その男、ストーカーにつき

ryon*

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 ドキドキし過ぎて、胸が苦しい。
 なのに余裕な感じで楽しそうに笑う西園寺さんに少し苛立ち、またしてもギロリと彼の顔面を睨み付けた。
 だけど彼は何事も無かったような涼しい顔をして食事を続け、『豚汁も美味しいね』などとしれっとのたまった。

 あんな真似をされて、味なんて分かるか!
 このストーカーの、変質者め。
 ……ホント、ムカつく。

***

 食事を終え、後片付けを二人で終える頃には、21時を少し過ぎていた。
 だからそろそろ頃合いかなと思い、笑顔で締めの言葉を口にした。

「今日は意外と、楽しかったです。
 良かったらまた、遊びに来てください。
 今度は家族が、いる時に」

 すると西園寺さんは不思議そうに、こてんと首を傾げた。
 僕よりも体の大きな西園寺さんがそんな風にする姿は、ちょっぴりシュールで面白い。

 だからそれに、またしても吹き出しそうになったのだけれど。
 そこで彼の発言の、意味するところが分からず今度は僕の方が首を傾げた。

 うん?……なんだ、この反応は。
 もう用は全部、終わった……よな?

 じっと西園寺さんの、『ありがとう、またね』的な言葉を待ってみたけれど、彼の口から飛び出したのは、全く想定外の発言だった。

「え……っと……陸斗くん?
 今日は君のご家族は、戻らないんだよね?」
  
「はぁ‥‥‥まぁ、そうですね。
 二見さんがご用意して下さった、温泉旅館で羽を伸ばしている頃だと思いますが」

 何も考える事なく、素直に答えた。
 すると西園寺さんはフッと小さく笑って手を引き、少し乱暴にその腕の中に僕を閉じ込めた。

「......!?」

 突然の凶行に驚き、意味が分からずカチンと固まる僕の体。
 その隙に背中にゆっくりと、彼の長くしなやかな指が這わされ、体が小さく震えた。

「陸斗くん。夜はまだまだ、長いよ?」

 耳元で、甘く囁かれた言葉。
 ……それにびっくりして横を向き、顔をガン見すると、西園寺さんは艶やかに微笑んだ。
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