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menu.4 怒り沸騰のミネラルウォーター(4)
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「……ちなみになんですけど、例えばどんな?」
「あ?」
急に飛んできた質問に青木は眉を顰める。
いくら肝が据わっているとしても、ここまでの据わりようはちょっと普通ではない。
何かあるのか、それともただの虚勢か。
青木は考えるが、答えの出ない疑問を考えるだけ時間の無駄だろうと切り捨てた。
ひとまず奏太の質問に答えてやる。
「まあ、オーソドックスなとこなら、まずはボコって、それからテメェの取り柄の料理が二度と出来ねえレベルに両手を粉砕して、その後歩いて逃げられねえように両足も折るだろ。そんで、車に積んでどっかのダムか湖か掘った穴に放り込んで終ぇだな」
「へ、へぇ……」
奏太はその痛い目、というより制裁の内容に少し怖じ気づく。
いくら覚悟して聞いたとしても、普通の人間なら少なくとも多少は取り乱す内容だ。
思わず言葉に詰まってしまった奏太を見て、青木はようやく仕置きが出来ると指を鳴らす。
「んじゃ、そろそろ……」
「あ、ちょっと待ってもらっていいです?」
「あァん?!」
まだ何かあるのか、と子分たちは奏太の神経の太さに戦慄する。そして、正面の兄貴分の顔をとても見ることが出来なかった。
ここで負けてたまるか、と奏太は大きく息を吸い込む。
おそらく青木の性格や発言を考えるに、今この場におそらく修一が来ている。目の前で殴られるところを見せたくないと、真剣に思った。
(……負けてたまるか)
心の中で呟く。それから、また笑みを戻す。
「辞世の句ってワケじゃないんですけど、言い残したことがあるんですよぉ」
奏太の申し出に、こめかみが引きつりながらも一応耳を傾けてやることにする青木。
本人が辞世の句という単語を出したので、遺言か何かかと思ったからだ。
当然それは、修一に分からせるために利用するためだ。
お前を囲っているのは誰か、お前を唯一愛していいのは誰か、ということを致命的なまでに刻みつけるために。
「ほーん、面白ぇ。聞いてやるよ」
そう返した青木は、修一から手を離して奏太に向き直る。
(――やめろ、)
問答無用でこの会話を聞かされていた修一の動悸が激しくなる。呼吸が荒くなり、心臓付近を押さえるように服を握りしめた。
(奏太、頼む、それ以上は――)
緊張で喉が乾く。酸欠に喘ぐような呼吸を繰り返すしか出来ない。まるで声帯が凍り付いたようだ。
(口に出すな……!)
「修一くんのこと縛り付けて、楽しいですか?」
「っ……!!」
言った。言ってしまった。
奏太は不敵に笑い続け、青木は憤怒のあまり血管が浮き出、龍崎は救いようの無い馬鹿を見たとため息をつき、子分たちは奏太の神経を疑い、修一は数々の記憶が繰り返されようとしていることにとうとう心が折れた。
「ぁ……、」
ずるり、と修一は床にへたり込む。
龍崎は彼を支えることはしなかった。ただ、冷たく一瞥しただけだった。掴んでいた腕を離すと、だらん、と重力に従って落ちる。
流石に、大丈夫なのかと案じ青年が声をかける。
「……あの、」
「放っておけ」
「え……」
青木に聞こえないようにか、抑えた声で冷たく言い放つ龍崎。ブリッジを押し上げ眼鏡の位置を直していた。
「そいつは青木さんの愛玩用だ。二度と青木さんに逆らえないように壊しておいた方がいい」
本当なら、手足の片方ずつでももいでおいた方がより面倒が減ると思うが、と彼が本音を口にする前に、青木の声が静寂の中に轟く。
「……あ?」
まるで地獄の釜を開けたような、おどろおどろしい低い声。
鹿倉会系の組織の中でも上位に位置する暴力団の若頭補佐を本気で怒らせたというのに、奏太はずっと笑っていた。
「だって修一くん、ホントは今の状況1㎜も望んでないんだなってことぐらい分かりますよ。普通はヤクザとなんて関わり合いになんかなりたくないんですから。でも、あなたはそうやって修一くんのこと縛り付けてる。修一くんにおかずごちそうしてお泊まりしてもらって朝ご飯ふるまっただけの俺にすら、こうして閉じ込めて暴力振るおうとしてる。随分なやり方ですよね」
「……テメェ……」
青木は怒りのあまりに、無意識に両手指を鳴らす。
手を組んでもいないのに鮮明に関節が鳴る音を聞いて、子分たちはいよいよ青木の怒髪天がどれほどで収まるかと考え始める。
過去と比べても、一番に君臨するほどの怒りぶりだ。
ずかずかと青木は長いコンパスで一気に奏太に詰め寄り、彼の目を覆っていたアイマスクを力任せに引きちぎる。
「いったっ」
奏太のことを考慮する気などさらさらない毟りようだったため、彼の額やまぶたなどに抉るようなひっかき傷、耳の裏にアイマスクの紐が擦れた擦り傷が出来る。
視界を解放されて最初に見たのは、逆鱗を突かれて殺気を丸出しにした青木の姿だった。
アイマスクを床に、べちゃりと音が明らかになるほどに強く強く叩き付けながら、青木は宣告した。
