不器用なハニートラップ

もう一度、はじめから②

　自分で有能とか言ってしまう辺り、やはりいけ好かない男だと思う。
　しかし言われたその、言葉の意味はやはり......。

　嶋田珈琲の方はどうするんだろうとか、もしや婿養子に入ってくれるつもりなんだろうかとか。
　様々な疑問が頭に浮かんで来たけれど、今はただ彼のぬくもりを感じながら、幸せな気分に浸っていたい。
　だから返事をする事なく、抱き付く腕に力を込めた。

***　

　そのまま二人で後片付けをして、いつものように彼の車で自宅に送り届けて貰った。

　だけど恋人になった蒼汰は、意地悪で口が悪いところは変わらないものの、格段に......甘い。
　
　垂れ流す空気だとか、私に触れる手だとか......そして、声色すらも。
　それが何となくこそばゆいというか、照れ臭いというか。

　だからどうしたら言いか分からず、戸惑う私。
　なのに蒼汰はそれに気付いているのかいないのか、運転をしながらも信号待ちの合間などに、耳元で可愛いだの大好きだよだのと繰り返すモノだから、それが嫌なワケではないけれど、どうしたら良いか分からなくて困る。
　......非常に、困る。落ち着かない。

　そしてそれを、言葉にしようとした瞬間。
　......蒼汰はお腹を抱えて、堪えきれないとでも言いたげに爆笑した。

「......もしかして、からかってたワケ？」

　ギロリと睨み付け、聞いた。
　すると彼はなおもヒィヒィと笑いながら、私の頭をポンポンと優しく撫でた。

「んー......、ごめん。ちょっとだけ。
　だってお前がガッチガチに緊張してて、俺に対して警戒しまくりなの、スゲェ可愛いんだもん」