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サラセニア⑭
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その翌年。
久米さんは就職の為、地元を離れる事になった。
子供の頃から憧れていた研究職に就ける事になったのだと瞳を輝かせて語る彼の事を、俺は止める事も、寂しいと言う事すらも出来ず見送った。
勿論久米さんは少しでも俺と逢えるよう時間を工面してくれたし、俺も彼と逢いたかったから、可能な限り彼に逢いに行きはしたけれど。
......それでも逢えない時間は二人の間に物理的な距離だけではなく、精神的な距離も生じさせた。
寂しさが頂点に達し、壊れそうになっていた頃出逢ったのが、彼女だった。
元々ゲイではなかった俺は、久米さんの事を忘れたくて、軽い気持ちで彼女と関係を持ってしまった。
そしてその事を、わざわざ久米さんに告げたのだ。
「久米さんの事は好きだけど、このままずるずると、男同士で不毛な関係を続けても意味ないと思うんだよね。
だからその女の子と、ちゃんと付き合ってみようかなって。
......久米さんは、どう思う?」
今思い出しても、なんて最低で、なんて残酷な言葉だったんだろう?
正直この時の俺はまだ彼女に対して、何の感情も抱いてはいなかった。
だからただ彼に叱られ、止めらたかったし、そうされる事で安心したかったんだと思う。
いつもは意地悪だけれど本当は誰よりも優しい久米さんが、俺にとって最良と思われる選択をするのは、冷静に考えたら想像に難くなかった筈なのに。
「その子の事、好きなの?」
何の感情も持たないような顔で、聞かれ。
......だから半ば意地になり、まだ幼かった俺は答えた。
「好きだよ。
彼女、すごい可愛くて、優しくて。
きっとあの子となら、幸せになれると思う!」
でもいつもは余裕な感じの彼の顔が苦痛に歪むのを見た瞬間、いかに酷い事を選ばせようとしているのか、ようやく気付いた。
久米さんは就職の為、地元を離れる事になった。
子供の頃から憧れていた研究職に就ける事になったのだと瞳を輝かせて語る彼の事を、俺は止める事も、寂しいと言う事すらも出来ず見送った。
勿論久米さんは少しでも俺と逢えるよう時間を工面してくれたし、俺も彼と逢いたかったから、可能な限り彼に逢いに行きはしたけれど。
......それでも逢えない時間は二人の間に物理的な距離だけではなく、精神的な距離も生じさせた。
寂しさが頂点に達し、壊れそうになっていた頃出逢ったのが、彼女だった。
元々ゲイではなかった俺は、久米さんの事を忘れたくて、軽い気持ちで彼女と関係を持ってしまった。
そしてその事を、わざわざ久米さんに告げたのだ。
「久米さんの事は好きだけど、このままずるずると、男同士で不毛な関係を続けても意味ないと思うんだよね。
だからその女の子と、ちゃんと付き合ってみようかなって。
......久米さんは、どう思う?」
今思い出しても、なんて最低で、なんて残酷な言葉だったんだろう?
正直この時の俺はまだ彼女に対して、何の感情も抱いてはいなかった。
だからただ彼に叱られ、止めらたかったし、そうされる事で安心したかったんだと思う。
いつもは意地悪だけれど本当は誰よりも優しい久米さんが、俺にとって最良と思われる選択をするのは、冷静に考えたら想像に難くなかった筈なのに。
「その子の事、好きなの?」
何の感情も持たないような顔で、聞かれ。
......だから半ば意地になり、まだ幼かった俺は答えた。
「好きだよ。
彼女、すごい可愛くて、優しくて。
きっとあの子となら、幸せになれると思う!」
でもいつもは余裕な感じの彼の顔が苦痛に歪むのを見た瞬間、いかに酷い事を選ばせようとしているのか、ようやく気付いた。
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