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共同戦線③
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***
「はぁ……そんな事が、あったのね」
アリシアちゃんが憑依者であるのを事前に聞かされていたこともあり、リリィに話をすんなり信じて貰う事が出来た。
だけど彼女はちょっと考えるような素振りを見せ、それから神妙な面持ちで続けた。
「でもその瓶で直接ってなると、さすがにちょっと難しくないかしら?
小娘の作戦通り、私がくしゃみをしたタイミングで採取しようとしたら、たぶんだけど。
……ヨダレだのなんだのが、混入しちゃうと思うんだけど」
確かに、この子の言う通りかも。
それに言われてみればそんな雑な方法で作った解毒剤では、思うような効果を発揮してくれないかもしれない。
「なら、どうしたらいい?
もう私には、分かんないよ!」
八つ当たり気味に、叫んだ。
するとリリィはちょっと考えるような素振りを見せ、それから大層不満げな表情で聞いた。
「ねぇ……。その魔女のイザベラって子、本当に信頼出来る人間なの?」
自分の事を言われたワケではないけれど、なんとなくその質問が不快だったから、私も唇を尖らせて答えた。
「当たり前でしょ!?
一文の得にもならないのに、見ず知らずの東部の人達のために、解毒剤を作ろうなんていう彼女の事を疑うつもり?」
するとリリィはフゥと息を吐き、悲しそうに瞳を伏せた。
「そうじゃないわよ。
ただね……残念ながらドラゴンの事を悪用しようとする、悪い魔女も世の中にはたくさんいるの」
「確かに、そういう魔女もいるかもだけど。
……でもイザベラちゃんは、違うもん」
だけどもしかしたらこのドラゴンだって、アリシアちゃんに出逢う前、魔女の手で酷い目に遇わされた経験があるのかもしれない。
そう考えたらいてもたってもいられなくなり、リリィの大きな体に強く抱き付いた。
「何よ?急に。ホントあなたは、気持ちが悪いわね。
でも、良いわ。そのイザベラとかっていう魔女見習いの所に、私を案内しなさい。
その子ならもしかしたら、良い方法を考えてくれるかも」
そんな風にまた意地悪な事を言いながらも、リリィは嫌そうにしていなかったように思えたのはきっと、気のせいでは無かったと思う。
だって彼女は私の事を、今度は振り払おうとはしなかったから。
「はぁ……そんな事が、あったのね」
アリシアちゃんが憑依者であるのを事前に聞かされていたこともあり、リリィに話をすんなり信じて貰う事が出来た。
だけど彼女はちょっと考えるような素振りを見せ、それから神妙な面持ちで続けた。
「でもその瓶で直接ってなると、さすがにちょっと難しくないかしら?
小娘の作戦通り、私がくしゃみをしたタイミングで採取しようとしたら、たぶんだけど。
……ヨダレだのなんだのが、混入しちゃうと思うんだけど」
確かに、この子の言う通りかも。
それに言われてみればそんな雑な方法で作った解毒剤では、思うような効果を発揮してくれないかもしれない。
「なら、どうしたらいい?
もう私には、分かんないよ!」
八つ当たり気味に、叫んだ。
するとリリィはちょっと考えるような素振りを見せ、それから大層不満げな表情で聞いた。
「ねぇ……。その魔女のイザベラって子、本当に信頼出来る人間なの?」
自分の事を言われたワケではないけれど、なんとなくその質問が不快だったから、私も唇を尖らせて答えた。
「当たり前でしょ!?
一文の得にもならないのに、見ず知らずの東部の人達のために、解毒剤を作ろうなんていう彼女の事を疑うつもり?」
するとリリィはフゥと息を吐き、悲しそうに瞳を伏せた。
「そうじゃないわよ。
ただね……残念ながらドラゴンの事を悪用しようとする、悪い魔女も世の中にはたくさんいるの」
「確かに、そういう魔女もいるかもだけど。
……でもイザベラちゃんは、違うもん」
だけどもしかしたらこのドラゴンだって、アリシアちゃんに出逢う前、魔女の手で酷い目に遇わされた経験があるのかもしれない。
そう考えたらいてもたってもいられなくなり、リリィの大きな体に強く抱き付いた。
「何よ?急に。ホントあなたは、気持ちが悪いわね。
でも、良いわ。そのイザベラとかっていう魔女見習いの所に、私を案内しなさい。
その子ならもしかしたら、良い方法を考えてくれるかも」
そんな風にまた意地悪な事を言いながらも、リリィは嫌そうにしていなかったように思えたのはきっと、気のせいでは無かったと思う。
だって彼女は私の事を、今度は振り払おうとはしなかったから。
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