不器用なハニートラップ

女子会にて③

　そこでキスをされる度、腰が砕けそうになる事。
　そして力が抜けて、頭がボーッとしてきてしまう事を話した。
　すると美希は大層興奮した様子で、鼻息荒く言った。

「うはー、マジか！
　てかさ、好きでもない相手とのキスなんか、気持ち悪いだけだよ。
　それ絶対にもうカヲル、彼の事が好きじゃん！」

　予想外な言葉に、脳が完全に機能停止した。

　......そういうモノなんだろうか？
　私が？蒼汰を？
　......ないない、あり得ない！

　困惑しまくる私を放置したまま、美希は続けた。

「この際キスだけじゃなく、他の初めても全部、蒼汰君に貰って貰えばぁ？」

　一瞬何を言われたか分からなかったけれど、その意味を理解した瞬間、絶叫していた。

「絶対、嫌！！
　アイツとだけは、恥ずかしいし、絶対無理ぃぃぃい！！」

　そんな私を目にして、美希は心底ゲンナリした様子で聞いた。

「恥ずかしいから・・・・・・・、無理なの・・・・？」

　こくこくと、何度も大きく頷いた。
　すると美希はニヤリと笑い、思わぬ提案をしてきた。

「ふーん、成る程ね。まぁ、良いわ。
　ねぇ......私が蒼汰君に、ちゃんとカヲルが大人の女だって気付かせる、お手伝いしてあげよっか？」

　どういう事だろう？
　だけど正直なところ、私一人じゃあの似非王子に対抗出来そうにないと心が折れ始めていたところだったから、迷いはあったけれど彼女の誘いに乗ってみる事にした。

「ありがとう、美希。大好き！
　やっぱり持つべきモノは、経験豊富な女友達ね」

　えへへと笑ってぎゅっと抱き付き、すりすりと頬に頬を擦り付けると、美希は呆れたようにぽそりと呟いた。

「......それを蒼汰君にしてあげたら、こんな無駄な遠回りなんかせずとも、一発で堕ちると思うけどね」

　でも酔っ払いの頭では、その言葉の意味をまるで理解出来なかった。
　彼女は困り顔で笑い、私の事をよしよしと撫でた。