たとえこれが、恋じゃなくても

変化した過去②

「ちょ……やめろ、馬鹿！
　それ、キスじゃ……なぃ……！」

　彼の頭を押し退けようと、必死に抵抗を試みる。
　なのに彼はククッと意地悪く笑い、上目遣いに僕を見上げて言った。
　
「これも、キスだよ？
　だって唇と舌しか、触れてない」
　
　最初はくすぐったいだけだったのに、いつの間にかそれ以外のぞわりとするような感覚が、僕を襲い始めた。

「なんだよ？その、屁理屈は！
　んっ……聡哉！それ、やだ……！」

　押し退けようとしていたはずなのに、いつの間にか彼の頭を、自ら抱き締めて押し付けていた。

　でもこのままじゃ、マズい。
　……絶対、勃たつ！

　我にかえり、ソファーに組み敷かれたままジタバタと暴れた。
　なのに彼は、やめてくれなくて。

　抵抗の言葉を吐いていたはずの唇からは、卑猥な吐息だけが溢れた。
　そして完全に力が抜け去り、与えられる刺激にただ翻弄されていたら、その舌は少しずつ上に上がってきて。

　……ペロリと胸の先端を舐められ、体がガクンと大きく反り返った。

「ここ、気持ちい？」

　胸元で、僕の顔を見つめたまま聞かれた。
　恥ずかしくて堪らないのに、そらせない視線。

　彼の漆黒の瞳は常とは異なり、欲望に濡れていて。
　……それに引き摺られるみたいに、下腹部がずくんと熱を持つのを感じた。

「ちゃんと、答えろよ。
　ここ、めっちゃ反応してるんだけど」

　ぐいと膝で、僕の股間を刺激された。

「ふぁ！？」　

　胸ばかりに集中していたから、予想外の場所から与えられた感覚に乱され、狂わされていく。
　こんな状況、絶対におかしいと思うのに。