺を縛るために、俺を自分に依存させるために、仕組まれていた?
目の前が真っ暗になるようだった、俺は何も知らない、何も聞いてない、そう自分に言い聞かせないと心が壊れてしまいそうだった。
アッシュに抱いた感情は、アッシュによって作られたものだなんて現実を受け止めきれない。
アッシュもヤンデレだったんだ、ガラガラと音を立てて、平穏な日々が崩れ落ちるようだった。
俺はもう誰も信じたくない…。
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