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第一章じーちゃんから貰った鍵

お供は俺より偉そうで?

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レインがキレている。
先程まで喧嘩する気満々だった俺だったが、自分よりもブチキレている者を見ると正気に戻ってしまうから驚きだ。

「おい、レイン?」
「誠様は黙っていてください。…私はこのチビデブ禿げと話しているのです」

「………」

ああ……言っちゃったよ。
俺だって本当の事はオブラートに繰るんだ上で箱に仕舞ってリボン迄してたってのに、このお嬢様は全部包み隠さず言ってしまったよ。

「誰が、チビデブ禿げだ!!!!」

まあ、怒るよね。

「あなた以外、ここにその形容詞が似合う者がいると?」

ああ、美少女がしれっとそんな事を言うから、火に油を注いじゃったじゃないか。
レインは腕を組んで斜め上から下を見るような、蔑む様な視線を目の前の商人風の男に向けた。

「小娘!!!!…可愛いからと黙っていればいい気になりおって!!!!」

あれ?このおっさん実はロリコンだったのか?

「いや、あんた別に黙ってなんていないだろ!?」

ついつい冷静に突っ込んじまった。

「生意気なガキ共め!!」

そうおっさんが言うと、裏からぞろぞろと手下と思われる野郎共が、次から次に出てくるではないか。

「少しこのガキ共に口の聞き方を教えてやれ!!」

本当なら多勢に無勢だ。焦って逃げ出しても良いものだけど、レインも空もけろっとしているから、何だか俺も冷静でいられた。

「誠様……空も、いいですか?あのチビデブ禿げは私の獲物です。手は出さないでくださいね?」

「手なんて出さないけど、レイン。お前大丈夫かよ?どう見てもあれ(チビ)は変態だぜ?」

ちょっと心配になり注意換気を促した。

「大丈夫です。…踏みつけてやりますよ」

うーん、レインの除いちゃいけない部分を覗いてしまった様な。
まあ、見た目とは裏腹にレインは、俺より大人だからな。

「誠様が動く必要何てありません。俺だけで十分です。…ああ、勿論あの禿げはレインさんにお譲りします」

キリッとした顔で俺に向かってお任せください!と敬礼でもしそうな勢いだ。

「空は良い子ね」

同い年風に見える容姿で、そんな台詞を言わないでくれ。
何のコントかと思うだろ。

「じゃあさ、俺は虎を檻から出していい?」

ムカつくおっさんよりも正直俺は虎の方が気になる。
それに比べれば、禿げたおっさん何てどうでもいい。

「構いませんが、気を付けてくださいね?…神獣は誇り高い生き物ですから」

「ああ、解ったよ」

雑魚は二人に任せて俺は虎と向き合う事にした。
正直、俺が戦うよりも二人に任せていた方が、早いし安全だ。
レインも空もプロだから。
俺が虎に近付こうとすると、男達は俺を静止しようと腕を掴もうとする。

あくまでも掴もうとしたんだ。
その手は俺に触れる事なく、空を舞った。
空が腕をネジ上げたのだ。

「お前ごときが誠様に触れらると思うなよ?」

空は不敵に笑った。
その姿は不敵で、動作には玄人と素人の差がある。
どう見ても、空が格上だった。
あいつら見た目だけは及第点なのだが、そこは烏合の衆。
統制された動きではなく、チンピラの域を脱していない。

俺は安心してこの場を空に任せると、ゆっくりと虎に近付き声を掛けた。

「よう、随分似合わない場所にいるな?…あんたにはこの狭い場所は似合わないだろう?」

寝ている虎は、片目を開け誠を一瞥するとまた目を閉じてしまう。

「何だよ?…俺じゃあ、役不足だってのか?」

布で覆われている事もあり、近くに来て解ったが、俺が知っている虎よりも大きく見える。

「あんた……綺麗だな」

無視されているけど、懲りずに俺は話しかけた。
神秘的…と言った方が正しいかの知れない。
この虎は神獣と呼ばれる事はある。
だから尚更、こんな場所に居させちゃいけない。それは……正しくない。

「お前が望まなくても、俺はここからお前を出す」

俺は鍵が付いている場所を見付けると鍵を観察した。
自慢じゃ無いが、鍵開けは昔じーちゃんに仕込まれたのだ。
大抵の物なら開けらる自信がある。
今にして思うと、孫に何教えてんだよ!?と思わなくも無いが、役にたちそうなスキルだから、まあ良いだろう。

鍵事態はそんなに複雑な物では無さそうだ。これなら開けられる。

俺はベルトに仕込んであったピンを取り出すと鍵穴に差し入れた。
何故ピンなど持っているかと言うと、これもじーちゃんの教えだったりする。

世の中、何があるか解らないから備えておけ、そう言われてベルトに色々細工をしたものを誕生日プレゼントにくれたのだ。
まあ、使うことは殆ど無かったが、せっかく作ってくれた物だしと思い、使っていたのがこんなところで役に立つとは思わなかった。
本当に人生とは何が有るか解らないのもである。

鍵に耳を寄せ音を確認する。
何度かピンを動かしているうちに、カシャンと開いた音がした。
だから俺は鍵を取り外し、檻のドアを開けた。
変だったのは、檻のドアを開ける際、パンっと言う音がした事だ。
その音に驚いた様に目を覚ました虎に、何だよ、音で驚く何て少しは可愛いところが有るじゃねーか。等と微笑ましささえ覚えた。
それに何も知らない俺は、異世界の檻は音がするんだな、と考えもせずに思っていたのだ。 
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