やさしい異世界転移

みなと

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第4章 星降る都市

【173話】 紡がれる想い

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 もしねがいが叶うのだとするなら、あなたは何をねがう?
 
 私はね……


 太陽が起き上がる前の都市サンスイン、そこに存在する4つの門のうちの1つに2人の男は立っていた。

「それじゃあ世話になった!俺は行くぜ!!」

 朝っぱらにも関わらず、大きな声で別れを告げるトードル、彼を見る優斗は苦笑いで応じる。

「で?お前はどこに行くんだよ」

「さぁな、だが色んなところに行くつもりではある。贖罪……というよりは俺自身への戒めというやつだ」

 今まで凶震戒の十戒士候補としてさまざまな都市を襲っていたトードル、そんな彼は優斗との戦闘を得て厚生するべく贖罪の旅へ出ることにしたのだ。

「本来なら俺はお前を止めるべきなんだろうな……それでも俺がお前に助けられたことは事実だ。
だから俺はお前を一度だけ見逃す……けどもし同じような事をするんであれば……」

「そうすればまた戦えるのか!?……というのは冗談、だがいずれ再戦を求めるとも!
約束だからな」

 サンスイン奪還作戦でトードルを倒した優斗は彼に悪事から足を洗うならまた戦うと約束していた。
 
「それじゃあ!また会おう!!」

 トードルは晴れた青空のような爽やかな笑顔で都市の外へと歩いて行く、それをただ軽く手を振って返しながら見ているだけの優斗。
 これがバレたらかなりヤバイよなーと軽く悩みながらも彼を送り出して優斗は後ろを振り返り歩く。

「おい」

 そんな時、優斗はなぜかいるチャーチスに呼び止められたのだった。

「えっいや……その……」

 動揺を隠せない、だってさっき元凶震戒の男を見逃したばっかりだ、それをこの人が許しておくわけない……
 確かにトードルは人を殺したし悪い奴だ……けれど。
 けれどそんな人が厚生したいと言うのなら俺はそれを信じてあげたい。
 善人が悪人になるんだ、その逆で悪人が善人になってもいい。
 一度罪を犯した人がずっと罰を受け続けるなんて俺は嫌だからだ。

 よしっ覚悟は決まったあとはチャーチスにこれを伝えるだけだ!

「今回だけだ」

 言葉を発しようとした俺にチャーチスが先手で話す。
 予想外の言葉にえっ?と言葉を詰まらせる。
 今回だけ……これはいったいどういう意味だ?俺がトードルを行かせた事についてなのだろうか?

 でもチャーチスは真面目な男だと俺の中では認識している、そんな人が……

「アイツが今回の戦いでこちら側に付き、多少なりの功績を上げたのは事実だ。
だから今回だけは見逃す……
だが!アイツがまた過ちを繰り返すようならその時は……わかるな?」

 チャーチスは静かに話す。
 その静かながらも確かな威圧感に気圧され俺は黙って頷く。

「それじゃ行くぞ、そろそろパゼーレに帰る時間だ」

 チャーチスはそう言って俺に背を向けて歩く。
 その背中は大きくたくましい背中に見えた。
 そんな彼の背を追って俺も歩き出す。

 それはそうと今日はパゼーレに帰る日、凶震戒の脅威が去って数日が経ちパゼーレとの連絡が付き今日迎えの馬車がくる。
 色々とあったがこのサンスインとのお別れになってしまうのだった。

「アーサーの話だが……」

 静かな街中を歩いている時、チャーチスは十戒士のアーサーの話を切り出す。
 あの後、チャーチス本人から運転手の正体やクラディのその後について聞かされていた。

 彼が死んだ事については聞いた時は多少なり思うところはあったが……けれどそれは心の中にしまっておく。
 仕方ない……と言う気はない、けれどそれが彼の行く先だったのだと己を納得させた。
 
 運転手の正体についても、確かにあの強さなら納得はいった。
 けれどなんで俺達を助けてくれたり稽古をつけてくれたりしてくれたのだろう?

