ある日、森の中

ryon*

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全部、熱のせいだ②

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 確かに、その通りかも。
 僕は始業のベル前に、今日もちゃんと研究室にたどり着いたのだから。

 十和子さんは時間にルーズなところがあり、定時で帰れた試しなんか無いんだから、朝は少しくらい遅れても別にいいじゃないかと、平気で言って退けたりする。
 そういう雑で図々しいところ、ちょっとだけ羨ましいと思っている事は、彼女には口が裂けても言わないけれど。

***

「おーい、久米君。
 君もコーヒー、飲む?」

 午後6時過ぎ。
 あと一息のところでどうしても思うような結果が出せず、居残って実験を続けていたら、給湯室から僕の上司であり、忌々しい想い人がちょこんと顔を覗かせ聞いた。
 微生物やカビが相手だから結果なんて出せない時は本当に出せないし、体力的にももう限界だったから、今日のところは諦めてそろそろ切り上げて帰ろうと思っていたタイミングだった。
 だから顔面に笑みを貼り付け、素直で従順な部下の顔で、いつものように自分を偽り答えた。

「ありがとうございます、課長。
 それだけ頂いて、帰ります」

 食器がわりのビーカーに注がれていく、ミルクと砂糖がたっぷり入ったコーヒー。
 それを見て、自然と眉間にシワが寄るのを感じた。
 言わなくても僕の好みをちゃんと分かってくれているのを腹立たしいと感じてしまうだなんて、さすがにそんなのは理不尽な言いがかりみたいなものだと、自分でも分かってはいるけれど。

「ねぇ、久米君。
 ......もしかして、調子悪い?」

 僕の額にナチュラルに、手を添えて聞かれた。
 なんでお前なんかが、気付くんだよ。
 ......これ以上僕の事、惑わせないで。
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