17 / 73
サイアクな選択②~side田畑~
しおりを挟む
『優しくて穏和な、よき上司』なんつー胡散臭い人格を演じているのは、同じFC課の金田君への当て付けと嫌がらせだ。
およそ七年前、会社に対して労働組合の組合長という立場を利用し、クーデターを企てた時の事。
直前で要求を全面的に受け入れられ、首謀者である俺は課長への昇進という形で無理矢理首脳陣の手により組合を追い出された。
出世と言えば聞こえはいいが、実際のところ、更迭されたに等しい。
......今思い出しても、腹の立つ!
その際に、穏和の塊みたいな部下 金田君に、ガチギレされ言われたのだ。
金田君は嫌味ったらしく大きなため息を吐き出し、言った。
『これ以上上層部に楯突いて、更に昇進させられても俺、知りませんよ?
部長代理以上になると、役員会議にも出なきゃいけない。
会議とかそういう面倒臭いの、あなた大っ嫌いですよね?
絶対に、出たくないですよね?
研究に携わる事の出来る時間減らされるのも、嫌ですよね?』
グッ、と言葉に詰まっていると、更に追い討ちをかけるみたいに彼は続けた。
『大人なんですから、いい加減落ち着いて下さい。
あとね......この際だからついでに、言わせて貰いますけど。
田畑さんがビビらせるせいで、せっかく新人が入ってきても、すぐに皆辞めてしまうんです。
マジで俺らの事、過労死させるつもりですか?』
休みが全く取れず、完全に労働基準法違反な連勤続き。
流石に申し訳なく思い、謝罪の言葉を口にした。
『......すまん』
でもその後もネチネチ、ネチネチとしつこく責め立てられて。
......最初は大人しく説教を聞いていたが、気付けば大声で叫んでいた。
『分かった、分かったよ。金田。
いや、金田君?
これからはお前の望む通り、お優しい理想の上司ってやつを演じてやるよ。
それで、いいんだろうがっ!!』
それから俺は人格を偽り、『よき上司』なんてもんを演じ続けている。
その為それまでの悪行三昧を知っている連中からはメチャクチャ不気味がられているが、それはそれでちょっと面白いな、なんて思っていたりする。
どの道俺が大人しくしていたところでFC課の新人たちは、どいつもこいつも長くは続かなかった。
その理由は俺以上に理不尽で、女の武器である涙まで利用し、自身の要求を無理矢理力業で通す魔女 島崎 十和子君を前に皆、心がポッキリ折れてしまうからだ。
まぁおかげでメンタルが強くやる気のある人間のみが残っているから、結果オーライとも言えよう。
およそ七年前、会社に対して労働組合の組合長という立場を利用し、クーデターを企てた時の事。
直前で要求を全面的に受け入れられ、首謀者である俺は課長への昇進という形で無理矢理首脳陣の手により組合を追い出された。
出世と言えば聞こえはいいが、実際のところ、更迭されたに等しい。
......今思い出しても、腹の立つ!
その際に、穏和の塊みたいな部下 金田君に、ガチギレされ言われたのだ。
金田君は嫌味ったらしく大きなため息を吐き出し、言った。
『これ以上上層部に楯突いて、更に昇進させられても俺、知りませんよ?
部長代理以上になると、役員会議にも出なきゃいけない。
会議とかそういう面倒臭いの、あなた大っ嫌いですよね?
絶対に、出たくないですよね?
研究に携わる事の出来る時間減らされるのも、嫌ですよね?』
グッ、と言葉に詰まっていると、更に追い討ちをかけるみたいに彼は続けた。
『大人なんですから、いい加減落ち着いて下さい。
あとね......この際だからついでに、言わせて貰いますけど。
田畑さんがビビらせるせいで、せっかく新人が入ってきても、すぐに皆辞めてしまうんです。
マジで俺らの事、過労死させるつもりですか?』
休みが全く取れず、完全に労働基準法違反な連勤続き。
流石に申し訳なく思い、謝罪の言葉を口にした。
『......すまん』
でもその後もネチネチ、ネチネチとしつこく責め立てられて。
......最初は大人しく説教を聞いていたが、気付けば大声で叫んでいた。
『分かった、分かったよ。金田。
いや、金田君?
これからはお前の望む通り、お優しい理想の上司ってやつを演じてやるよ。
それで、いいんだろうがっ!!』
それから俺は人格を偽り、『よき上司』なんてもんを演じ続けている。
その為それまでの悪行三昧を知っている連中からはメチャクチャ不気味がられているが、それはそれでちょっと面白いな、なんて思っていたりする。
どの道俺が大人しくしていたところでFC課の新人たちは、どいつもこいつも長くは続かなかった。
その理由は俺以上に理不尽で、女の武器である涙まで利用し、自身の要求を無理矢理力業で通す魔女 島崎 十和子君を前に皆、心がポッキリ折れてしまうからだ。
まぁおかげでメンタルが強くやる気のある人間のみが残っているから、結果オーライとも言えよう。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる