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良薬は口に、苦すぎる③

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「……生きてる、のよね?」

 恐る恐る騎士の前に立ち、目の前でプラプラと手を揺らしてみる。
 だけど男の目は開いてはいるものの、やはりガラス玉で出来た作り物の人形の瞳みたいに微動だにしない。

「大丈夫でしょう?たぶん。
 とりあえず時間がないから、行きましょう」

 事前にパトリシアちゃんから得ていた情報によると、容態が落ち着いている今は医師の診察も朝と夕刻の二回のみらしいから、今はきっと室内はレイたんだけ。

 私の手を引いたまま、ドアをそっと開くリリィ。
 そのまま静かに、ふたりで病室内に侵入した。

 それにしても。……瞳を閉じて、ベッドの上に横たわるレイたんの、なんと美しい事よ!
 まるで、リアル眠れる美女の美女だわ。

 その寝姿に見惚れそうになったけれど、今は残念ながらそんな時間はないのだ。
 だから心のカメラに、焼き付けておくだけにとどめた。

 再びドアを閉め、スヤスヤと眠るレイたんの側まで駆け寄ると、ポケットからダマスエルの毒に効くという、薬液の入った小瓶を取り出した。

 しかしそのタイミングで、最悪の事態が起こる。
 そう。……突然病室のドアが、開かれたのだ。

 だからそれに驚き、思わず悲鳴をあげそうになったのだけれど、リリィに割と強めに脇を突っつかれたおかげで、なんとか踏みとどまる事が出来た。
 
「あれ?……誰か、いるのか?」

 背後から響いてきた、凛とした声。
 恐る恐る振り返るとそこには、キョロキョロと室内を見回す、花瓶に活けられた大量の薔薇の花を手にした皇太子殿下、エドワード様の姿。

 リリィの不可視化能力は今も効いているはずなのに、気配を察したという事なのだろうか?

「ヤバッ、なんでバレたのよ!?
 逃げるわよ、小娘!」

 こそこそと、私に耳元で囁くリリィ。
 どうしたものかと迷っていたら、エドワード様はふるふると小さく左右に首を振り、フゥと大きなため息を吐き出した。
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