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第一章 かぐや姫見たいな……
第5話側にいるのが心地好い
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「でも、まあお互いに側にいるのが苦痛じゃないならいいけどな…」
近藤君が最後に言った言葉が何故だか心にすとんと落ちてきた。
一番最後にボソッと呟いた近藤君が一番届いて欲しかった言葉は、月子に届くことは無かった。
『…お前の側にいるのが、男じゃ無いなら、俺はいい…』
◇◇◇
トイレから戻ると教室の廊下で光輝が待っていた。
どうやら待ちきれなかったらしい。月子を見付けると、途端に顔を綻ばせた。
その表情を見た月子もまた、心が温かくなった。
「待ってくれたの?」
月子が聞くと、光輝は待ってた、と素直に答えた。光輝のこの行き過ぎた執着にも似た感情が普通じゃ無いことは、鈍い月子にも解ったが、先程の近藤君の言葉でふっ切れた。
きっとお互いに納得しているのなら、それでいい。……誰かが傷つく訳では無いのだから。
報われないのは、近藤君である。
そこは、伝えたかった言葉じゃない。……きっと今ここにいて、月子の心が読めたなら、突っ込んでいる事だろう。
「そう言えば、月子。……移動教室って何?場所が変わったって言いに来てたけれど?」
「え?…ちょっとそれ詳しく教えて貰ってもいい?」
何ですと!?と言いたくなった。
何故にトイレに行っている間にそんな重要な事があったのだ?
月子はまだ、教室に残っていた挨拶を交わす程度のクラスメートに話を聞くことにした。
「次の授業の場所が変わったの?」
「ええ、何時もの2階の教室から、1号棟の3階に変わったのよ。……私は用事があって早退するからまだここにいるんだけど、急いだ方がいいよ?」
「有り難う!!」
月子は自分と光輝の授業に使う教科書とノートを急いで取ると、光輝の手を繋いで駆け出した。
だって間に合わない。
何で教えてくれなかったんだ 、美咲の奴!!と、心のなかで、この場にはいない仲の良い友達に悪態をついていた。
まあ、光輝が自分が言うから、と答えていた事なんて月子は知る由も無いのだから仕方だないのかも知れない。
「月子、その場所は知ってるの?」
「知ってるけど、凄く遠い教室で滅多に使わないのに何で今日に限って!!」
走りながら月子は此方を見ずに言った。
それほど焦っているのだろう。
同じスピードで階段を降りながら光輝は息一つ切らしてはいない。
「そう……解ったわ。……じゃあ、その教室の前の廊下を思い浮かべて」
「え?…」
何だか解らない月子だったが、光輝の言葉に素直に頭が働いて、教室の廊下を思い浮かべた。
すると、ふっと一瞬だが違和感を感じた後に、教室の廊下に移動していた。
「え?…何で?」
「理由は話すけど、今は時間が無いんじゃない?」
教科の先生はとても厳しい人でなので、直ぐに頭を切り替えて教室に入った。
これが、他の人なら問いただしていたことだろうが、何故だか光輝がしたことなら、それも有りだと、自分でも理解出来ていないが思ってしまっている。
不思議で懐かしい感覚。
何故だか恐怖も感じなかった。
こんなこと普通じゃない。有り得ないのに…。
◇◇◇
その後も、先生の言葉は頭の中に流れるけれど、留めて置くことは出来なかった。
これは…後で復習だな。……この単元が出てきたら点数が取れる気がしない。
授業が終わると、光輝に先程の話がしたいと言われた月子は、美咲に用事があると断って、屋上にお弁当を持って上がった。
美咲に断ってから行くからと、光輝に先に屋上に行っててくれる様に伝えてあったので、既に光輝は屋上に着いていた。
「ごめん、光輝。待った?」
「うーん、大丈夫だよ」
フェンスに身体を預けて此方を見る光輝に思わず見とれてたしまった。
風に髪が靡くその姿は、写真の中の創られた世界のように完成されていたから。
「綺麗ね…」
つい、口から漏れてしまった言葉だが、偽りのない本心だ。
「綺麗?…ああ、私の事?……私からしたら、月子。……貴女だけが綺麗よ」
「何いってるの?…私なんて十並みだって解ってる」
「人が何を基準に綺麗だと言っているのか、言葉の意味としては理解しているけど、私達とは感覚が違うから共感は難しいね」
「私達?」
光輝は何を可笑しな事を言っているのか。
「もう、気付いているんでしょう?…私に人間にはない力が有るって云うことを…」
その言葉で、月子は先程の瞬間移動を思い出した。
何故、そんな大事な事を忘れていられたのかが解らない。
「……うん」
としか答えられない。
だって、忘れていました、何てカッコ悪すぎる。
「人間じゃ………ないんだ。妖怪に近いけど、それとも違う。宇宙人でもない。……昔から俺達と人間は共存していたのだから、地球人の方が近いけれど、それも違う」
「光輝?」
光輝の声が先程まで聞いていた物より、少し低いのは気のせいだろうか?
「俺の故郷は、月に有る」
「え?…」
「俺は月の都から来たんだ」
「月の都って?」
「月子、かぐや姫って知ってる?」
「勿論、竹から産まれたかぐや姫でしょう?…その物語の…」
「そう……それ。……それ俺の爺さん何だ」
「はい?…爺さんって?」
百歩譲っても、そこは婆さんだろう。
「爺さんだよ。……俺達は子供の頃は性別が定まっていない。……成人を迎える日に決まるんだ」
爆弾発言だった。
目が点になる、とはこう言う時を言うんだろうか?
