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第一章じーちゃんから貰った鍵
風の精霊part3
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「くっ!!」
空はもう一度刀を構えたが、風刃を繰り出そうにも誠がいる場所の為動けない。
急ぎ追い掛けようとした空は、咄嗟に横に飛び避けた。
誠の護衛を任されたレインは消して弱くない。寧ろ、一対一なら空はレインに勝つのは至難の業な位には強かった。
そのレインが、誠に向かってくる敵を前に、空手の正拳突きの構えを見せた。
咄嗟に気を練り、そのままコークスクリューを生み出しながら腕を前につき出す。
その力が生み出した衝撃は大きく、辺りの木々まで巻き込みながら空が倒し損ねた敵を根刮ぎ凪ぎ払った。
勿論レインは、空がちゃんと避ける事も計算して放っている。
短い間だが、誠を守ると言う共通の目的の元二人はお互いを理解し信頼し合っていた。
「……強つえええ!!」
思わず空が唸る。
それくらいレインの力は圧倒的だった。
空とて活躍しているのだが、力の絶対量ではレインに軍配が上がるのだ。
『やれやれ…………二人とも未だ青いな』
白がそう言うが早いか、白は襲いかかって来る魔獣を眼力一つで弾き返した。
「「!!!」」
唖然とする二人だったが、魔獣はレイン達では気配を感じる事が難しい為無理はない。だが存在だけは白に教えて貰っていたのだから、注意すべきだった。
それは白への甘えに他ならない。
「「申し訳ございません!!」」
二人は白に頭を下げた。
誠を守って貰っているとはいえ、白を動かすつもりなんて微塵も無かったのだ。
元より白ほどの聖霊が人間の為に働いてくれる等奇跡に近い。
『…人間にしては良くやった……』
「「!!!」」
まさか伝説の聖霊に誉められるとは思っても見なかった二人は大喜びだ。未だ若い空は未だしも、レインは結構な年なのにはしゃいでしまった。
『ところで……全員のしてしまっては、口を割らせる事は難しそうだな……魔獣もどうやら術で操られていたようだ。……術をかけた者はもうこの近くにはおらぬ。……早々に立ち去った』
白は周囲の気配を読むとそう教えてくれた。
「やはりコイツらは使い捨てだったか……」
「そうね……でも、誰が何のために?…」
目的は誠だとして…どこの国の者が?
本当に誠をどうにかしようとするならこんな中途半端な人数で攻めてくる事はしないだろう。
レインと空だけでも結構な戦力なのだ。
何かを確認したかった?
考えられる事は幾らでもある。何故なら、誠自体、本人は不可抗力、宰相に唆されて撃ち放っ魔法は既に諸外国に知れっている筈だ。強大な魔力を持つ神に等しい存在がこの国に戻っただけでなく、伝説の聖霊が誠を護っている。
誠は全然その点を理解していないが、白の存在はどの国も喉から手が出るほどに欲しいものだった。
『まあ考えていても仕方がないだろう。……先に進むぞ』
白の鶴の一声で一行は先に進むことになった。だから気付かなかった。誠がもう辛そうに苦痛に歪んだ顔をしなくなった事に。
今の誠はただ疲れて眠っているだけだ。
この事に気付いているのはブレスレットの中の龍人と誠を背負っている白の二人だけ。
きっとこうなると解っていた。
どんな者もそれとして受け入れる性質がある誠の側を心地好いと思うのは人間だけではない。精霊も同じなのだから。
いや、肉体の無い精霊の方がそれを好む性質は強い。
それなのに誠を拒むことが有り得ないと白は理解していた。
理解していたが、危険な事には変わりなかった。精神が受け入れても、肉体が持たない可能性も大きかった。
云わば賭けの様な物だ。
眠っている誠の中に風の精霊の存在を感じながら、やれやれと白はホッと一息をついた。
誠のチート過ぎるスキル、天然たらし能力を本当の意味で理解している白は、これからの誠の苦難とそれ以上に持たらされる祝福の大きさに改めて人知れず気を引き締めるのだった。
◇◇◇
誠は苦痛に悶える身体?を何とかしようと足掻いていた。
と言ってもお産を耐えるのと同じで耐えるしかないのだが。
痛い
苦しい
辛い
三重苦の様な状態の誠はそれでも風の精霊を癒したかった。
誠が今感じている感情も痛みも全て風の精霊も感じている事だと理解していた。
だから耐えられる。
罪もない風の精霊が苦痛を感じるなどあってはならない。
それなのに、自分で癒せる術がない者を放り出す事なんて、誠には出来なかった。
そしてどうしても救いたいと言う、誠のその思いは、風の精霊にも勿論伝わっていた。
まあ、シンクロしているのだから当然なのだが、誠はアホだから気付いていなかった。だからこその本当の真心が精霊には伝わっていた。
風の精霊は黒い力に引き摺られそうになるなか、誠の持つ暖かい太陽の様な力に惹き付けられていた。
誠は自分でも気付かないうちに風の精霊を癒し始めていたのだが、これすらも本来は奇跡に近い。
龍人とて、そこまで望んではいなかった。
体内に封じ込めれば御の字だ。
それ以上状態が悪化する事を食い止める事ができ、時間を稼げれば………森を戻し風の精霊をも戻す事が出来る筈だと考えていたから。
