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好き①
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今朝とは異なり軽く触れるだけのキスを何度か交わしてから彼は満足そうにニッと笑い、もう一度私の頭をそっと撫でた。
そして何事も無かったように私から体を離し、当たり前みたいに夕飯の支度を始めるため、キッチンへ移動してしまった。
本当はもう少しイチャイチャしていたかったけれど、甘えるのが苦手な私はどうしたら良いのか分からず、ちょっと途方にくれてしまった。
すると彼はクスリと笑い、私に向かい手招きして言った。
「千尋さん!
玉ねぎの皮剥くの、手伝って」
今までこんな風に言われた事は無かったから、きっと私が寂しく思っているのに気付いた上での発言だろう。
包丁などを使わせるのではなく、素手で出来る仕事を与えられたのは、ちょっぴり屈辱ではあるが。
年下の彼にこんなにも甘やかされている自分が少しだけ情けなくもあったけれど、それ以上に私の感情の変化に目敏く気付いてくれるのが嬉しかった。
だからこくんと小さく頷いて、私もキッチンへ向かった。
「今度千尋さん用に、ピーラーも買おっか?
手伝って貰った方が早く出来るし、それに一緒に作る方が俺も楽しいし」
手際よくじゃがいもの皮を包丁で剥きながら、笑顔でされた提案。
......私の方が年上だというのに、完全に子供扱いされている。
だけどこれまで練習を何度か試みてはみたものの、料理や裁縫といった類いの家庭的な作業はどうやら私とは相性がかなりよろしくないらしい。
例の恐ろしいカレー事件もあったから、彼もその事に気付いているということだろう。
普段は意地悪な彼だけれど、こうやって超料理初心者の私でも出来そうな提案をしてくれる辺り、やっぱり優しい子だなって思い、自然と顔がにやけた。
そして何事も無かったように私から体を離し、当たり前みたいに夕飯の支度を始めるため、キッチンへ移動してしまった。
本当はもう少しイチャイチャしていたかったけれど、甘えるのが苦手な私はどうしたら良いのか分からず、ちょっと途方にくれてしまった。
すると彼はクスリと笑い、私に向かい手招きして言った。
「千尋さん!
玉ねぎの皮剥くの、手伝って」
今までこんな風に言われた事は無かったから、きっと私が寂しく思っているのに気付いた上での発言だろう。
包丁などを使わせるのではなく、素手で出来る仕事を与えられたのは、ちょっぴり屈辱ではあるが。
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「今度千尋さん用に、ピーラーも買おっか?
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だけどこれまで練習を何度か試みてはみたものの、料理や裁縫といった類いの家庭的な作業はどうやら私とは相性がかなりよろしくないらしい。
例の恐ろしいカレー事件もあったから、彼もその事に気付いているということだろう。
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