ある日、森の中

ryon*

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サラセニア③

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グッ、と足の間に膝を差し入れられ、そのまま彼の口元が、意地悪く歪む。

その様は普段の愛らしい彼からは想像もつかないくらい、妖艶で。
俺は何も言葉を発する事が出来ず、ただ見惚れた。

「ねぇ...、何でなの?」

彼の顔が、俺に近付く。
尚も何も言えず、ただされるがまま...俺は久米さんに、唇を奪われた。
でもそれは軽く触れただけで、すぐに僕から離れた。

「...抵抗、しないんだ。」

クスクスと笑いながら、ゆっくり膝を上下に揺らし、股間を刺激される。
半ばパニック状態に陥りながらも、恥ずかしさから視線をそらし、そのまま静かに目を閉じた。

直接触れられている訳ではないし、それはゆったりとした緩慢な動きなはずなのに、じわじわと官能的な疼きを引き摺り出され、俺はいつの間にか甘い吐息を漏らすようになっていた。

「...僕の家で、続きする?」
 
耳元で楽しそうに、久米さんが笑う。

確かに彼に恋焦がれていたし、触れたい、触れられたいと願っていた。

でも彼も俺も、男で。

そして付き合ってもいないのにこんな風に、体を好きに弄ばれるだなんて、おかしいと思う。

そう、思うのに。

...俺は彼の誘惑に抗う事が出来ず、小さく頷いた。

「いい子だね。
 ...おいで、翼君。」

また彼の唇が軽く俺の唇に触れ、そして離れた。
目を開けるとそこには、にっこりと穏やかに、いつもの顔で笑う久米さんの姿。

それから彼はゆっくりと、何事も無かったかのように歩き始めた。

俺はまるで魔法にでも掛けられたみたいにフラフラと、彼のあとに続いた。
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