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気付いてしまった想い②

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「でもやっぱり母さんには、グチグチ嫌味を言われるかもしれないな。
 急に夕飯、いらないって言ったら。
 それにせっかく作って貰ったのに、食べないのも申し訳ない気がするし……」

 ボソッと呟いたその言葉が、悪魔見習いの耳に入ってしまったようだ。
 
「俺様が人間の、代わりをしてやろうか?
 お前の姿に化けて、留守番をしてやっても良い」

 ニヤリと不敵に笑う、悪魔見習い。

「えぇ!?君、そんな事も出来るの!?」

 驚き、その小さな姿を凝視した。
 もくもくと立ち上る、真っ黒な煙。
 それはあっという間に彼を包み込み、そしてその煙が晴れた時。
 ……そこには僕が、めちゃくちゃ悪そうなどや顔で立っていた。

 それに度肝を抜かれ、しばし唖然とその姿をただ見つめていたのだけれど。
 そこで恐ろしい事に、はたと気付いた。

「あれ?……でも、待って。
 まさかこれ、願い事にカウントされないよね!?」

 こんな下らない理由で、魂を盗られてはかなわない。
 だから、慌てて確認した。
 すると悪魔見習いはニヤリと笑い、答えた。

「この対価は、もう貰った。
 さっきの菓子で、許してやる。
 それにママ上の作る料理を、俺様も食べてみたいしな」

 なんだよ?コイツ。
 ……すっかり人間の食べ物に、味を占めている。

 でもその言葉に、かなりホッとした。
 だけど問題が、解決したワケじゃない。
 だってこんな口調と態度だと、確実に母さんに変に思われてしまう。

「……ちゃんと話し方とかも、真似出来る?」

 不安な気持ちで、聞いた。
 すると悪魔見習いはにっこりと笑い、答えた。

「もちろん、出来るよ。
 僕を、誰だと思ってるの?」
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