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menu.7 愛のふくらみパンケーキ(1)※
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直接的な表現はあまりありませんが、匂わせてはいるのでR18目安の※付きです。
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
ちゅんちゅん、という雀の声に修一は起こされた。
のっそりと起き上がって乱雑に頭をかく。
既に遮光カーテンは開けられていて、寒暖遮蔽性のあるレースカーテンのみになっている。
「……はぁ……」
修一は思わずため息をついた。
何故なら、今自分が寝ている場所は、リビングのソファーでもなく客間の床でもない。以前も寝かされていた奏太のベッドだったからだ。
修一は頭を抱えてゆっくりと前に沈み込む。
「……あぁぁぁぁ……」
昨晩、鍋と共に日本酒も飲んだのだから、多少記憶がぶっ飛んでいてくれていてもいいようなものなのに、修一の頭脳は昨晩、寝る直前の出来事をしっかり覚えていた。
夕食だった鍋の片付けが終わったのは夜の9時頃だった。流石にこれ以上はお邪魔できない、と紫苑とネイサンが言ったところで解散の流れになったのだ。
修一以外の面々が奏太の家を出ていったあと、修一は奏太に勧められシャワーを借りた。未開封の歯ブラシまで借りて寝支度が整った状態になると、入れ違いでシャワーと寝支度を整えた奏太がにこやかに同衾を申し出てくる。
今日こそソファーで寝る、と修一は言ってみたが、奏太は「2回一緒に寝たんだから大丈夫」という理論で修一を無理矢理ベッドに寝かしつけた。
これが別の人物だったなら、例えばこれをやってくるのが紫苑だったなら、修一も口と多少の平手で抵抗したかもしれない。そもそも彼女がネイサン以外の人物と同衾するなどあり得ないことではあるだろうが。
だが、何故か奏太に対しては、力ずくで抵抗や拒否を示すということが考えられなくなる。
昨晩と同じようにぐいぐいと手を引かれ、ぼすん、と奏太のクイーンサイズのベッドに放り込まれる。
慌てて身を起こそうとするが、その前に奏太に上に乗られた。
軽い、と思ったのもつかの間。
急にキスをされた。唇が触れあうようなものではなく、明らかに官能を引き出そうとするようなそれだった。
ん、と思わず声が漏れる。体の中心がじん、と疼き始めた。
今までキス一つでこんなことになったことなどなかったのに。
気づけば奏太は修一の口内をいいいように弄びながら、髪や耳朶などに触れている。その手の動き一つにも、修一は翻弄されていた。
数秒だったのか数分だったのかも分からないその交わりは、奏太の方から離れたことで終わりを迎えた。
は、と息をつくような音がし、唾液が糸を引いてふつりと切れる。
奏太は瞬き一つの間、修一を見つめ、そして男の顔で笑った。
「……修一くん、気持ちよくなっちゃったねえ」
紅潮してうっすら汗もかいているのは自覚している。どんな表情をしているのかは考えたくはなかった。
不意に奏太がぺたり、と上腹部に手を当てた。胃の位置するあたりだ。
「これはおばあちゃんの考えでね、好きな相手を落とすにはまず胃袋からいくべきだ、って。じいちゃんとばあちゃんは見合いだったけど、その後のデートに必ずばあちゃんの手作りの何かしら食べるものを持っていってたら、プロポーズが『あなたの手料理を死ぬまで食べたいです』……だったらしいんだ」
そこから、つぅー……と五本の手指が心臓のあたりまで移動した。
ふ、と修一の引き結んだ唇から吐息が漏れる。
「だからね、俺も本気で付き合いたいなって思った相手には、まず食べさせるようにしてる。……修一くんは、初めて俺が本気になった相手だよ」
は、は、と荒い呼吸を繰り返している修一の髪を払い、耳元に口を寄せて、囁く。
「……食べ物もセックスの相手も、恋人としても、俺以外のヤツじゃあ満足できないようにしてあげるよ」
普段の中性的なテノールボイスからはあまり想像がつかない、奏太の夜の声。
唯一と決めた相手だけに出す、求愛の雄の声だった。
「ひぅ、っ……!」
そう認識した瞬間、急激に修一の体温が上がる。
ゾクゾクと肌が粟立ち、性感帯がジンジンと疼く。体の震えも止まらない。心臓がうるさい。……奏太から目が離せない。
そんな様子の修一を見て、奏太はますます笑みを深めた。
「……修一くん」
くす、と奏太は笑い声を漏らす。
奏太の気配が遠ざかったかと思うと、不意に隣がぼすんと沈み込んだ。
呆気にとられている修一に掛け布団をかけた奏太は、自分も布団に潜り込む。
「……は?」
思わず修一がそう言うと、奏太は布団の中で自身の腹をさすりながら言った。
「いやー、お医者さんにまず自分のお腹を労れーみたいなこと言われてたじゃん? だからまずはそうしようかな~、って!」
その声は昼間と同じ明るいもので、先ほどまでの気配はみじんもなかった。
「というわけで、お休みー」
信じられない、という顔で見てくる修一にひらひらと手を振り、奏太はそのまま背を向ける。規則正しい呼吸音が聞こえてくるのに時間はかからなかった。
「……」
修一は、先ほどとは別の意味で震えていた。
期待、羞恥、性欲、自嘲、様々な感情がごちゃごちゃと入り乱れ――……。
-------------------
7話の開始です。
