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魔女との邂逅②
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「ぁ......。申し訳......ございません。
ありがとうございます、でも......あの......大丈夫、ですから」
蚊の鳴くような小さな、か細い声。
その人は私の手を取る事無く、座り込んで転んだ拍子に篭から飛び出した野花をかき集め始めた。
だから私も、拾うのを手伝おうとした。
その瞬間強い風が吹き、マントが翻った。
そして隠れていた彼女の顔が、チラリと覗いた。
向こう側が透けて見えそうなほど、病的なまでに青白い肌。
鮮血を思わせる、深紅の瞳。
緩やかにカールした、艶やかな白銀の髪。
慌ててマントを被り直し、顔を隠すと、彼女はもう一度震える声で言った。
「す......すみません......。
貴族のご令嬢に、こんな見苦しい姿をお見せしてしまって......」
驚きのため無言になってしまったせいで、私を不快にさせたと思ったのだろう。
でも私が言葉を発する事が出来なくなったのは、不快になったからなんかじゃない。
フード部分を掴み、無理矢理再び引っ剥がした。
すると彼女はひっ、と小さな声を上げ、涙目でそろりと私の顔を見上げると、慌てて両手で顔を覆い隠した。
......もしかしたら、だけれど。
この子は『ルシタスフの風』の物語の鍵を握るあの、忌まわしき魔女 イザベラなのではなかろうか?
物語の中で描写されていた彼女の特徴は、紅い目、白銀の髪、血色の悪い肌くらいのモノだった。
でも今私の目の前で震えるのは、大きな瞳と長い睫毛、そして瑞々しい果実を思わせるプルンとした唇が、とてつもなく愛らしい美少女だ。
......こんなの、聞いてない。
あの諸悪の根元であるはずの魔女が、こんなに可憐な守ってあげたくなる感じの子だっただなんて!
ありがとうございます、でも......あの......大丈夫、ですから」
蚊の鳴くような小さな、か細い声。
その人は私の手を取る事無く、座り込んで転んだ拍子に篭から飛び出した野花をかき集め始めた。
だから私も、拾うのを手伝おうとした。
その瞬間強い風が吹き、マントが翻った。
そして隠れていた彼女の顔が、チラリと覗いた。
向こう側が透けて見えそうなほど、病的なまでに青白い肌。
鮮血を思わせる、深紅の瞳。
緩やかにカールした、艶やかな白銀の髪。
慌ててマントを被り直し、顔を隠すと、彼女はもう一度震える声で言った。
「す......すみません......。
貴族のご令嬢に、こんな見苦しい姿をお見せしてしまって......」
驚きのため無言になってしまったせいで、私を不快にさせたと思ったのだろう。
でも私が言葉を発する事が出来なくなったのは、不快になったからなんかじゃない。
フード部分を掴み、無理矢理再び引っ剥がした。
すると彼女はひっ、と小さな声を上げ、涙目でそろりと私の顔を見上げると、慌てて両手で顔を覆い隠した。
......もしかしたら、だけれど。
この子は『ルシタスフの風』の物語の鍵を握るあの、忌まわしき魔女 イザベラなのではなかろうか?
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でも今私の目の前で震えるのは、大きな瞳と長い睫毛、そして瑞々しい果実を思わせるプルンとした唇が、とてつもなく愛らしい美少女だ。
......こんなの、聞いてない。
あの諸悪の根元であるはずの魔女が、こんなに可憐な守ってあげたくなる感じの子だっただなんて!
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