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見逃したフラグ①

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「おはようございます!」

 出勤前、玄関を出たところで。
 ちょうどお隣に住む老夫婦に出くわしたから、笑顔で告げた。
 するとふたりもにこにこと笑い、挨拶の言葉を口にしてくれた。
 
「あら!おはよう、陸斗くん。
 今日もお仕事、頑張ってね」

 僕の家はちょっと都心からは離れた場所にあるため、近隣の住人との関係は密で良好だ。
 そのためこのおじいさん、おばあさんとは、僕が子供の頃からの付き合いだったりする。

「あぁ、そうそう。陸斗くんにも、伝えておかないとと思っていたんだったわ。
 うちね、急なんだけど、来週引っ越すことになったのよ」

 おばあさんが、ちょっと嬉しそうに言った。
 だからこれは悪い知らせではなく、ふたりにとって良い話なのだろう。
 
 全く寂しくないと言えば嘘になるけれど、彼らの幸せそうな顔を見るのは僕も嬉しかったから、笑って答えた。

「そうなんですね。どちらに、引っ越されるんですか?」

 今度はおじいさんの方が、満面の笑みを浮かべて答えた。

「実はうちのこの土地を、高くで買い取ってくれるっていう、奇特な人がいてね。
 息子夫婦と一緒に住むために、都内の一等地に家を建てる事になったんだよ」

 こんな、辺鄙な場所を?
 幾分疑問に思いながらも、まぁ、世の中には変わった人なんてたくさんいる。
 ……例えば、例のあの人・・・・・みたいに。

 だから僕は特に気留める事なく、ただそうなんですねと、笑って答えた。

 そして母から得た情報では、そのお隣のお宅も高価で買い取られていたらしい。
 
 それを聞き、うちは対象外で残念だったねなんて、笑って話していたのだけれど。
 あの時の僕は、誰が・・何のために・・・・・あんな土地を買収しているのかという事に、何故気付けなかったのだろう?

 ……後から考えたら、ガンガンにフラグはたっていたというのに。
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