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1年ぶりに村に戻ると…。
しおりを挟む神様に村に僕だけ先に入るように言われて、僕は渋々村に来たけど、やっぱり、凄い顔で僕を見てる。
当然だろう、生贄に捧げた人間が村に戻ってきたのだから。
厄介払い出来たはずなのになんでお前が?という顔で僕を見てる村人達にいたたまれなくて、今すぐにでも逃げ出したい気分だった。
僕はもうこの目には耐えれないのかもしれない、神様に甘やかされすぎたようだ。
1人の村人が近づいてきた、なにをされるのかとビクッと肩が跳ねる。
「なんでお前がいるんだ!!神様のとこから逃げ出したのか!だから、神様はこの1年なにもしてくださらなかったのか!」
「な、なんのこと?」
「生贄を捧げたのに、お前が逃げ出すから村の畑は育ちが悪いんだぞ!そこまで育ててやった恩を忘れたのか!化け物!」
そう叫んだ村人に呼応するかのように他の村人にも化け物とか、役立たずと罵られて複数の村人が僕に向かって石を投げたけど、その石は僕には届かなかった。
目の前で石は砂のように消えたからだ、何が起きてるのかわからない。
僕は今まで神様のところにいたし、それなのになんで村は危機に陥ってるんだ?
たしかに僕は村を助けて欲しいとか、そんな気持ちはなかったけれど。
後ろから手が伸びてきて、僕は背後から神様に抱きしめられた。
「ねぇ、なにしてるの?」
「神様…」
「そこのお前さ、この子に化け物とか言った?」
神様の声は冷たかった、背筋が凍るほどに。
多分だけど、僕から見えない表情も冷たいのだろう、村人が神様を見て怯えてるから。
「ひっ、か、神様、だって、その子が逃げ出したんじゃないかって」
「この子?逃げてないよ、1年間ずっと俺の元にいたからな」
「じゃ、じゃあ、なんで、村を…」
「はっ、なんで助けるんだよ、この子を苦しめた村なんて、今日はさ、試しに来てやったんだ」
「え?」
「この子を暖かく迎え入れて、生贄にした事を後悔するようなら助けてやろうってね」
「か、神様、それはどういった意味…」
「お前黙れよ」
神様がそう言うと目の前の僕に向かって最初に化け物扱いした男は爆発した。
何が起きたのか、わからなくて混乱してると神様は言葉を続けた。
「なのにさ、お前らと来たら、戻ってきたこの子を化け物扱いとかウケるよな、この子は俺の嫁になったというのに、神の嫁に対しての暴言俺が許すと思う?」
まって、情報が完結しない、だって僕はいつから生贄じゃなくて嫁になったんだ?
たしかに一緒にお風呂入るし、布団だって一緒だし、ご飯作ったり、洗濯したりしてるけど、夫婦ってそれだけじゃないよな?
夫婦や恋人の間で交わされるなにかについて僕は詳しくない、ずっと化け物扱いされて育ってきたから教えてくれる人間なんていなかったし。
知識はなくても、あれだけじゃない気がするのはなんとなくわかるんだ、だってあれじゃ子供できないから。
僕は男だから子供できないとしても、でも、あれじゃ子供ができる行為をしてるとは思えないから、お嫁さんって変なんじゃ?と考えてると、神様が僕のお腹をすすっと撫でた。
「この村を滅ぼしたら子作りでもするか?」
体を屈めた神様に囁かれて、ぞわりと背筋が粟立つ。
やばい、僕の考えてることがわかったのか、恥ずかしい。
「それに…お前に名前を与えないとな、俺の嫁になるんだから」
名前…?名前…ボロボロと涙が溢れ出した。
名前を貰えるってことがこんなに嬉しいなんて思わなかった、ずっと化け物やモノ扱いを受けてたから、名前を貰えるのは1人の人間として扱われてるようで嬉しい。
僕の頭を撫でた神様がその場にいた村人を爆破した、内側から爆発して弾け飛ぶ村人達の肉片があちこちに飛び散るのをどこか他人事のように見つめる。
目の前で村人が殺されても僕はどうやら何も感じないようだ。
面倒だからと不思議な力で村全体に火をつけた神様、家の中にいた村人が慌てて外に出てきて、それをまた爆発させる。
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