「アーサーはお前にこんな感じのこと言ってたぞ」

「強くなったら……俺の戦えってな、随分と気に入られたみたいだな」

 チャーチスはアーサーからの伝言を俺に伝える。
 それは今まで聞かさずに今初めて聞いた話だ。

「まぁこんなん聞かせて何になるんだって話って思うだろうけど……
俺が言いたいのは……強くなれ
俺の魔法はまだお前のことを危険だと認識している、だが俺自身はお前に期待し始めたところだ。
だから……まぁなんていうかこれからも励めよ」

 チャーチスは途中途中、恥ずかしくなったのか途切れながらも俺にそんな言葉を送ってくれた。

 今まで意見が合わずに互いに毛嫌いしていた2人……今後も衝突することがあるかもしれない、けれど今この時に限っては2人の距離が少しばかり近くなったのだ。



「もう行くんですか?まだいてくれても構いませんのに……」

「こちらにもこちらの事情があるので、その気持ちだけもらっておきます」

 都市サンスインから出るための門の近く、そこでチャーチスとサンスインのお偉いさんだと言う人が会話をしている。

 ここにいるのはパゼーレへ帰る俺達を送るためにトウガンや何人かが見送りに来ていた。
 今日俺達はこれから来る馬車に乗りパゼーレへと帰る。
 あの激戦から数日……チャーチスやヒナリ、そしてレイナは都市の復興に尽力しその間俺はクラディ戦での傷を治し、昨日ようやく復興の手伝いが出来るまでに回復していた。

「?ヒョオナは?」

 見送りに来てる人を見渡してもヒョオナの姿がなく、彼女の父親であるトウガンに尋ねる。

「別れが悲しいみたいで……あの子は来ません」

 トウガンは残念そうに俺に話してくれた。
 最後にちょっと話したがったが、本人が来られないと言うのなら仕方ない。
 でもまぁ……

「またすぐ会えますから、大丈夫ですよ」

 俺はトウガンに言葉を返す。
 実はヒョオナとトウガンについてだが、しばらくした後にパゼーレへ来ることが決まっていた。

 ヒョオナの魔法を狙う輩から守るにはディーオンがいるパゼーレはかなりいい都市だからである。

「そうだな」

 その言葉を聞き、トウガンはニッと笑う。
 周りの人達はそれぞれ会話をしておりそれからしばらく俺とトウガンは2人で話し合う。

「本当にユウトが来てくれてよかったよ
まさかクラディを倒すなんて……俺はお前が羨ましいよ」

 感心するように感謝をするようにそして羨むようにトウガンは俺をジロジロリと見て話す。

「いや、俺だけじゃ無理でした……みんながいてくれたから勝てたんです」
 
 あの戦いは俺だけじゃ絶対に勝てなかった、みんなが自分のやるべき事を成したからこその勝利なんだ。
 俺はその事をトウガンに告げる。

「ふっそうかい……あぁ、それと、これお前のだろ?城で見つけたんだ」

 トウガンは少し笑ったあと、とある物を俺の前に出してきた。
 それは赤く、汚れてはいるがしっかりと[必勝]の文字が書かれていた鉢巻……俺が母親に作ってもらった物だった。

 クラディ戦の途中から無くなっていたが、なんとトウガンがそれを渡してきたのだ。

「ありがとうございます!そうです俺のです!!」

 無くなったと思った大切な物が見つかり喜びの表情を浮かべる。
 
「そうか、大切な物ならしっかりな」

 そう言ってトウガンは俺に手渡してくる、しかし彼の表情はどこか沈んでいるような感じがした。
 多分彼は自分自身を責めている……自分の手でヒョオナを救えなかった事を心の中で悔やんでいるのだ。
 娘は自分出助けたい、それは父親なら当然の感情だ。
 それが出来なかった……それが彼の心を苦しませてる。

