やさしい異世界転移

みなと

文字の大きさ
上 下
138 / 189
第4章 星降る都市

【137話】 動きだす者

しおりを挟む
 凶震戒に襲われている人達を助けようと飛び出した俺だが、思っていた以上に苦戦することはなくその場にいた凶震戒達の制圧に成功した。
 風の魔法で駆け抜けすれ違い様に一撃を与えるだけで奴等は倒れていった。
 コイツらが弱いのか……それとも俺が強くなっているのかいまいちわからない。

 周りを見渡しても奴等が潜んでいる気配は無くどうやらここにいる凶震戒はコイツらで全員のようだ。
 襲われていた人達も何が起こったのか……その事を理解出来ないで俺を見てきていた。

 その時、俺は後ろにいた少女に目をやった。
 水色の髪に桃の瞳、歳は大体8~9といったところ……。
 その少女はこの状況でも平気そうな表情をしておりこの状況でも平気そうにしているこの子の事を何処か不思議に感じた。

「大丈夫か?」

 俺はその少女に手を差し伸べる。
 少女は差し伸べられた手を少しの間見つめた後手を伸ばして掴んでくれた。
 その少女の手を握ると少女の手が震えていることに気が付いた。
 この子は……

「──ユート!!」

 その時俺は彼女の方に意識をやっていて、レイナが声をかけるまで後ろで立ち上がって攻撃を仕掛けようとしている男に気が付かなかった。

 振り返り対処しようとしたがもう時既に遅し、男が振り上げし銀に光し刃が俺の体を引き裂くのを俺は防ぐ事が出来ない!

 ──ギンッッ!!

 しかし次の瞬間……刃同士がぶつかり合う音が聞こえる。
 

「……ったく、勝手に行動して死にかけてんじゃないぞ!!」

 男の刃はチャーチスの槍によって防がれていたのだ。

「クソッ!」

 男は攻撃が防がれ次の手を打とうとするが次の瞬間、チャーチスの槍術により男の体には胸に2箇所、腹と脇腹に1箇所ずつ穴が空き倒れそのまま動かなくなった。

 男を倒したチャーチスは倒れた男を少し見た後こちらへと歩いてくる。
 人を殺したチャーチスに対して恐怖心を覚えるが、助けてくれたのだお礼を言わないと……

「ありがと……」

 俺の言葉が言い終わる前に顔面に強い衝撃が走って後ろへよろめいた。
 何が起こった……?そう思い、体制を立て直し衝撃が来たであろう前方を見る。

 そこには拳を振り切ったチャーチスがいた、どうやら俺は彼に顔面を殴られたらしい。

「だから単独行動をするなと言っただろ!!」

 彼は強い口調で怒声を上げる。

「俺が助けなかったらお前は死んでいた!……いやそれならまだマシだ、お前がコイツらに拷問され俺達の存在がバレていたらどうしていた!?
お前の身勝手な行動でお前どころか、俺達まで危険な目に遭うところだったんだぞ!!」

 チャーチスの怒りは続き、その怒りは一気に俺へと向かっていった。
 確かにチャーチスがいなければ……そう考えるとゾッとした。
 戦闘においてチャーチスは俺よりも経験者であり優れているのだろう。
 彼の言っていることは正しい……正しいのだけれども……

「申し訳ございませんでした……けど、それでもっ!」

「お二方助けてくれてありがとございます……ですが早々にこの場から離れましょう。
また奴等が来てしまう」

 俺とチャーチスの間に割って入るかのように襲われていたうちの1人の男が話しかけてくる。
 チャーチスは割ってきた男を警戒するように睨みつけながら周りを見渡す。

 チャーチスが殺した男以外、俺が倒した奴等は生きてはいるがしばらくは目を覚ましそうにはない。
 確かにコイツらが報告したり仲間と連絡が取れなくなったら他にいるであろう連中に見つかってしまう……
 だから今のうちにここから逃げるのは得策だろう。
 だがチャーチスはさっきの話だとこの人達を凶震戒の仲間だと思っているらしいが……
 
「お願いします……奴等が狙っているのはこの子なんです……」

 俺達と話している男はそう言っていつの間にか俺から少し離れた場所にいる先程の少女の肩に手をそっと置いた。



 サンスインの北に位置する城の城内
 ここは既に凶震戒十戒士が1人、クラディ・レイオンによって支配されている場所。
 彼はここからサンスインを支配しその玉座に君臨している。

「……どうやらここに入り込んだ奴がいるな?」

「よ、よくぞおわかりになって……」

 クラディは目の前にいる部下に対して侵入者について察知したことを確認する。
 パゼーレから応援が来てから1時間と少しの間に"巫女"を捉えようとしていた10名で構成されていた部隊が戦闘不能にされているのは既に確認済みであった。

「そうか、なら……」

 クラディは玉座から立ち上がる。

「もう時期は近い、この追いかけっこも終わりにするとしようか」

 そうして彼は玉座から離れる、自身目標を叶えるための道具の元へと歩を進めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初めての異世界転生

藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。 女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。 まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。 このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

処理中です...