その男、やっぱりストーカーにつき

ryon*

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これを恋と、よんでいいなら⑤

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***

「映画、スッゲェ面白かったっす。
 今日は、ありがとうございました!」

 映画が終わったのは、21時を少し回った頃。
 俺達の目的は映画を観る事だったから、ここで解散になるモノだとばかり思っていた。

 だけど彼はいつものように穏やかに微笑み、聞いた。

「ねぇ、原くん。
 君はお腹、空いてない?
 俺はもう割と、ペコペコなんだけど。
 なんか一緒に、食べてから帰ろうよ」

 空いていないと言えば、嘘になる。
 だけどこの人と二人で、食事とか……そんなのドキドキし過ぎて、きっと心臓が持たない。

 嬉しい反面、高まるリスク。
 だから返事に一瞬、迷ってしまった。
 すると彼はこれまで見せた事が無いくらいヤンチャな笑みを見せ、そのままグイと俺の手を引いた。

「決定!行こっか?」

 驚く俺の顔を、悪戯っぽく覗き込む二見さん。
 これまでとはまるで異なる距離感に、全身が真っ赤に染まるのを感じた。

 これが夜じゃなかったらきっと、二見さんに俺の邪な気持ちが伝わってしまっていたと思う。
 だけど今はほんのりと月明かりが射しているだけで、暗闇が俺の醜い恋情ごと隠してくれた。

 コクコクと何度も頷き、慌てて彼から手を離した。
 だって緊張し過ぎて、手汗がヤバい。

「原くんは、苦手な食べ物とかある?」

「特に、ないっすね」

 確かに俺には、好き嫌いはない。
 それにどの道きっといまこの人と食事なんてしたら、何を食べても味なんかしないに違いない。

 そんな俺の心情に気付く事無く、彼は何事も無かったような顔をして、この辺りに確か美味いって話題の中華料理屋があるんだよねなんて事を、軽い口調で話した。

 そういえば以前陸斗からは、二見さんはヴィーガンらしいと聞いていた。
 だからその提案に驚いて確認したところ、二見さんが肉や魚、乳製品などを好まないという話は、陸斗と彼が仲良くなるのを阻止するため、西園寺さんが考えた策略だったらしい。
 なんだ?それ。
 ……やっぱりあの人、本当にキモい。
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