これから年末になるので、書き溜めや投稿もスローペースになると思います。
ご了承ください。
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ちゅんちゅん、という雀の声に修一は起こされた。
のっそりと起き上がって乱雑に頭をかく。
既に遮光カーテンは開けられていて、寒暖遮蔽性のあるレースカーテンのみになっている。
「……はぁ……」
修一は思わずため息をついた。
何故なら、今自分が寝ている場所は、リビングのソファーでもなく客間の床でもない。以前も寝かされていた奏太のベッドだったからだ。
修一は頭を抱えてゆっくりと前に沈み込む。
「……あぁぁぁぁ……」
昨晩、鍋と共に日本酒も飲んだのだから、多少記憶がぶっ飛んでいてくれていてもいいようなものなのに、修一の頭脳は昨晩、寝る直前の出来事をしっかり覚えていた。
夕食だった鍋の片付けが終わったのは夜の9時頃だった。流石にこれ以上はお邪魔できない、と紫苑とネイサンが言ったところで解散の流れになったのだ。
修一以外の面々が奏太の家を出ていったあと、修一は奏太に勧められシャワーを借りた。未開封の歯ブラシまで借りて寝支度が整った状態になると、入れ違いでシャワーと寝支度を整えた奏太がにこやかに同衾を申し出てくる。
今日こそソファーで寝る、と修一は言ってみたが、奏太は「2回一緒に寝たんだから大丈夫」という理論で修一を無理矢理ベッドに寝かしつけた。
これが別の人物だったなら、例えばこれをやってくるのが紫苑だったなら、修一も口と多少の平手で抵抗したかもしれない。そもそも彼女がネイサン以外の人物と同衾するなどあり得ないことではあるだろうが。
だが、何故か奏太に対しては、力ずくで抵抗や拒否を示すということが考えられなくなる。
昨晩と同じようにぐいぐいと手を引かれ、ぼすん、と奏太のクイーンサイズのベッドに放り込まれる。
慌てて身を起こそうとするが、その前に奏太に上に乗られた。
軽い、と思ったのもつかの間。
急にキスをされた。唇が触れあうようなものではなく、明らかに官能を引き出そうとするようなそれだった。
ん、と思わず声が漏れる。体の中心がじん、と疼き始めた。
今までキス一つでこんなことになったことなどなかったのに。
気づけば奏太は修一の口内をいいいように弄びながら、髪や耳朶などに触れている。その手の動き一つにも、修一は翻弄されていた。
数秒だったのか数分だったのかも分からないその交わりは、奏太の方から離れたことで終わりを迎えた。
は、と息をつくような音がし、唾液が糸を引いてふつりと切れる。
奏太は瞬き一つの間、修一を見つめ、そして男の顔で笑った。
「……修一くん、気持ちよくなっちゃったねえ」
紅潮してうっすら汗もかいているのは自覚している。どんな表情をしているのかは考えたくはなかった。
不意に奏太がぺたり、と上腹部に手を当てた。胃の位置するあたりだ。
「これはおばあちゃんの考えでね、好きな相手を落とすにはまず胃袋からいくべきだ、って。じいちゃんとばあちゃんは見合いだったけど、その後のデートに必ずばあちゃんの手作りの何かしら食べるものを持っていってたら、プロポーズが『あなたの手料理を死ぬまで食べたいです』……だったらしいんだ」
そこから、つぅー……と五本の手指が心臓のあたりまで移動した。
ふ、と修一の引き結んだ唇から吐息が漏れる。
「だからね、俺も本気で付き合いたいなって思った相手には、まず食べさせるようにしてる。……修一くんは、初めて俺が本気になった相手だよ」
は、は、と荒い呼吸を繰り返している修一の髪を払い、耳元に口を寄せて、囁く。
「……食べ物もセックスの相手も、恋人としても、俺以外のヤツじゃあ満足できないようにしてあげるよ」
普段の中性的なテノールボイスからはあまり想像がつかない、奏太の夜の声。
唯一と決めた相手だけに出す、求愛の雄の声だった。
「ひぅ、っ……!」
そう認識した瞬間、急激に修一の体温が上がる。
ゾクゾクと肌が粟立ち、性感帯がジンジンと疼く。体の震えも止まらない。心臓がうるさい。……奏太から目が離せない。
そんな様子の修一を見て、奏太はますます笑みを深めた。
「……修一くん」
くす、と奏太は笑い声を漏らす。
奏太の気配が遠ざかったかと思うと、不意に隣がぼすんと沈み込んだ。
呆気にとられている修一に掛け布団をかけた奏太は、自分も布団に潜り込む。
「……は?」
思わず修一がそう言うと、奏太は布団の中で自身の腹をさすりながら言った。
「いやー、お医者さんにまず自分のお腹を労れーみたいなこと言われてたじゃん? だからまずはそうしようかな~、って!」
その声は昼間と同じ明るいもので、先ほどまでの気配はみじんもなかった。
「というわけで、お休みー」
信じられない、という顔で見てくる修一にひらひらと手を振り、奏太はそのまま背を向ける。規則正しい呼吸音が聞こえてくるのに時間はかからなかった。
「……」
修一は、先ほどとは別の意味で震えていた。
期待、羞恥、性欲、自嘲、様々な感情がごちゃごちゃと入り乱れ――……。
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7話の開始です。
これから年末になるので、書き溜めや投稿もスローペースになると思います。
ご了承ください。
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