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「何か、食べたい物はある?
夜はもう予約しちゃってるけど、ランチは君の好きな物にしよう」
ようやく発作が落ち着いたらしい西園寺さんは、いつものように穏やかに笑って聞いてくれた。
だから僕は、前々から気になっていたお店の名前を挙げた。
「じゃあ『la mia terra』でも良いですか?
西園寺さんがプロデュースしたお店、実は一度行ってみたかったので‥‥‥」
そこはチェーン展開するイタリア料理店で、パスタやピザを主に取り扱う、ファミリー層をターゲットにした比較的安価なお店らしい。
最近店名が変更になったらしいよと、何故かニヤニヤしながらハラちゃんがこの間教えてくれた。
「嬉しいな、俺の仕事を気にかけてくれて。
じゃあお昼は、そこにしようか」
少し照れ臭そうに笑い、西園寺さんはそう答えた。
「別に、そのせいだけではありませんけどね。
そう言えば、お店の名前が最近変わったとハラちゃんに聞いたんですけど。
何か意味が、あるんですか?」
何となく気恥ずかしくて、それを誤魔化すために口にしたその問いに、ギクリとしたように綺麗な顔を引きつらせる西園寺さん。
‥‥‥怪しい。
「いや別に、深い意味は無いんだけどね?
単なる、リニューアルというか‥‥‥」
明らかに挙動不審な様子を不思議に思い、答える気がないらしき西園寺さんを尻目に、スマートフォンを取り出して翻訳ソフトを立ち上げた。
そしてその店名を入力し、翻訳にかけると、とんでもなく気持ちが悪い事実が判明した。
「......愛してる、陸」
愕然として、画面に表示された言葉を震える声で読み上げた。
「‥‥‥ごめん」
バツが悪そうに、ボソッと謝罪の言葉を口にする西園寺さん。
だけど僕は無言のままスマホを操作してイヤホンを耳に装着すると、音楽の再生ボタンを押した。
「何か、食べたい物はある?
夜はもう予約しちゃってるけど、ランチは君の好きな物にしよう」
ようやく発作が落ち着いたらしい西園寺さんは、いつものように穏やかに笑って聞いてくれた。
だから僕は、前々から気になっていたお店の名前を挙げた。
「じゃあ『la mia terra』でも良いですか?
西園寺さんがプロデュースしたお店、実は一度行ってみたかったので‥‥‥」
そこはチェーン展開するイタリア料理店で、パスタやピザを主に取り扱う、ファミリー層をターゲットにした比較的安価なお店らしい。
最近店名が変更になったらしいよと、何故かニヤニヤしながらハラちゃんがこの間教えてくれた。
「嬉しいな、俺の仕事を気にかけてくれて。
じゃあお昼は、そこにしようか」
少し照れ臭そうに笑い、西園寺さんはそう答えた。
「別に、そのせいだけではありませんけどね。
そう言えば、お店の名前が最近変わったとハラちゃんに聞いたんですけど。
何か意味が、あるんですか?」
何となく気恥ずかしくて、それを誤魔化すために口にしたその問いに、ギクリとしたように綺麗な顔を引きつらせる西園寺さん。
‥‥‥怪しい。
「いや別に、深い意味は無いんだけどね?
単なる、リニューアルというか‥‥‥」
明らかに挙動不審な様子を不思議に思い、答える気がないらしき西園寺さんを尻目に、スマートフォンを取り出して翻訳ソフトを立ち上げた。
そしてその店名を入力し、翻訳にかけると、とんでもなく気持ちが悪い事実が判明した。
「......愛してる、陸」
愕然として、画面に表示された言葉を震える声で読み上げた。
「‥‥‥ごめん」
バツが悪そうに、ボソッと謝罪の言葉を口にする西園寺さん。
だけど僕は無言のままスマホを操作してイヤホンを耳に装着すると、音楽の再生ボタンを押した。
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