不器用なハニートラップ

チキンレース③

***
　言われるがままシャワーを浴びたものの、そこで私は再び途方に暮れてしまった。

　この後って......私、何を着て出るのが正解？
　さっきまで、一日身に付けていた服？
　......たぶん、それはないな。

　じゃあここに置かれている、このいかにも今からおっ始ぱじめますよ、って雰囲気のベタなピンクのバスローブみたいなヤツ？

　そっと手に取り、羽織ってみたが......胸元がちょっと、心もとない気がする。
　というかこれ、ブラは着けるべき？
　さっきまで履いていた下着を再び身に付けるというのにも、抵抗ある。
　かといって、ノーパンノーブラのまま、なんていうのも......。

　こういうシーンはドラマでもTLコミックでもいつもさらりと流してしまうから、よく分からない。
　......もっと、ガン見しておけば良かった。

　だけどいつまでも蒼汰の事を、待たせておくワケにもいかない。
　だって時間が掛かればきっとまた、慣れていないとからかわれてしまう事になるだろう。

　でもそこで、はたと気付いた。
　......どの道私はからかわれているだけなんだから、さすがにこれ以上脱がされる事はないのでは？

　......なんだ、悩んで損したわ。
　とりあえず下着は身につけなくても、バスローブの丈はかなり長めだし、大丈夫でしょ！　

　そう結論付け、鼻歌交じりに部屋へと戻った。
　ドライヤーを当てたものの、まだ髪は完全には乾いていなかったけれど、こういうシーンでヒロインは大概、タオルで拭きながら登場するはすだ。
　だからそれに倣い、にっこりと余裕の笑みを浮かべて声を掛けた。

「はぁ......さっぱりした！
　お待たせ、蒼汰。次、どうぞ？」