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第5章 ディハンジョン
【178話】 ディハンジョンへ
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見栄えのない草原を馬車を走らせて俺達は進んでいた。
目的地はディハンジョン、そこで他の都市から来た人達と共にディハンジョンでの掃討作戦を行う。
一台の馬車を5人で順番に交代しながら操作して数日かけて目的地まで向かう。
今の当番は俺、優斗。
ただ馬車の運転の仕方なんてわからない為、レイナが隣に座り教えてくれたのだ。
最初は慣れずもたついてはいたがしばらくすれば割と慣れたものだ。
レイナの教え方がやはりいいからだろうか。
そんなこんなで慣れた手つきで馬車を進める。
「いやー平和だね」
隣に座っているレイナが気楽な感じで会話を始める。
「まぁそうだな、とりあえず着くまでは何もないといいんだけどな」
平和空気が運転席で流れる、馬車の中からも3人の話し声が流れてきてそっちもそっちで何事なく平和に過ごせているようだ。
気が緩みそうになり手綱から手を離しそうになるも意識をシャキッと戻して手綱を強く握った。
「1個聞いていい?」
「ん?どうした?」
そんな俺にレイナが話しかける。
よそ見しながら運転するのは危険だと思い、彼女の顔は見ず真っ直ぐ前を向きながら言葉を返す。
「ユートは人を殺せないでしょ?」
唐突にそして直球的な質問に俺はむせる。
確かにそうだけど、そんな事を今改まって聞く事に疑問符を浮かばせながら俺はレイナに。
「……うん、俺は人を殺せない……というか殺したくないそれが悪い人でも」
何事もないようにレイナからの質問を返す。
目の前で幼馴染が死んだ光景を見た俺に染み付いたのは人が死ぬを見たくないって思いだ。
そこから出たのが人を殺したくないという思想、俺のその思想は悪人であっても適応される。
彼女の質問の意図はわからないが彼女なりに何か考えてるんだろう。
「……ユートは優しいんだね、だからもう一つ聞かせてユートは人を殺せなくても、魔獣は殺せるよね、その違いはなんなのかなって」
レイナからまた質問がくる。
人と魔獣の違い……?
そんな事意識したことはなかった、そもそも魔獣との戦闘経験はサンスイン行くまでの道中に出てきたのを倒したってだけ。
だからあんまりその違いを意識する事なんてなかった。
「魔獣はユートが戦った獣みたいなのばかりじゃなくて中には人の形をして話す魔獣だっている。
もしも強い人型の魔獣と戦う時、気の迷いで躊躇ったりしたらユートが危ないから」
レイナはそう語った。
人型の魔獣……会ったことのない存在、人のような形をしてそして何より言葉も話す。
話すという事は高い知性があるという事。
もしかしたら分かり合えるかもしれない、そんな考えがよぎる。
あぁ、これなんだ。レイナが心配しているのは俺のこの考えだ。
「それ……は……」
俺は言葉が出なかった。
その話を聞いた今の俺は多分躊躇ってしまうと思う。人語を話せる魔獣と人、もしも話し合えるんだったら……敵対しなくてもいいのなら……多分今あったらそんな事を思うからだ。
そして答えの出せないまま夜になり、森が近くに見える道の端に馬車を停め順番に見張りをしながら各々が休憩する事に……
あたりはすっかり暗くなる、皆は食事を摂り就寝していた。
俺は見張りを行いながらレイナの言葉について考える。
今考えたところで多分答えは出せないだろう、けれど考えられずにはいなかった。
そんな時だった。
近くの森から異質な気配を感じとった。
今まで感じたことのないような……あるいは最も近くで感じたことのあるような……そんな気配だった。
その気配の正体を探るべく俺は森へ入る。
ほんの少し間だけ、持ち場を離れて俺は気配のくる方へ草木をかぎ分けながら歩いていく。
そして数分歩いた先にその気配の正体は佇んでいた。
傷だらけの状態でもわかる綺麗な白き体。
その美しき蒼い瞳は透き通るように現れた俺を向く。
その大きな体には種としての強さが現れているのか周りにいる動物達は姿を見せようとはしない。
