年下俺様アイドルの、正しい飼い方

ryon*

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焦り① side奏

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「そう言えば今日、お姉ちゃんに会いに行ってきたの」

 突然彼女がそんな事を言い出したモノだから、みっともないことにいつになく激しく動揺してしまった。
 咄嗟のことに何も言えずにいる俺のそんな心の内にまるで気付いていないのか、千尋さんは淡々とした事務的な口調で続けた。

「家賃は今後私が直接受け取る事と、あと部屋が見つかるまでの間、お姉ちゃんの家に住ませてくれないかって話をしてきた」

「......何?それ。
 そんなの俺、聞いてない」

 この人の望む『無邪気で子供みたいな男』を演じるのも忘れ、自然と尖った声が出てしまった。
 すると彼女は困ったように小さく笑い、告げた。

「うん。それは、ごめんなさい。
 でもいつまでもここで、一緒に暮らすワケにはいかないでしょ?」

 彼女の言い分は、とてもよく分かる。
 ......だけど俺があなたと過ごす時間をどれほど楽しみにしているかとか、その時間を工面するためにどれほど努力しているかとかまるで分かってはいないであろうその態度に、我ながら理不尽だとは思いながらも激しく苛立った。

 だから彼女の華奢な肩を掴んで体を離すと、じっと顔を覗き込むようにして聞いた。

「なんで?それの一体、何が駄目なの?」

 彼女の大きな茶色の瞳が、戸惑ったように揺れる。
 ここでやめるべきだと、理性の部分では俺だってちゃんと分かっていた。
 だけどこの人が俺の側から居なくなってしまうかも知れないと思うと怖くて、不安で堪らなかった。

 だから俺の問いに答えられないでいる彼女を尻目ににっこりと微笑んで、今度は静かな口調で言ってやった。

「まぁ、でも。
 ......駄目とか嫌とか言われても、俺は今さら千尋さんの事を、逃がしてあげるつもり無いんだけど」
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