その男、やっぱりストーカーにつき

ryon*

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これを恋と、よんでいいなら④

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 返信を返した方が良いだろうかとも一瞬思ったけれど、そうすれば律儀な彼はきっと、更なる返事をしなければと考えるに違いない。

 忙しい彼の手を煩わせるのは本意では無かったから、それ以上メッセージを返す事なく、そっとスマホを机の上に戻した。

***

 約束の日は、あっという間に訪れた。
 当日バイトが終わり、待ち合わせ場所に着いたのは時間の五分ほど前だったけれど、もう彼はそこに居て、俺を見つけるとにっこりと微笑んで手を振った。

 これまではスーツ姿しか見た事がなかった二見さんの、初めての私服。
 パーカーにジーンズなんていうラフな格好までさらりと着こなすその姿に、一瞬見惚れた。

「あれ?おーい、原くん?」

 気付いていないと思ったのか、彼は更に大きく手を振った。
 だから俺は慌てて彼に駆け寄り、緊張しながらも笑顔で告げた。

「二見さん、こんにちは。
 今日は誘ってくれて、ありがとうございます」

 すると彼はクスクスと可笑しそうに笑い、言った。

「原くん、こんにちは。
 こちらこそ、付き合ってくれてありがとね。
 んじゃ、行こっか?」

 プライベートだからだろうか?
 普段とは異なる、かなり砕けた口調。
 それにまたドキドキさせられながらも、この気持ちがこの人に伝わってしまうのが怖かったから、いつもみたいにヘラヘラと笑って答えた。

「そうっすね、行きましょっか。
 映画、めちゃめちゃ楽しみっす!」

 こんな風に二見さんと二人、プライベートで出掛ける事が出来るのは嬉しい。
 ……だけどこの想いがばれて、彼に気持ちが悪いだなんて思われるのは、怖い。
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