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menu.8 腹一杯に愛をくらう(2) ※
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「……壊れてもいいよね」
疑問でも確認でもない、強制するような響きだったが、奏太の言葉に修一は頷く。
「二度と着けるか、青木が用意したものなんぞ」
今まで聞いたことのない口調での答えに、奏太は満足そうに笑う。
「あとで可愛いのかキラキラしたの一緒に選ぼうね」
初めての形に残るプレゼントだよ、と告げる。
修一はその言葉に微笑む。
「ああ……、嬉しいよ」
ふっと、どちらからともなく目が合い、誓いを交わすようにキスする。それから奏太は、ピアスとの闘いのゴングを鳴らした。
「……これ、どうやって外すの」
「……確か、球体部分を斜めに捻るかすれば大丈夫……だと思う……」
青木が着け直ししているのを目にしていた記憶が数回分、朧気に残っていた。
それを思い返しながらの修一の曖昧な回答を受け、奏太は挑戦する。
ピアスに触れる際に、乳頭や乳輪にも奏太の指が触れる。ぞくりと修一の肌が粟立った。
「ふ、ぅ……っ」
やはり、と修一は思った。
何がどう違うのかは分からないが、やはり奏太と青木とではこちらの感じ方が何もかも違う。
奏太に敏感な部分に触れられるだけで性感が高まり、興奮する。
本来ならきちんと見届けるべきなのに、奏太の指で乳首オナニーめいたことをしているなど彼に知られたら、どのように思われるだろうか。
そのとき、音を立ててキャプティブビーズが本体から外れた。くるくると本体のリング部分を回し、ホールから外す。外したピアスを奏太は無造作にベッド横のくず入れに入れ、もう片方のピアスに手をかけた。
ピアスを外す作業が進むにつれて、修一は自身を縛り付ける青木の呪縛が薄れていくのを感じる。
髪やボディピアスは修一が望んでそうしていたものではなかった。あの長さの髪は青木の好みだったし、ピアスは入れ墨の代替品を兼ねての物だということだった。
背中に入れ墨を入れても良かったが、元々の肌が損なわれるのは惜しい、ということを言っていた気もするが。
だから元々の髪型に近い短さに散髪し、そしてピアスを外して、ようやく修一の体は青木に囚われる以前に近い状態に戻れた。
心身に負った傷はどうしようもないが、それも時間が経つにつれ記憶は徐々に薄れていくだろう。
なにより奏太が側にいてくれる。
それを思うと、修一の身も心もきゅんきゅんとした高鳴りを止められなかった。
一度外したことで要領を得ていたのか、奏太はすぐにピアスを外し終わり、くず入れに投下していた。その流れでベッドチェスト上に置いてあるランプをつけた。
オレンジの光に設定してあるLED電球が柔らかに室内を照らす。光量つまみを中程度に合わせると、奏太は修一にのしかかった。
「……うん、やっぱりちょっとぐらい表情が見えた方がいいや」
まっすぐ見られ、思わず修一は顔を反らす。
童貞でも生娘でもなし、ベッドの中で恥じるような貞操などとっくにドブの中に投げ捨てられた。それでも、奏太は人生の中で初めての恋人になろうとしている相手だ。
警官になるという夢に向かってただひたすら爆走していた修一は学生時代にまともな恋愛をしてこなかった。
だから30歳が視野に入り始めたこの年になっても、本命の相手とのセックスにどう反応したらいいのか探り探りの面が否めない。
そう思案していると、奏太が露わになっている首筋に指を這わせた。
予期していなかった感覚に、思わず声が漏れる。
「……恥ずかしがってる? かわいい……」