近藤君が最後に言った言葉が何故だか心にすとんと落ちてきた。
一番最後にボソッと呟いた近藤君が一番届いて欲しかった言葉は、月子に届くことは無かった。
『…お前の側にいるのが、男じゃ無いなら、俺はいい…』
◇◇◇
トイレから戻ると教室の廊下で光輝が待っていた。
どうやら待ちきれなかったらしい。月子を見付けると、途端に顔を綻ばせた。
その表情を見た月子もまた、心が温かくなった。
「待ってくれたの?」
月子が聞くと、光輝は待ってた、と素直に答えた。光輝のこの行き過ぎた執着にも似た感情が普通じゃ無いことは、鈍い月子にも解ったが、先程の近藤君の言葉でふっ切れた。
きっとお互いに納得しているのなら、それでいい。……誰かが傷つく訳では無いのだから。
報われないのは、近藤君である。
そこは、伝えたかった言葉じゃない。……きっと今ここにいて、月子の心が読めたなら、突っ込んでいる事だろう。
「そう言えば、月子。……移動教室って何?場所が変わったって言いに来てたけれど?」
「え?…ちょっとそれ詳しく教えて貰ってもいい?」
何ですと!?と言いたくなった。
何故にトイレに行っている間にそんな重要な事があったのだ?
月子はまだ、教室に残っていた挨拶を交わす程度のクラスメートに話を聞くことにした。
「次の授業の場所が変わったの?」
「ええ、何時もの2階の教室から、1号棟の3階に変わったのよ。……私は用事があって早退するからまだここにいるんだけど、急いだ方がいいよ?」
「有り難う!!」
月子は自分と光輝の授業に使う教科書とノートを急いで取ると、光輝の手を繋いで駆け出した。
だって間に合わない。
何で教えてくれなかったんだ 、美咲の奴!!と、心のなかで、この場にはいない仲の良い友達に悪態をついていた。
まあ、光輝が自分が言うから、と答えていた事なんて月子は知る由も無いのだから仕方だないのかも知れない。
「月子、その場所は知ってるの?」
「知ってるけど、凄く遠い教室で滅多に使わないのに何で今日に限って!!」
走りながら月子は此方を見ずに言った。
それほど焦っているのだろう。
同じスピードで階段を降りながら光輝は息一つ切らしてはいない。
「そう……解ったわ。……じゃあ、その教室の前の廊下を思い浮かべて」
「え?…」
何だか解らない月子だったが、光輝の言葉に素直に頭が働いて、教室の廊下を思い浮かべた。
すると、ふっと一瞬だが違和感を感じた後に、教室の廊下に移動していた。
「え?…何で?」
「理由は話すけど、今は時間が無いんじゃない?」
教科の先生はとても厳しい人でなので、直ぐに頭を切り替えて教室に入った。
これが、他の人なら問いただしていたことだろうが、何故だか光輝がしたことなら、それも有りだと、自分でも理解出来ていないが思ってしまっている。
不思議で懐かしい感覚。
何故だか恐怖も感じなかった。
こんなこと普通じゃない。有り得ないのに…。
◇◇◇
その後も、先生の言葉は頭の中に流れるけれど、留めて置くことは出来なかった。
これは…後で復習だな。……この単元が出てきたら点数が取れる気がしない。
授業が終わると、光輝に先程の話がしたいと言われた月子は、美咲に用事があると断って、屋上にお弁当を持って上がった。
美咲に断ってから行くからと、光輝に先に屋上に行っててくれる様に伝えてあったので、既に光輝は屋上に着いていた。
「ごめん、光輝。待った?」
「うーん、大丈夫だよ」
フェンスに身体を預けて此方を見る光輝に思わず見とれてたしまった。
風に髪が靡くその姿は、写真の中の創られた世界のように完成されていたから。
「綺麗ね…」
つい、口から漏れてしまった言葉だが、偽りのない本心だ。
「綺麗?…ああ、私の事?……私からしたら、月子。……貴女だけが綺麗よ」
「何いってるの?…私なんて十並みだって解ってる」
「人が何を基準に綺麗だと言っているのか、言葉の意味としては理解しているけど、私達とは感覚が違うから共感は難しいね」
「私達?」
光輝は何を可笑しな事を言っているのか。
「もう、気付いているんでしょう?…私に人間にはない力が有るって云うことを…」
その言葉で、月子は先程の瞬間移動を思い出した。
何故、そんな大事な事を忘れていられたのかが解らない。
「……うん」
としか答えられない。
だって、忘れていました、何てカッコ悪すぎる。
「人間じゃ………ないんだ。妖怪に近いけど、それとも違う。宇宙人でもない。……昔から俺達と人間は共存していたのだから、地球人の方が近いけれど、それも違う」
「光輝?」
光輝の声が先程まで聞いていた物より、少し低いのは気のせいだろうか?
「俺の故郷は、月に有る」
「え?…」
「俺は月の都から来たんだ」
「月の都って?」
「月子、かぐや姫って知ってる?」
「勿論、竹から産まれたかぐや姫でしょう?…その物語の…」
「そう……それ。……それ俺の爺さん何だ」
「はい?…爺さんって?」
百歩譲っても、そこは婆さんだろう。
「爺さんだよ。……俺達は子供の頃は性別が定まっていない。……成人を迎える日に決まるんだ」
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