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天は我に、味方せり③

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「貴重も、何も。……現代では絶対に、手に入りませんからね。
 だってドラゴンは、100年以上も前に絶滅したと言われていますもの……」

 困惑顔のまま、答えてくれるイザベラちゃん。
 しかし……絶滅?してないでしょ。
 だって私、つい昨日背中に乗せて貰ったばかりだし!

 そこでようやく、アリシアちゃんとの会話を思い出した。
 彼女はリリィの首に大きな魔法石の付いたネックレスを装着しながら、クスクスと楽しそうに笑って教えてくれた。

『リリィには普段、コイツの意思で不可視化する事が出来る魔法のペンダントを、首に着けさせているんだ。
 これがあるお陰でリリィ自身も、コイツの背に乗ってる人間も、誰にも見られずに済むからな』

 あの時私は単に、巨大ドラゴンなんてモノが突然現れたら、街の人たちをびっくりさせてしまうからだと思い込んでいた。
 だけどドラゴン自体が稀少な存在どころか、今では絶滅したのだと信じられているのだとしたら。

 ……なるほどね、把握した。そりゃあ皆、驚くわよね。
 それこそ現代日本に、突如ティラノサウルスが現れたのと同じくらい。

 だけど……やった、ツいてる。
 天は我に、味方せり!

 だってリリィに引き合わせて貰うタイミングが一日でも遅くずれていたならば、きっと解毒剤の精製には、膨大な時間を割く事になっただろう。
 それこそ下手をしたら、いくら時間を掛けたとしても、作れなかったかも知れない。

「イザベラ様。二時間……いいえ、一時間だけお時間を、頂けますか?
 また、戻りますので。
 あと、そうですわね……空き瓶をひとつ、お借りしても?」

 ガスマスクを外してテーブルの上に置き、ガタンと席を立ちながら、にっこりと微笑んだ。
 すると彼女はやはりまた不思議そうにしてはいたものの、私に茶色い薬瓶を手渡してくれた。

「ありがとうございます、薬草茶ご馳走様でした。
 おかげでかなり疲れが取れましたし、頭がスッキリしました。
 では私、行って参りますわね。
 ドラゴンの鼻水を、採取しに!」

 ポカンと大きく口を開け、私の事を唖然とした表情のまま見上げるイザベラちゃん。
 だけどそれには構う事無く、玄関のドアを勢いよく開けた。
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