「そんなに死にてぇなら、お望み通りにしてやるよ……!!」
「あ?」
急に飛んできた質問に青木は眉を顰める。
いくら肝が据わっているとしても、ここまでの据わりようはちょっと普通ではない。
何かあるのか、それともただの虚勢か。
青木は考えるが、答えの出ない疑問を考えるだけ時間の無駄だろうと切り捨てた。
ひとまず奏太の質問に答えてやる。
「まあ、オーソドックスなとこなら、まずはボコって、それからテメェの取り柄の料理が二度と出来ねえレベルに両手を粉砕して、その後歩いて逃げられねえように両足も折るだろ。そんで、車に積んでどっかのダムか湖か掘った穴に放り込んで終ぇだな」
「へ、へぇ……」
奏太はその痛い目、というより制裁の内容に少し怖じ気づく。
いくら覚悟して聞いたとしても、普通の人間なら少なくとも多少は取り乱す内容だ。
思わず言葉に詰まってしまった奏太を見て、青木はようやく仕置きが出来ると指を鳴らす。
「んじゃ、そろそろ……」
「あ、ちょっと待ってもらっていいです?」
「あァん?!」
まだ何かあるのか、と子分たちは奏太の神経の太さに戦慄する。そして、正面の兄貴分の顔をとても見ることが出来なかった。
ここで負けてたまるか、と奏太は大きく息を吸い込む。
おそらく青木の性格や発言を考えるに、今この場におそらく修一が来ている。目の前で殴られるところを見せたくないと、真剣に思った。
(……負けてたまるか)
心の中で呟く。それから、また笑みを戻す。
「辞世の句ってワケじゃないんですけど、言い残したことがあるんですよぉ」
奏太の申し出に、こめかみが引きつりながらも一応耳を傾けてやることにする青木。
本人が辞世の句という単語を出したので、遺言か何かかと思ったからだ。
当然それは、修一に分からせるために利用するためだ。
お前を囲っているのは誰か、お前を唯一愛していいのは誰か、ということを致命的なまでに刻みつけるために。
「ほーん、面白ぇ。聞いてやるよ」
そう返した青木は、修一から手を離して奏太に向き直る。
(――やめろ、)
問答無用でこの会話を聞かされていた修一の動悸が激しくなる。呼吸が荒くなり、心臓付近を押さえるように服を握りしめた。
(奏太、頼む、それ以上は――)
緊張で喉が乾く。酸欠に喘ぐような呼吸を繰り返すしか出来ない。まるで声帯が凍り付いたようだ。
(口に出すな……!)
「修一くんのこと縛り付けて、楽しいですか?」
「っ……!!」
言った。言ってしまった。
奏太は不敵に笑い続け、青木は憤怒のあまり血管が浮き出、龍崎は救いようの無い馬鹿を見たとため息をつき、子分たちは奏太の神経を疑い、修一は数々の記憶が繰り返されようとしていることにとうとう心が折れた。
「ぁ……、」
ずるり、と修一は床にへたり込む。
龍崎は彼を支えることはしなかった。ただ、冷たく一瞥しただけだった。掴んでいた腕を離すと、だらん、と重力に従って落ちる。
流石に、大丈夫なのかと案じ青年が声をかける。
「……あの、」
「放っておけ」
「え……」
青木に聞こえないようにか、抑えた声で冷たく言い放つ龍崎。ブリッジを押し上げ眼鏡の位置を直していた。
「そいつは青木さんの愛玩用だ。二度と青木さんに逆らえないように壊しておいた方がいい」
本当なら、手足の片方ずつでももいでおいた方がより面倒が減ると思うが、と彼が本音を口にする前に、青木の声が静寂の中に轟く。
「……あ?」
まるで地獄の釜を開けたような、おどろおどろしい低い声。
鹿倉会系の組織の中でも上位に位置する暴力団の若頭補佐を本気で怒らせたというのに、奏太はずっと笑っていた。
「だって修一くん、ホントは今の状況1㎜も望んでないんだなってことぐらい分かりますよ。普通はヤクザとなんて関わり合いになんかなりたくないんですから。でも、あなたはそうやって修一くんのこと縛り付けてる。修一くんにおかずごちそうしてお泊まりしてもらって朝ご飯ふるまっただけの俺にすら、こうして閉じ込めて暴力振るおうとしてる。随分なやり方ですよね」
「……テメェ……」
青木は怒りのあまりに、無意識に両手指を鳴らす。
手を組んでもいないのに鮮明に関節が鳴る音を聞いて、子分たちはいよいよ青木の怒髪天がどれほどで収まるかと考え始める。
過去と比べても、一番に君臨するほどの怒りぶりだ。
ずかずかと青木は長いコンパスで一気に奏太に詰め寄り、彼の目を覆っていたアイマスクを力任せに引きちぎる。
「いったっ」
奏太のことを考慮する気などさらさらない毟りようだったため、彼の額やまぶたなどに抉るようなひっかき傷、耳の裏にアイマスクの紐が擦れた擦り傷が出来る。
視界を解放されて最初に見たのは、逆鱗を突かれて殺気を丸出しにした青木の姿だった。
アイマスクを床に、べちゃりと音が明らかになるほどに強く強く叩き付けながら、青木は宣告した。
「そんなに死にてぇなら、お望み通りにしてやるよ……!!」
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