上 下
2 / 12

秘密②

しおりを挟む
 変な汗をダラダラと垂れ流しながら、まるで的外れな答えを返すコイツ。
 
 高橋......売春だけじゃなく、コスプレまでさせられてるのかよ。
 俺も、見た......いじゃなかった、心配過ぎる。
 ......何でお前、そんなに金が必要なんだよ。

「水臭いぞ、高橋。
 俺だって金はないが、困ってるなら相談くらいしてくれてもいいじゃん。
 俺達、友達だろ?」

 まるで頼って貰えなかったという事に幾分情けない気持ちになりながら、告げたというのに。
 この男、何故かホッとした様子で顔を綻ばせた。
 
「......何笑ってんの?
 俺、まじで心配してんだけど。」

 苛立ちながら、聞いた。
 すると高橋は、またしても慌てた様子で答えたのだ。

「ごめん、てっきり全部知られたと思ったのに、違ってたから安心しちゃって。
 ......良かったぁ、僕がインキュバスだって、鈴木くんにバレてなくて」

 ......は?
 何を言ってんだ、コイツ。
 てか何だ、そのインキュバスってのは。

 意味が分からず、今度は俺の方が首を傾げる。

 ぁ、ちなみに俺が鈴木です。
 以後、よろしく。

 すると彼は、またしてもしまったとでも言いたげに大層慌てた様子で手足をブンブンと振り回しながら、言ったのだ。

「あっ!ち、違うっ!
 僕は、ニンゲン......だよ?」

 当たり前だ。何を、今更......。

 心底呆れ、吹き出した俺の眼前で。
 動揺しまくったせいか彼は本来の姿である、灰色の角と、紫がかった大きな翼を持つ、インキュバスへと突然変化へんげした。

「「うぁぁぁぁぁあっ!?」」

 二人、声を揃えての大絶叫。

「どうした、何かあったのかっ!?」

 何事かと、隣室の男が駆けてきて、ドアをバン!と開けた。
 でも俺は咄嗟の判断で高橋をクローゼットに押し込め、答えた。

「すまん......Gが現れた。
 もう、退治済み」

 めちゃくちゃ動揺が表情に表れていたせいか、男はその言葉を鵜呑みにし、そんな事で大声出してんじゃねぇよとだけ呆れ顔で言って、自室へと戻って行った。

 ふぅ......セーフ。
 いや、これセーフなのか?
 ......明らかに人ではないヤツが、まだこの部屋には残っているというのに。

 恐る恐る、クローゼットのドアを開ける。
 すると中からは、ポロポロと大粒の涙を流しながら、どう見ても危険度ゼロの弱っちぃ自称インキュバスとやらが、ふらつく足取りで出てきた。

「おーい、大丈夫か?高橋」

 あまりにも情けないその姿に、クククと笑いながら彼の腰に手を添え、支えてやる俺。
 すると高橋は、頬を薔薇色に染めて、翼を嬉しそうにパタパタと羽ばたかせ、男相手にこの表現はいかがなモノかと俺も思うが、可憐な笑みを浮かべて言った。

「ん......、大丈夫。
 ありがと、僕の事をかくまってくれて」

 ......あれ?何この、可愛い生物。
 インキュバスって、もしかして天使の事ですか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

処理中です...