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駆け引き①
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「蒼汰って、本当にコーヒーが好きなんだねぇ」
クスクスと笑いながら、言った。
すると彼もニッと笑い、答えた。
「うん、好きだよ。
だから今の仕事が、天職だって思ってる」
なんて無邪気に、そしてなんて幸せそうに笑うのよ。
......畜生。可愛いじゃないか。
幼い頃、私にプロポーズをしてくれたあの日以降、すっかり意地悪な天の邪鬼になってしまった蒼汰。
久しぶりに至近距離で目にする、邪気のない彼の笑顔。
それを見て、感じた。
......私が思っていたほど、もしかしたら彼も昔と変わっていないのかも知れないと。
***
「遅くなっちゃったし、直接家に帰るだろ?
着替えたら、車で送っていくよ」
当たり前みたいに、言われた言葉。
それがなんとなく気恥ずかしかったし、車内という密室に二人きりなんていう状況も、さっきの事があるから正直ちょっと気まずい気がした。
だから必死に、断る理由を探した。
そこで大学時代からの友人に借りた本がバッグに入ったままになっていた事を思い出し、それを理由にしようと考えた。
「大丈夫だよ、まだそこまで遅い時間じゃないし。
友達の家に寄って、借りてた本を返してから帰るから。
でも急に行くと留守にしてるかも知れないから、ちょっと先に電話だけ入れておくね」
まるでアリバイを作るが如く、敢えて彼の前でスマホを手にした。
そして電話を掛けるとすぐに、相手は出てくれた。
「あ、佐藤君?急で悪いんだけど、いまからちょっと家に寄ってもいい?」
その会話を聞き、何故かぎょっとした感じで瞳を見開く蒼汰。
そして深く刻まれた、眉間のシワ。
......何よ、その顔は。
しっしっと、まるで犬を追い払うように手を動かした。
だけど蒼汰は腕組みしたままドアにもたれて立ち、この場から離れる気配が全くない。
......何目的なのよ、ホント。
クスクスと笑いながら、言った。
すると彼もニッと笑い、答えた。
「うん、好きだよ。
だから今の仕事が、天職だって思ってる」
なんて無邪気に、そしてなんて幸せそうに笑うのよ。
......畜生。可愛いじゃないか。
幼い頃、私にプロポーズをしてくれたあの日以降、すっかり意地悪な天の邪鬼になってしまった蒼汰。
久しぶりに至近距離で目にする、邪気のない彼の笑顔。
それを見て、感じた。
......私が思っていたほど、もしかしたら彼も昔と変わっていないのかも知れないと。
***
「遅くなっちゃったし、直接家に帰るだろ?
着替えたら、車で送っていくよ」
当たり前みたいに、言われた言葉。
それがなんとなく気恥ずかしかったし、車内という密室に二人きりなんていう状況も、さっきの事があるから正直ちょっと気まずい気がした。
だから必死に、断る理由を探した。
そこで大学時代からの友人に借りた本がバッグに入ったままになっていた事を思い出し、それを理由にしようと考えた。
「大丈夫だよ、まだそこまで遅い時間じゃないし。
友達の家に寄って、借りてた本を返してから帰るから。
でも急に行くと留守にしてるかも知れないから、ちょっと先に電話だけ入れておくね」
まるでアリバイを作るが如く、敢えて彼の前でスマホを手にした。
そして電話を掛けるとすぐに、相手は出てくれた。
「あ、佐藤君?急で悪いんだけど、いまからちょっと家に寄ってもいい?」
その会話を聞き、何故かぎょっとした感じで瞳を見開く蒼汰。
そして深く刻まれた、眉間のシワ。
......何よ、その顔は。
しっしっと、まるで犬を追い払うように手を動かした。
だけど蒼汰は腕組みしたままドアにもたれて立ち、この場から離れる気配が全くない。
......何目的なのよ、ホント。
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