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はじめてのキス①

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 すべて食べ終わり、ドリンクバーも散々堪能してから。
 店を出たタイミングで僕はいつもみたいに、何の迷いもなく聞いた。

「なぁ、聡哉。今日もまたお前んち、泊めて貰ってもいい?
 新しい着替えもちゃんと、持ってきたからさぁ!」

 すると聡哉は、ぎょっとした様子で僕の事を凝視した。

「えっと……ごめん。なんか、予定あった?」

 当然OKして貰えると思い込んでいたから、その反応にこちらが戸惑った。
 彼からの返事を、待つこと数秒。

 聡哉はふぅと小さく息を吐き、呆れ口調で言った。

「あのなぁ、晴。
 ……昨日俺に何されたか、ちゃんと覚えてる?」

 そこでようやく、思い出した。
 そうだった。すっかり、忘れてた。
 そう言えば昨日コイツに、ほっぺたとはいえキスをされたんだった!

 ようやくそれを思い出し、真っ赤になってうつむく僕。
 訪れた沈黙が気まずくて、ついまた余計な事を口走ってしまった。

「覚えてる。っていうか、今思い出した。
 でもさ……僕、嫌じゃなかったよ?」

 顔を上げ、真っ直ぐに彼を見つめた。
 ゴクリと、唾を飲む気配。

「お前なぁ……。ホント、そういうところだぞ!」
 
 苦虫を噛み潰したような表情で、責めるような口調で言われた言葉。
 だけど何が悪いのか分からず、つい首を傾げた。

「この際だから、ハッキリ言っとく。
 俺は隙あらばお前に昨日したみたいな事をしたいし、あわよくばそれ以上の事も出来たら良いなって思ってる。
 それでもうちに、泊まりに来れる?」

 理不尽に、叱られた。
 でもそれって、つまり。
 ……頬だけにとどまらず、唇にキスしたり、もっとやらしい事もしたいって事だよな。
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