52 / 95
魔女の目的②
しおりを挟む
馬車の屋形内で一人、あぁでもない、こうでもないと考えを巡らせる。
「ヴァイオレットお嬢様、着きました」
馭者の声に反応し、視線を窓の外にやると、イザベラちゃんと出逢った日同様、今にも雨が降り出しそうなほど厚い雲に空は覆い隠されていた。
***
イザベラちゃんの家に着くと、私はコンコンと二度、ドアをノックした。
「……どちら様ですか?」
恐る恐ると言った感じで、震える小さな声で聞かれた。
「ヴァイオレット・コバンです。
どうしてもあなたとお話をしたくて、突然で申し訳ないとは思ったのですが、遊びに来てしまいました」
ガチャリと鍵が、開かれる音。
嬉しそうに頬を紅潮させ、イザベラちゃんがドアの隙間から、ちょこんと顔を覗かせ笑った。
くぅ……っ、こんな事考えている場合じゃないけど、やっぱり可愛さが尋常じゃない!
「いらっしゃいませ、ヴァイオレット様!
本当にまた私に、会いに来て下さったのですね!」
テレテレと嬉しそうに笑うその表情はやはり、悪しき魔女と言うよりは妖精か天使みたい。
ピリピリとささくれだっていた心が、癒されていくのを感じる。
しかしその時開いたドアの隙間から、凄まじい異臭が漂って来たせいで思わず顔をしかめた。
「イザベラ様、こんにちは。
……これはいったい、何の臭いですの?」
指で鼻を摘まみながら、聞いた。
すると彼女はハッとした様子で外に出て、慌ててドアを閉めた。
それに驚き、じっと彼女の深紅の瞳を見つめる私。
すると特に悪びれるでもなくにへらと笑い、魔女見習いの少女は答えた。
「えっと……毒薬、です。
……ダマスエルの木から、抽出した」
……なんですと!?
「ヴァイオレットお嬢様、着きました」
馭者の声に反応し、視線を窓の外にやると、イザベラちゃんと出逢った日同様、今にも雨が降り出しそうなほど厚い雲に空は覆い隠されていた。
***
イザベラちゃんの家に着くと、私はコンコンと二度、ドアをノックした。
「……どちら様ですか?」
恐る恐ると言った感じで、震える小さな声で聞かれた。
「ヴァイオレット・コバンです。
どうしてもあなたとお話をしたくて、突然で申し訳ないとは思ったのですが、遊びに来てしまいました」
ガチャリと鍵が、開かれる音。
嬉しそうに頬を紅潮させ、イザベラちゃんがドアの隙間から、ちょこんと顔を覗かせ笑った。
くぅ……っ、こんな事考えている場合じゃないけど、やっぱり可愛さが尋常じゃない!
「いらっしゃいませ、ヴァイオレット様!
本当にまた私に、会いに来て下さったのですね!」
テレテレと嬉しそうに笑うその表情はやはり、悪しき魔女と言うよりは妖精か天使みたい。
ピリピリとささくれだっていた心が、癒されていくのを感じる。
しかしその時開いたドアの隙間から、凄まじい異臭が漂って来たせいで思わず顔をしかめた。
「イザベラ様、こんにちは。
……これはいったい、何の臭いですの?」
指で鼻を摘まみながら、聞いた。
すると彼女はハッとした様子で外に出て、慌ててドアを閉めた。
それに驚き、じっと彼女の深紅の瞳を見つめる私。
すると特に悪びれるでもなくにへらと笑い、魔女見習いの少女は答えた。
「えっと……毒薬、です。
……ダマスエルの木から、抽出した」
……なんですと!?
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる