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最悪な一日⑤
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「思い当たる、ふしでもあった?」
笑顔のまま私の顔を覗き込む、謎の男。
「もし、仮に。仮に、よ?
......家族があなたにこの部屋を勝手に貸していたんだとしても、私はもう帰国したんだから、出ていって貰わないと困る。
私は何も聞いていないし、ここは私が買った、私のマンションなんだから!」
強気な姿勢を崩すことなく、自身の正当性を訴える。
すると男はやれやれとでも言いたげに肩をすくめて見せ、そのまま棚の方に向かってゆったりとした足取りで歩き始めた。
そして引き出しを開けて彼は一枚の白い紙を取り出し、それを指先で摘まんだままヒラヒラと靡かせた。
「はい、これ。契約書。
アンタが知らないって言ってもちゃんと金も払ってるし、両者のハンコも押してある。
って事はさぁ......俺もしかして、詐欺にでも遭ったのかな?」
彼の口にした、詐欺という物騒過ぎる言葉に愕然とした。
だって本当にこの男から、姉がお金をたんまり貰っているのだとしたら。
......嫌な汗が、背中を伝っていく。
「出るところに出て困るのは、アンタの方だと思うけど。
......身内を犯罪者になんて、したくないよね?」
男の形の良い唇が、ニヤリと嫌な感じに歪んだ。
このやり取りから、察するに。
......確実に私、今すぐここを追い出されるよな。
この件に関しては、管理費もきちんと渡していたから姉が100%悪いとは思うから、ごり押しすれば住み処は確保出来るだろう。
諸悪の根元である、年の離れた姉の家に転がり込めば良いのだ。
しかしあそこには、今年受験を控えた小六の息子がいる。
それに結婚式のあと、二、三度しか会ってもいない彼女の旦那さんと同居というのも正直、気まずいし面倒臭いとしか思えない。
「......今日マレーシアから帰って来たばかりで、行くあても無いんだけど」
すると彼はニコッと愛らしく微笑み、言った。
「ふーん。......で?」
アハハ.........ですよねぇ。
正当な手順を踏んでここを借りているのであれば、彼からしてみたらだからなんだという話だろう。
今夜のところは、仕方がない。
駅前のカプセルホテルかどこかに泊まって、今後について考えよう。
笑顔のまま私の顔を覗き込む、謎の男。
「もし、仮に。仮に、よ?
......家族があなたにこの部屋を勝手に貸していたんだとしても、私はもう帰国したんだから、出ていって貰わないと困る。
私は何も聞いていないし、ここは私が買った、私のマンションなんだから!」
強気な姿勢を崩すことなく、自身の正当性を訴える。
すると男はやれやれとでも言いたげに肩をすくめて見せ、そのまま棚の方に向かってゆったりとした足取りで歩き始めた。
そして引き出しを開けて彼は一枚の白い紙を取り出し、それを指先で摘まんだままヒラヒラと靡かせた。
「はい、これ。契約書。
アンタが知らないって言ってもちゃんと金も払ってるし、両者のハンコも押してある。
って事はさぁ......俺もしかして、詐欺にでも遭ったのかな?」
彼の口にした、詐欺という物騒過ぎる言葉に愕然とした。
だって本当にこの男から、姉がお金をたんまり貰っているのだとしたら。
......嫌な汗が、背中を伝っていく。
「出るところに出て困るのは、アンタの方だと思うけど。
......身内を犯罪者になんて、したくないよね?」
男の形の良い唇が、ニヤリと嫌な感じに歪んだ。
このやり取りから、察するに。
......確実に私、今すぐここを追い出されるよな。
この件に関しては、管理費もきちんと渡していたから姉が100%悪いとは思うから、ごり押しすれば住み処は確保出来るだろう。
諸悪の根元である、年の離れた姉の家に転がり込めば良いのだ。
しかしあそこには、今年受験を控えた小六の息子がいる。
それに結婚式のあと、二、三度しか会ってもいない彼女の旦那さんと同居というのも正直、気まずいし面倒臭いとしか思えない。
「......今日マレーシアから帰って来たばかりで、行くあても無いんだけど」
すると彼はニコッと愛らしく微笑み、言った。
「ふーん。......で?」
アハハ.........ですよねぇ。
正当な手順を踏んでここを借りているのであれば、彼からしてみたらだからなんだという話だろう。
今夜のところは、仕方がない。
駅前のカプセルホテルかどこかに泊まって、今後について考えよう。
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