 少しでも楽にしてあげたい。

「……よかったらもう少しだけ、預かっててもらえませんか?」

「えっ?」

 俺はトウガンに鉢巻を持っていてくれと突然言い出す。
 これにはトウガンも驚きの表情を浮かべる。

「その鉢巻を俺だと思って持っててください……い、嫌なら別にいいですけど……」

 驚きの表情のトウガンにそう付け足す。
 そして俺はトウガンの手に持つ鉢巻に手を伸ばそうとした。

 しかし次の瞬間、トウガンはパッと手を引っ込めて、鉢巻を自身の元にやる。

「嫌じゃない。それどころかお前のような男が持ってた物を貰えるなんて……」

「俺はその鉢巻に勇気をもらいました……だから少しでも貴方も俺と同じく勇気をもらってください」

 少し敬遠しそうになったトウガンに俺は笑顔で答える。

「そうか……ありがとう!……ところでこの文字はなんで書いてあるんだ?」

 トウガンは俺にお礼を言ったあと、鉢巻に書かれてる文字を見て聞いてくる。
 そういえば鉢巻に書かれてる文字はこっちの世界だと使われてなかったんだ。

 でも、だからこそ俺は彼に教えられる。

「必勝、『必ず』『勝つ』って意味です!」

「必ず勝つか……何かそういう魔法でもかかってるのか?」

 トウガンがそう聞いてきた時、後ろの方から「おーい!馬車来たよー!!」とレイナの声が聞こえてきた。
 振り返るともうすでに馬車が到着していた、レイナが俺に手を振る後ろでヒナリが運転手に近付き声を掛け頬をつねっていた。
 多分また変装じゃないかを確認しているのだろう。

 どうやらもう帰る時、だから最後に彼に応える。

「強いて言うなら……母親の愛情です」

 そう言いながら手を差し伸べ握手を求めた。

「そうか、そりゃ1番強い魔法だな」

 暗かったトウガンの表情から少し笑みが見え、そのまま彼は俺の手を取った。

 そして俺達は笑顔で握手を交わす。
 少し傲慢で自己評価高いかもだけど、俺が母親からもらった勇気を意志が少しでも彼の力になるようにと願い鉢巻という名の希望を託した。


 トウガンとの別れを告げて俺は馬車へと近づく。
 もうここともお別れ、最後にヒョオナと少しでも話しておきたかったな……

「ユウト!!」

 そう思っていた時、後ろから知っている声に呼び止められる。

 振り返って見ているとそこにいたのは必死に走ってきたのか息を切らしているヒョオナだった。

「……やっぱり、私まだ話したい」

 息を切らせながらもヒョオナは歩く。
 真っ直ぐ俺の元へ。

 後ろを振り返る、みんなは馬車の近くにいるけれど、レイナは首を縦に振り、ヒナリは親指を立てる。
 チャーチスは俺に背を向けて何も反応はしなかったけれどその後ろ姿からは他の2人の同じだと俺にはわかった。

 だから俺はヒョオナと顔を合わせ彼女の目線まで腰を落とす。

「また……会える?」

「うん、パゼーレで待ってる」


「いっぱい、お話できる?」

「あぁ!いつでも話をしよう」


「ありがとう……私、なんてお礼すれば……」

「そんなのはいらないよ、ただヒョオナが元気でいて友達も作って楽しく笑い合ってくれれば俺は満足だ」

 俺とヒョオナだけしかいないような空間、前からも後ろからも様子を伺っている人が大勢いた。
 そんな中で俺は彼女に笑顔を向けながら頭を撫でる。

 もしねがいが叶うのだとするなら、あなたは何をねがう?
 
 私はね……

「私、がんばる!ユウトが言ったこと……全部出来るかわからない……でもユウトが私を助けてくれたみたいに、私も誰かを助けられるようになりたい!!」

「そうか……じゃあ期待してるよ」


「あと……最後に……」

「ん?」


「ユウト!大好き!!」

 少女は今まで見せたことないような、慣れないの不器用だがこの戦いに意味があったんだとそう思わせてくれるようなとても幸せそうな笑顔を俺に見せて想いを告げたのだった。
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