不器用なハニートラップ

ryon*

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涙③

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 優しく微笑むその表情に、嘘は無いように思えた。
 だから私はまだ少し戸惑いながらも、全てを彼にぶちまけた。

***

「なるほどな。
 ......アイツらカヲルに、なんて事を吹き込むんだよ」
 
 私の体を強く抱き締め、苛立った様子で彼は言った。
 
 でもアイツら・・・・とは一体、誰の事をさすのか?

 経営不振で困っている、取締役達の給料も高過ぎてどうにもならないという話を聞いたのは、他でもない私の父親からである。
 そんな嘘を娘に対して吐くメリットが、一体どこにあるというの?
 
 まるで意味が分からず、首を捻る私に蒼汰は、笑顔で告げた。

「ホントにカヲルは、単純で良いな。
 現場を押さえて、お前に見させるのが一番手っ取り早いと思うから、さっさと洋服に着替えて」

 さっきまでの緊迫したやり取りが嘘みたいな、通常モード。

「え......?これからどこかへ、行くの?」

 戸惑いながら聞くと、蒼汰はまた私の頭を優しくポンポンと撫で、困り顔で笑った。

「とりあえず、ここはもう出よう。
 ......さすがに俺も、色々と限界」

 ツンと胸の谷間を指先で突っつかれ、慌てて両手で隠した。
 それを見て蒼汰はプッと吹き出し、私の耳元で甘く囁いた。

「......それともこのまま、ここで続きする?」
  
 慌ててブンブンと左右に首を振り、さっき脱いだ洋服の置いてある洗面所に向かい駆け出した。
 すると背後からは、またしても蒼汰の大笑いする声が聞こえてきた。

 いつも通りの意地悪な反応にちょっとホッとしながらも、やたらと心臓がバクバクとうるさいのはきっと、この性悪男の事が好きだと自覚してしまったせいだろう。
 ......本当に、サイアク過ぎる! 
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