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これを恋と、よんでいいなら⑨
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そしてバイトを上がる時間になり、なんとなく気が重かったけれど、約束を破るのは気が引けたから待ち合わせ場所である駅前のロータリーに向かった。
そこにいたのは、小柄な男だった。
細身で、見た目の印象は少しだけ二見さんと似ていたけれど、強引で傲慢な話し方は、彼とは似ても似つかない。
正直その人との会話はまるで楽しくなんて無かったし、早く帰りたくて仕方がなかった。
なのに軽めの食事をふたりで取り終わり、店を出ると彼は当たり前みたいに俺の腰を抱いた。
「緊張してる?可愛いなぁ……。
じゃあ、行こっか?」
ねっとりと耳元で囁かれると、たったそれだけの事でぞわりと悪寒が走り、途端に逃げ出したくなってしまった。
でも元々『そういう事』をするつもりで呼び出されたのも、分かっていた。
それにこの人と関係を持つ事で、二見さんへのあの不毛過ぎる想いを断ち切れるかもしれない。
……これ以上拗らせる前に、もう何もかも、全部忘れてしまいたかった。
しかし男に促されるままホテルに入ろうとしたタイミングで。
……突然彼の体が、後方に吹っ飛んだ。
これは比喩表現でも、なんでもない。
物理的な話だ。
意味が分からず、慌てて後ろを振り返る。
するとそこにはキラキラと胡散臭いまでに爽やかに微笑む二見さんと、やれやれとでも言いたげに額を押さえる、西園寺さんの姿があった。
「てめぇ、何すんだよ!?」
尻餅をついたまま、大きな声で叫ぶ男。
でも二見さんは彼には構う事なく、笑顔のまま言ったのだ。
「こんばんは、原くん。
……この状況、どういう事か説明して貰えますか?」
そんなの。……そんなの、こっちが聞きたいよ!
そしてバイトを上がる時間になり、なんとなく気が重かったけれど、約束を破るのは気が引けたから待ち合わせ場所である駅前のロータリーに向かった。
そこにいたのは、小柄な男だった。
細身で、見た目の印象は少しだけ二見さんと似ていたけれど、強引で傲慢な話し方は、彼とは似ても似つかない。
正直その人との会話はまるで楽しくなんて無かったし、早く帰りたくて仕方がなかった。
なのに軽めの食事をふたりで取り終わり、店を出ると彼は当たり前みたいに俺の腰を抱いた。
「緊張してる?可愛いなぁ……。
じゃあ、行こっか?」
ねっとりと耳元で囁かれると、たったそれだけの事でぞわりと悪寒が走り、途端に逃げ出したくなってしまった。
でも元々『そういう事』をするつもりで呼び出されたのも、分かっていた。
それにこの人と関係を持つ事で、二見さんへのあの不毛過ぎる想いを断ち切れるかもしれない。
……これ以上拗らせる前に、もう何もかも、全部忘れてしまいたかった。
しかし男に促されるままホテルに入ろうとしたタイミングで。
……突然彼の体が、後方に吹っ飛んだ。
これは比喩表現でも、なんでもない。
物理的な話だ。
意味が分からず、慌てて後ろを振り返る。
するとそこにはキラキラと胡散臭いまでに爽やかに微笑む二見さんと、やれやれとでも言いたげに額を押さえる、西園寺さんの姿があった。
「てめぇ、何すんだよ!?」
尻餅をついたまま、大きな声で叫ぶ男。
でも二見さんは彼には構う事なく、笑顔のまま言ったのだ。
「こんばんは、原くん。
……この状況、どういう事か説明して貰えますか?」
そんなの。……そんなの、こっちが聞きたいよ!
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