うっとりとした声で言ったかと思うと、鎖骨のあたりにじゅっ、と音を立てて吸い付かれる。
いくつもの鬱血痕を散らされつつ、数年ぶりに身軽になった乳首をやんわりと摘ままれた。
「ひぅ、……っ」
「声我慢しないでね。修くん、顔だけじゃなくて体格も俺の性癖だからさ」
乳首や胸部をいじり回されながらも、奏太の言に怪訝な表情を浮かべる。
「ど、いう……っ、こと、だ……?」
「んー、ふふっ」
奏太は顔にほんの少しだけ嗜虐の色を乗せる。右手でぐっと修一の胸部を下から寄せ上げ、粒を口内に含む。
「ひぃ、っ……!」
唾液でぬめる熱い舌に舐られ、吸われ、弾かれ、歯で甘噛みされ。快楽のあまり修一の背がしなる。
思わず声を抑えようとして、右手の甲で口元を抑えようとする。だが奏太に読まれていたのか、手首を掴まれることで制止された。
「っあ、」
「だーめ。声抑えないでって言ったでしょ?」
にっこりと笑う奏太。その笑顔に不穏なものが見え隠れしているようにしか見えず、修一は思わず口を噤む。
ニィ……、と奏太の顔が愉悦に笑む。目つきと唇に綺麗な弧を描き、言った。
「俺、白状しちゃうけど、女の子ならこだわりは特になかったんだ。だけど相手が男なら、自分よりも体格のいい相手をひんひん啼かしてアヘらせるのが一番興奮するんだよね」
とんでもない告白に修一の頬が引きつる。
「修一くんの俺の大事なネコちゃんだから絶対乱暴にはしないけど……」
するり、とスウェット越しに修一の股間を撫でてくる。
「寝る時間なくなっちゃったらごめんね?」
ある意味クズ男の論理だが、そのクズ男を受け入れたのは修一だ。
それに青木とその一味以上のクズは、連中の同業者以外にはそこまでいないだろうとも思う。
だから、修一はこう答えるしかなかった。
「……壊れるまでヤるのは勘弁してくれ。俺は死ぬまでお前の料理を美味しく食って生きていたいんだ」
その言葉に、奏太の表情が優しげに緩む。いいよ、という返答と共に優しいキスが落とされた。
疑問でも確認でもない、強制するような響きだったが、奏太の言葉に修一は頷く。
「二度と着けるか、青木が用意したものなんぞ」
今まで聞いたことのない口調での答えに、奏太は満足そうに笑う。
「あとで可愛いのかキラキラしたの一緒に選ぼうね」
初めての形に残るプレゼントだよ、と告げる。
修一はその言葉に微笑む。
「ああ……、嬉しいよ」
ふっと、どちらからともなく目が合い、誓いを交わすようにキスする。それから奏太は、ピアスとの闘いのゴングを鳴らした。
「……これ、どうやって外すの」
「……確か、球体部分を斜めに捻るかすれば大丈夫……だと思う……」
青木が着け直ししているのを目にしていた記憶が数回分、朧気に残っていた。
それを思い返しながらの修一の曖昧な回答を受け、奏太は挑戦する。
ピアスに触れる際に、乳頭や乳輪にも奏太の指が触れる。ぞくりと修一の肌が粟立った。
「ふ、ぅ……っ」
やはり、と修一は思った。
何がどう違うのかは分からないが、やはり奏太と青木とではこちらの感じ方が何もかも違う。
奏太に敏感な部分に触れられるだけで性感が高まり、興奮する。
本来ならきちんと見届けるべきなのに、奏太の指で乳首オナニーめいたことをしているなど彼に知られたら、どのように思われるだろうか。
そのとき、音を立ててキャプティブビーズが本体から外れた。くるくると本体のリング部分を回し、ホールから外す。外したピアスを奏太は無造作にベッド横のくず入れに入れ、もう片方のピアスに手をかけた。
ピアスを外す作業が進むにつれて、修一は自身を縛り付ける青木の呪縛が薄れていくのを感じる。
髪やボディピアスは修一が望んでそうしていたものではなかった。あの長さの髪は青木の好みだったし、ピアスは入れ墨の代替品を兼ねての物だということだった。
