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刺客①
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「じゃあ今日は、蒼汰君もお店に居るんだよね?
お昼過ぎに刺客を送るから、上手くやんなさい」
翌朝物騒な笑みを浮かべ、美希は言った。
「......へ?刺客って?」
よく意味が分からず聞き返したけれど、いいからいいからと言って誤魔化されてしまった。
だけど刺客なんて言い方をわざわざするからには、この子が来るっていうワケじゃなさそうよね。
......うーん、意味が分からん!
「ほら、早く行きなよ。
遅刻したら、王子にしばかれるよ?」
時計を確認すると、開店準備時間を考えると、割とギリギリだった。
だから後ろ髪を引かれる想いではあったけれど、ニヤニヤ笑う美希の視線を背に感じながら私は渋々駅に向かい早足で歩き始めた。
***
「おはよう、カヲル。
あれ?今日はなんか、感じが違うな。......髪形のせいか?」
嶋田珈琲に到着すると、蒼汰が声を掛けて来た。
そう言えば今朝は美希が髪を結ってくれたから、いつものサイド三つ編みではなく、緩めな編み込み入りのお団子ヘアにして貰ったんだった。
「おはよ。あー......昨夜は友達の家に泊まって、そこからそのまま来たから。
その子美容師の仕事をしてるから、やって貰ったの」
何の気無しに、素直に答えた。
そう......美希は大学を卒業後、どうしても子供の頃からの夢を叶えたくて専門学校に通い直し、美容師の資格を取得した。
チャラく見えて、意外と芯のしっかりした女なのだ。
すると蒼汰はじっと私を見下ろしたまま、ふわりと微笑んで言った。
「ふーん、似合うじゃん」
髪が崩れない程度に、優しくポンポンと私の頭に触れる、蒼汰の大きな手のひら。
油断していたところにこのコンボ技はさすがに、ちょっと狡いと思う。
またしても私は、ひとりドキドキしていたというのに。
......彼はわざと大袈裟に、驚いたような表情を作り告げた。
「凄いよね、その子。
もしかして、天才じゃね?
だってカヲルですらそんな風に、可愛く見せる事が出来るだなんて」
やっぱりコイツ、ムカつく。
こんな男の事なんか、絶対に好きになるはずがない!
お昼過ぎに刺客を送るから、上手くやんなさい」
翌朝物騒な笑みを浮かべ、美希は言った。
「......へ?刺客って?」
よく意味が分からず聞き返したけれど、いいからいいからと言って誤魔化されてしまった。
だけど刺客なんて言い方をわざわざするからには、この子が来るっていうワケじゃなさそうよね。
......うーん、意味が分からん!
「ほら、早く行きなよ。
遅刻したら、王子にしばかれるよ?」
時計を確認すると、開店準備時間を考えると、割とギリギリだった。
だから後ろ髪を引かれる想いではあったけれど、ニヤニヤ笑う美希の視線を背に感じながら私は渋々駅に向かい早足で歩き始めた。
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「おはよう、カヲル。
あれ?今日はなんか、感じが違うな。......髪形のせいか?」
嶋田珈琲に到着すると、蒼汰が声を掛けて来た。
そう言えば今朝は美希が髪を結ってくれたから、いつものサイド三つ編みではなく、緩めな編み込み入りのお団子ヘアにして貰ったんだった。
「おはよ。あー......昨夜は友達の家に泊まって、そこからそのまま来たから。
その子美容師の仕事をしてるから、やって貰ったの」
何の気無しに、素直に答えた。
そう......美希は大学を卒業後、どうしても子供の頃からの夢を叶えたくて専門学校に通い直し、美容師の資格を取得した。
チャラく見えて、意外と芯のしっかりした女なのだ。
すると蒼汰はじっと私を見下ろしたまま、ふわりと微笑んで言った。
「ふーん、似合うじゃん」
髪が崩れない程度に、優しくポンポンと私の頭に触れる、蒼汰の大きな手のひら。
油断していたところにこのコンボ技はさすがに、ちょっと狡いと思う。
またしても私は、ひとりドキドキしていたというのに。
......彼はわざと大袈裟に、驚いたような表情を作り告げた。
「凄いよね、その子。
もしかして、天才じゃね?
だってカヲルですらそんな風に、可愛く見せる事が出来るだなんて」
やっぱりコイツ、ムカつく。
こんな男の事なんか、絶対に好きになるはずがない!
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