俺の目の前にいる物、それは空想の世界ではお馴染みの上位存在──白く巨大な翼を携えたドラゴンである。
目的地はディハンジョン、そこで他の都市から来た人達と共にディハンジョンでの掃討作戦を行う。
一台の馬車を5人で順番に交代しながら操作して数日かけて目的地まで向かう。
今の当番は俺、優斗。
ただ馬車の運転の仕方なんてわからない為、レイナが隣に座り教えてくれたのだ。
最初は慣れずもたついてはいたがしばらくすれば割と慣れたものだ。
レイナの教え方がやはりいいからだろうか。
そんなこんなで慣れた手つきで馬車を進める。
「いやー平和だね」
隣に座っているレイナが気楽な感じで会話を始める。
「まぁそうだな、とりあえず着くまでは何もないといいんだけどな」
平和空気が運転席で流れる、馬車の中からも3人の話し声が流れてきてそっちもそっちで何事なく平和に過ごせているようだ。
気が緩みそうになり手綱から手を離しそうになるも意識をシャキッと戻して手綱を強く握った。
「1個聞いていい?」
「ん?どうした?」
そんな俺にレイナが話しかける。
よそ見しながら運転するのは危険だと思い、彼女の顔は見ず真っ直ぐ前を向きながら言葉を返す。
「ユートは人を殺せないでしょ?」
唐突にそして直球的な質問に俺はむせる。
確かにそうだけど、そんな事を今改まって聞く事に疑問符を浮かばせながら俺はレイナに。
「……うん、俺は人を殺せない……というか殺したくないそれが悪い人でも」
何事もないようにレイナからの質問を返す。
目の前で幼馴染が死んだ光景を見た俺に染み付いたのは人が死ぬを見たくないって思いだ。
そこから出たのが人を殺したくないという思想、俺のその思想は悪人であっても適応される。
彼女の質問の意図はわからないが彼女なりに何か考えてるんだろう。
「……ユートは優しいんだね、だからもう一つ聞かせてユートは人を殺せなくても、魔獣は殺せるよね、その違いはなんなのかなって」
レイナからまた質問がくる。
人と魔獣の違い……?
そんな事意識したことはなかった、そもそも魔獣との戦闘経験はサンスイン行くまでの道中に出てきたのを倒したってだけ。
だからあんまりその違いを意識する事なんてなかった。
「魔獣はユートが戦った獣みたいなのばかりじゃなくて中には人の形をして話す魔獣だっている。
もしも強い人型の魔獣と戦う時、気の迷いで躊躇ったりしたらユートが危ないから」
レイナはそう語った。
人型の魔獣……会ったことのない存在、人のような形をしてそして何より言葉も話す。
話すという事は高い知性があるという事。
もしかしたら分かり合えるかもしれない、そんな考えがよぎる。
あぁ、これなんだ。レイナが心配しているのは俺のこの考えだ。
「それ……は……」
俺は言葉が出なかった。
その話を聞いた今の俺は多分躊躇ってしまうと思う。人語を話せる魔獣と人、もしも話し合えるんだったら……敵対しなくてもいいのなら……多分今あったらそんな事を思うからだ。
そして答えの出せないまま夜になり、森が近くに見える道の端に馬車を停め順番に見張りをしながら各々が休憩する事に……
あたりはすっかり暗くなる、皆は食事を摂り就寝していた。
俺は見張りを行いながらレイナの言葉について考える。
今考えたところで多分答えは出せないだろう、けれど考えられずにはいなかった。
そんな時だった。
近くの森から異質な気配を感じとった。
今まで感じたことのないような……あるいは最も近くで感じたことのあるような……そんな気配だった。
その気配の正体を探るべく俺は森へ入る。
ほんの少し間だけ、持ち場を離れて俺は気配のくる方へ草木をかぎ分けながら歩いていく。
そして数分歩いた先にその気配の正体は佇んでいた。
傷だらけの状態でもわかる綺麗な白き体。
その美しき蒼い瞳は透き通るように現れた俺を向く。
その大きな体には種としての強さが現れているのか周りにいる動物達は姿を見せようとはしない。
俺の目の前にいる物、それは空想の世界ではお馴染みの上位存在──白く巨大な翼を携えたドラゴンである。
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