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そして舞台の、幕が開く⑤
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なんだか耳にした事のある曲だなと思いながら、ステージに魅入っていたのだけれど。
そこで、はたと気付いた。
これは奏くんが料理を作りながら時折口ずさんでいた、あの鼻歌の曲だ!
......そりゃあ何も知らない私を前に、自分の曲を歌ってみせるなんていうリスク、わざわざ犯さないわよね。
まるで気付いていなかった自分の間抜け具合に心底呆れながらも、視線は奏くんに釘付けになり、離せなかった。
楽しそうに満面の笑みを浮かべ、広いステージの上、ぴょんぴょんと跳ねるように躍り、歌う彼。
その姿は、とても眩しくて。
きゃあきゃあと歓声をあげ、彼の名を夢中で叫ぶファンの女の子達を見て、彼は本当に華月の言うように国民的人気のアイドルグループ、JOKERのメンバーの一人なのだと嫌でも思い知らされた。
そのため一瞬また苛立ちと、同時にほんの少しの寂しさに襲われそうになった。
だけど、せっかくのライブなのだ。
誘ってくれた時、確か華月も言っていたではないか。
仕事の伝手で譲って貰った関係者席だから、プレミアものだと。
余計な事を考えるのは、今はもうやめよう。
だってどうせ私がここに居るだなんて、彼は気付いてすらもいないのだから。
だから今後どうするかなんて、悩むだけ損だ。
そんなのは帰ってから、きちんと落ち着いて考えれば良い。
とは言え、自分の性格から考えると。
......全部知らなかった事にして、何事も無かったかのような顔で彼を出迎えるような真似、出来る気がしなかったけれど。
そこで、はたと気付いた。
これは奏くんが料理を作りながら時折口ずさんでいた、あの鼻歌の曲だ!
......そりゃあ何も知らない私を前に、自分の曲を歌ってみせるなんていうリスク、わざわざ犯さないわよね。
まるで気付いていなかった自分の間抜け具合に心底呆れながらも、視線は奏くんに釘付けになり、離せなかった。
楽しそうに満面の笑みを浮かべ、広いステージの上、ぴょんぴょんと跳ねるように躍り、歌う彼。
その姿は、とても眩しくて。
きゃあきゃあと歓声をあげ、彼の名を夢中で叫ぶファンの女の子達を見て、彼は本当に華月の言うように国民的人気のアイドルグループ、JOKERのメンバーの一人なのだと嫌でも思い知らされた。
そのため一瞬また苛立ちと、同時にほんの少しの寂しさに襲われそうになった。
だけど、せっかくのライブなのだ。
誘ってくれた時、確か華月も言っていたではないか。
仕事の伝手で譲って貰った関係者席だから、プレミアものだと。
余計な事を考えるのは、今はもうやめよう。
だってどうせ私がここに居るだなんて、彼は気付いてすらもいないのだから。
だから今後どうするかなんて、悩むだけ損だ。
そんなのは帰ってから、きちんと落ち着いて考えれば良い。
とは言え、自分の性格から考えると。
......全部知らなかった事にして、何事も無かったかのような顔で彼を出迎えるような真似、出来る気がしなかったけれど。
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