背中に入れ墨を入れても良かったが、元々の肌が損なわれるのは惜しい、ということを言っていた気もするが。
だから元々の髪型に近い短さに散髪し、そしてピアスを外して、ようやく修一の体は青木に囚われる以前に近い状態に戻れた。
心身に負った傷はどうしようもないが、それも時間が経つにつれ記憶は徐々に薄れていくだろう。
なにより奏太が側にいてくれる。
それを思うと、修一の身も心もきゅんきゅんとした高鳴りを止められなかった。
一度外したことで要領を得ていたのか、奏太はすぐにピアスを外し終わり、くず入れに投下していた。その流れでベッドチェスト上に置いてあるランプをつけた。
オレンジの光に設定してあるLED電球が柔らかに室内を照らす。光量つまみを中程度に合わせると、奏太は修一にのしかかった。
「……うん、やっぱりちょっとぐらい表情が見えた方がいいや」
まっすぐ見られ、思わず修一は顔を反らす。
童貞でも生娘でもなし、ベッドの中で恥じるような貞操などとっくにドブの中に投げ捨てられた。それでも、奏太は人生の中で初めての恋人になろうとしている相手だ。
警官になるという夢に向かってただひたすら爆走していた修一は学生時代にまともな恋愛をしてこなかった。
だから30歳が視野に入り始めたこの年になっても、本命の相手とのセックスにどう反応したらいいのか探り探りの面が否めない。
そう思案していると、奏太が露わになっている首筋に指を這わせた。
予期していなかった感覚に、思わず声が漏れる。
「……恥ずかしがってる? かわいい……」
うっとりとした声で言ったかと思うと、鎖骨のあたりにじゅっ、と音を立てて吸い付かれる。
いくつもの鬱血痕を散らされつつ、数年ぶりに身軽になった乳首をやんわりと摘ままれた。
「ひぅ、……っ」
「声我慢しないでね。修くん、顔だけじゃなくて体格も俺の性癖だからさ」
乳首や胸部をいじり回されながらも、奏太の言に怪訝な表情を浮かべる。
「ど、いう……っ、こと、だ……?」
「んー、ふふっ」
奏太は顔にほんの少しだけ嗜虐の色を乗せる。右手でぐっと修一の胸部を下から寄せ上げ、粒を口内に含む。
「ひぃ、っ……!」
唾液でぬめる熱い舌に舐られ、吸われ、弾かれ、歯で甘噛みされ。快楽のあまり修一の背がしなる。
思わず声を抑えようとして、右手の甲で口元を抑えようとする。だが奏太に読まれていたのか、手首を掴まれることで制止された。
「っあ、」
「だーめ。声抑えないでって言ったでしょ?」
にっこりと笑う奏太。その笑顔に不穏なものが見え隠れしているようにしか見えず、修一は思わず口を噤む。
ニィ……、と奏太の顔が愉悦に笑む。目つきと唇に綺麗な弧を描き、言った。
「俺、白状しちゃうけど、女の子ならこだわりは特になかったんだ。だけど相手が男なら、自分よりも体格のいい相手をひんひん啼かしてアヘらせるのが一番興奮するんだよね」
とんでもない告白に修一の頬が引きつる。
「修一くんの俺の大事なネコちゃんだから絶対乱暴にはしないけど……」
するり、とスウェット越しに修一の股間を撫でてくる。
「寝る時間なくなっちゃったらごめんね?」
ある意味クズ男の論理だが、そのクズ男を受け入れたのは修一だ。
それに青木とその一味以上のクズは、連中の同業者以外にはそこまでいないだろうとも思う。
だから、修一はこう答えるしかなかった。
「……壊れるまでヤるのは勘弁してくれ。俺は死ぬまでお前の料理を美味しく食って生きていたいんだ」
その言葉に、奏太の表情が優しげに緩む。いいよ、という返答と共に優しいキスが落とされた。
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