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恋の嵐と、竜巻と①
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その翌日の、放課後。
昨日の間に用意した変装用のマントと乗馬服を手に、魔女 イザベラちゃんの住む屋敷へと向かった。
裏手にあるお庭で目にしたのは、そう。
あまり美味しくないわね等と文句を言いながらも、イザベラちゃんの手作りと思われるクッキーを頬張るドラゴンのリリィ(人型バージョン)の姿。
「リリィの、浮気者!
アリシアちゃんのピンチだっていうのに、何をふたりでイチャコラしてんのよ!」
イザベラちゃんの第一の親友の座を奪われそうだったから、危機感を感じてつい口にした嫌味。
なのに彼は顔を真っ赤にして、グッと言葉に詰まった。
え……、何よ?その反応。
だけど当事者の一人であるはずの魔女は、にこにこと嬉しそうに笑って答えた。
「あら!ヴァイオレット様、いらっしゃいませ。
はい、仲良くして貰っています。
リリィ様は、とっても博学なんですよ!」
ますます赤くなる、リリィの肌。
何か言おうとしてイザベラちゃんの方を指差し、口をパクパクと開閉させてはいるものの、彼の唇から何か言葉が発される気配はない。
……リリィ、本気で惚れたわね。
思わぬ展開に最初は驚いたけれど、瞬時に状況を理解し、ニヤニヤとゲスな笑みを浮かべる私。
それに気付いたらしきリリィは、今度は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「あとリリィ様は、口では意地悪な事ばかりおっしゃいますが、本当はとてもお優しくて……」
他人と関わる機会がないため、空気を読むという術を学ぶ事なく育ってきた孤高の魔女は、笑顔でとどめを刺しに来た。
オーバーキルは、やめて差し上げて!
……無邪気って、ホントこわいわね。
そしてその時、ボンッと大きな音がしたかと思うと。
……リリィの人型化の魔法が解けて、本来の姿である巨大な緑のドラゴンに戻ってしまったため、彼が座っていた木製の椅子は粉々に壊れてしまった。
昨日の間に用意した変装用のマントと乗馬服を手に、魔女 イザベラちゃんの住む屋敷へと向かった。
裏手にあるお庭で目にしたのは、そう。
あまり美味しくないわね等と文句を言いながらも、イザベラちゃんの手作りと思われるクッキーを頬張るドラゴンのリリィ(人型バージョン)の姿。
「リリィの、浮気者!
アリシアちゃんのピンチだっていうのに、何をふたりでイチャコラしてんのよ!」
イザベラちゃんの第一の親友の座を奪われそうだったから、危機感を感じてつい口にした嫌味。
なのに彼は顔を真っ赤にして、グッと言葉に詰まった。
え……、何よ?その反応。
だけど当事者の一人であるはずの魔女は、にこにこと嬉しそうに笑って答えた。
「あら!ヴァイオレット様、いらっしゃいませ。
はい、仲良くして貰っています。
リリィ様は、とっても博学なんですよ!」
ますます赤くなる、リリィの肌。
何か言おうとしてイザベラちゃんの方を指差し、口をパクパクと開閉させてはいるものの、彼の唇から何か言葉が発される気配はない。
……リリィ、本気で惚れたわね。
思わぬ展開に最初は驚いたけれど、瞬時に状況を理解し、ニヤニヤとゲスな笑みを浮かべる私。
それに気付いたらしきリリィは、今度は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「あとリリィ様は、口では意地悪な事ばかりおっしゃいますが、本当はとてもお優しくて……」
他人と関わる機会がないため、空気を読むという術を学ぶ事なく育ってきた孤高の魔女は、笑顔でとどめを刺しに来た。
オーバーキルは、やめて差し上げて!
……無邪気って、ホントこわいわね。
そしてその時、ボンッと大きな音がしたかと思うと。
……リリィの人型化の魔法が解けて、本来の姿である巨大な緑のドラゴンに戻ってしまったため、彼が座っていた木製の椅子は粉々に壊れてしまった。
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