その予想の斜め上を行く誠の行動に白や龍人が気付くのはもう少し先の事である。
空はもう一度刀を構えたが、風刃を繰り出そうにも誠がいる場所の為動けない。
急ぎ追い掛けようとした空は、咄嗟に横に飛び避けた。
誠の護衛を任されたレインは消して弱くない。寧ろ、一対一なら空はレインに勝つのは至難の業な位には強かった。
そのレインが、誠に向かってくる敵を前に、空手の正拳突きの構えを見せた。
咄嗟に気を練り、そのままコークスクリューを生み出しながら腕を前につき出す。
その力が生み出した衝撃は大きく、辺りの木々まで巻き込みながら空が倒し損ねた敵を根刮ぎ凪ぎ払った。
勿論レインは、空がちゃんと避ける事も計算して放っている。
短い間だが、誠を守ると言う共通の目的の元二人はお互いを理解し信頼し合っていた。
「……強つえええ!!」
思わず空が唸る。
それくらいレインの力は圧倒的だった。
空とて活躍しているのだが、力の絶対量ではレインに軍配が上がるのだ。
『やれやれ…………二人とも未だ青いな』
白がそう言うが早いか、白は襲いかかって来る魔獣を眼力一つで弾き返した。
「「!!!」」
唖然とする二人だったが、魔獣はレイン達では気配を感じる事が難しい為無理はない。だが存在だけは白に教えて貰っていたのだから、注意すべきだった。
それは白への甘えに他ならない。
「「申し訳ございません!!」」
二人は白に頭を下げた。
誠を守って貰っているとはいえ、白を動かすつもりなんて微塵も無かったのだ。
元より白ほどの聖霊が人間の為に働いてくれる等奇跡に近い。
『…人間にしては良くやった……』
「「!!!」」
まさか伝説の聖霊に誉められるとは思っても見なかった二人は大喜びだ。未だ若い空は未だしも、レインは結構な年なのにはしゃいでしまった。
『ところで……全員のしてしまっては、口を割らせる事は難しそうだな……魔獣もどうやら術で操られていたようだ。……術をかけた者はもうこの近くにはおらぬ。……早々に立ち去った』
白は周囲の気配を読むとそう教えてくれた。
「やはりコイツらは使い捨てだったか……」
「そうね……でも、誰が何のために?…」
目的は誠だとして…どこの国の者が?
本当に誠をどうにかしようとするならこんな中途半端な人数で攻めてくる事はしないだろう。
レインと空だけでも結構な戦力なのだ。
何かを確認したかった?
考えられる事は幾らでもある。何故なら、誠自体、本人は不可抗力、宰相に唆されて撃ち放っ魔法は既に諸外国に知れっている筈だ。強大な魔力を持つ神に等しい存在がこの国に戻っただけでなく、伝説の聖霊が誠を護っている。
誠は全然その点を理解していないが、白の存在はどの国も喉から手が出るほどに欲しいものだった。
『まあ考えていても仕方がないだろう。……先に進むぞ』
白の鶴の一声で一行は先に進むことになった。だから気付かなかった。誠がもう辛そうに苦痛に歪んだ顔をしなくなった事に。
今の誠はただ疲れて眠っているだけだ。
この事に気付いているのはブレスレットの中の龍人と誠を背負っている白の二人だけ。
きっとこうなると解っていた。
どんな者もそれとして受け入れる性質がある誠の側を心地好いと思うのは人間だけではない。精霊も同じなのだから。
いや、肉体の無い精霊の方がそれを好む性質は強い。
それなのに誠を拒むことが有り得ないと白は理解していた。
理解していたが、危険な事には変わりなかった。精神が受け入れても、肉体が持たない可能性も大きかった。
云わば賭けの様な物だ。
眠っている誠の中に風の精霊の存在を感じながら、やれやれと白はホッと一息をついた。
誠のチート過ぎるスキル、天然たらし能力を本当の意味で理解している白は、これからの誠の苦難とそれ以上に持たらされる祝福の大きさに改めて人知れず気を引き締めるのだった。
◇◇◇
誠は苦痛に悶える身体?を何とかしようと足掻いていた。
と言ってもお産を耐えるのと同じで耐えるしかないのだが。
痛い
苦しい
辛い
三重苦の様な状態の誠はそれでも風の精霊を癒したかった。
誠が今感じている感情も痛みも全て風の精霊も感じている事だと理解していた。
だから耐えられる。
罪もない風の精霊が苦痛を感じるなどあってはならない。
それなのに、自分で癒せる術がない者を放り出す事なんて、誠には出来なかった。
そしてどうしても救いたいと言う、誠のその思いは、風の精霊にも勿論伝わっていた。
まあ、シンクロしているのだから当然なのだが、誠はアホだから気付いていなかった。だからこその本当の真心が精霊には伝わっていた。
風の精霊は黒い力に引き摺られそうになるなか、誠の持つ暖かい太陽の様な力に惹き付けられていた。
誠は自分でも気付かないうちに風の精霊を癒し始めていたのだが、これすらも本来は奇跡に近い。
龍人とて、そこまで望んではいなかった。
体内に封じ込めれば御の字だ。
それ以上状態が悪化する事を食い止める事ができ、時間を稼げれば………森を戻し風の精霊をも戻す事が出来る筈だと考えていたから。
その予想の斜め上を行く誠の行動に白や龍人が気付くのはもう少し先の事である。
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