年下俺様アイドルの、正しい飼い方

ryon*

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ひとつ屋根の下④

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「そうなんですか?なら、そこに置かれてるのかも。
 良かったぁ......捨てられちゃってたら、どうしようかと思った」

 彼の言葉にホッとして、安堵の溜め息を漏らした。

「全部あるかは、分かんないけどね。
 鍵も貰ってないから、中がどうなってんのかも知らないし」

 話しながらも食材を手に取り、よく研がれた包丁で、男性にしては綺麗過ぎる手で皮が剥かれていく。
 ピーマンと人参、玉ねぎ、そしてブロックベーコンが、見る間に綺麗なダイス状に刻まれた。
 その手際の良さに見惚れそうになったけれど、それどころじゃなかったと我に返り、彼に声を掛けた。

「すみません!作って頂いている間に、荷物の確認をして来ても良いですか?
 鍵は私が、持っているので」

 すると彼はにっこりと微笑み、行ってらっしゃいと答えてくれた。

***

 スーツケースのポケットから、鍵束を取り出した。
 そこにはあの部屋の、キーも付いている。

 それを手に部屋に向かい、鍵を開けた。
 中には予想した通り、私の私物がところ狭しと突っ込まれていた。
 ......かなり、強引に。

 室内には私が以前使用していたシングルサイズのパイプベッドも置かれていたけれど、カバーを掛けているとはいえ、マットレスを干さずにそのまま使うのには抵抗がある。
 やっぱりあの男の言うように、今日は床で寝るしか無さそうだ。

 それにしても、お姉ちゃんめ。
 私の不在時に、勝手になんて真似をしやがるのだ。
 明日は朝から彼女の家を押し掛けて、今後の生活について保証して貰わないと割に合わない。
 お金に汚いあの女が、すんなり言う事を聞いてくれるとは思いがたいが、このままじゃ私は路頭に迷うことになる。
 
 私がいったい、何をしたと言うのよ?
 ......そんなの、冗談じゃない。
 何としても、人として最低限の生活は確保しなければ!

 鼻息荒くそう決意したところでドアをノックされ、声を掛けられた。
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